医療従事者をやめると決めた話

冒頭からいきなりの自己紹介で恐縮だが、私は医療従事者の職について十数年になる。
今までこの手で守ってきた、救う手助けをしてきた命は老若男女合わせて1000人はとっくに超えているくらいになると思う。
最期を看取った命はそのうちの何人だっただろうか、数えるのも悲しいほどの数になっている。

医療従事者の仕事が、医師ナース介護士薬剤師検査技師etc...そのどれにおいても過酷で重労働で責任重大なことは他の本やドラマやニュースやSNSで散々言われてきているから今更私が詳細を語る気はないが、そのどれもが仰るとおりで、実際に過酷で重労働で責任重大な仕事である。

それでも長年やって来られたのは、
やはり「命を守れた、救えた」という喜びと、
「守りたい、救いたい」という想いを捨てたことが無かったからだった。

ほんの昨日まで冗談を言って笑っていたひとの最期を看取るときの絶望や、常にある様々な病気の感染リスクや、ひとの命という「地球より重い」と形容される重みを背負うプレッシャーや、責任と労働の割に合わない給与や、友人や恋人とシフトを合わせて余暇を過ごすことが基本的にできないつらさや、たとえ災害時でも交通機関が停止していてもどんなときもなんとかして出勤しなければならないことへのストレスや、 自分の行動ひとつでひとを死なせてしまうかもしれないことへの恐怖など、
嫌なこと、おそろしいこと、つらいことは多々多々あれども耐えて来られたのは、なんだかんだでやっぱりその原点とも言えるべき想いがあったからだった。
私の手が、誰かを守れている。
私の行動が、判断が、努力が、誰かを救えている。偽善者だ、エゴイストだと言う人もいるだろう、
でもその気持ちが、誇りがなければこの仕事はして来られなかった。

私は自分の仕事が本当に好きだった。
誇りを持って、使命と信じて、やってきた。

でも、もう辞めることにした。

一生現場主義でいると、
からだの動く限りは辞めないと誓っていた仕事を、
辞めることにした。

それは、私が胸に持っていたその誇りを、気持ちを、失ってしまったからだ。

私はもう、自分をボロボロにしてもひとを救いたいとも、守りたいとも思えなくなった。

今、世界中を騒がせている新型コロナウイルスが、その決定打だった。

何度も同じことを書いて申し訳ないけれど、
医療従事者の仕事は本当に本当に過酷で重労働で責任重大で、心身ともにボロボロになることはデフォルトのようなところがある。
私自身、何度も体を壊したしその後遺症もいくつも抱えている。治っていない、治ることのない怪我も持っている。

それでも辞めようと思わずにやって来たのは、ひとえに「ひとを守りたい、救いたい」という気持ちがあったからだ。

でも、この新型コロナウイルスが蔓延してから、
叩かれるのも覚悟の上で言うけれど

「私がボロボロになってまで守って救ってやる価値が本当にあるのか?」

と思うことが増えてしまった。

若者が人生の門出を祝われることすら自粛している、させられている今の状況で、パチンコや旅行やジムや会食やと遊び回っている、それを自慢気にすら話している高齢者。

なんの罪もないドラッグストアの店員にマスクや紙製品が店頭に並ばないことを責め立て怒鳴り散らす狂人。

「あの人は病院勤めだから近寄ったらコロナがうつるよ!」
と指差して言った子連れの女。

不調を訴えて訪れている人、具合の悪い人で溢れる外来の待合席に大股を広げて座り「どこも悪くはないけどここに来るのは友達との会合のようなものだから」「コロナは若者のせいでうつるんだから若者は外来に来るな」と堂々と喋る人でなしのクソジジイ。

「おまえらには必要ないだろ!」と入荷したマスクを買おうとした親子を押し退けてマスクを買った中年の男。

「コロナ騒ぎで風俗行けないから受診したらナースに医療の一貫として抜いてもらいたいよな」と話していた若い男。

これらをリアルに目の当たりにして、

「こんなやつらの命を守って救ってやる必要がどこにあるのか」

「私や同胞が今まで救ってきた、守ってきた、看取ってきた、病気や怪我と戦うまっとうな人たちと同じ治療やサービスを、こんなやつらが受ける権利があるものか」

と、心底思った。

そう思ったらもう、今まで抱いてきた、大事にして、どんなに仕事がつらいときも心の支えにしてきた誇りも使命感も責任感も、
粉々に砕けてしまった。

自分の楽しみや友人や恋人と過ごす幸福やぐっすり眠る睡眠時間や若くて健康な体やらを犠牲にしてまで、こんな醜い人間たちのために一切のことをしたくない。
なんなら今すぐにでも死んでもらって、新鮮な臓器を全て病気や怪我と戦うまっとうな人たちに寄越せとすら思う。
ドナーとして使えなかった部分は献体に回して医療の発展に貢献して、やっとお前らも人でなしから人間にランクアップできるんじゃね?とまで思ってしまう。

こんなことを思う人間に成り下がった私が、
いのちの現場にいることはできない。

いたいとも、もう思わない。

もしも上記のことをしていた本人たちが私の勤め先に運ばれてきたら、放棄という名の殺人を起こさない自信がない。

なので、辞めることにした。

決して新型コロナウイルスのせいじゃない、

新型コロナウイルスというレンズが、こういう人間がいかに醜いのかをよりハッキリ見せてくれただけだ。

私はもう辞めてしまうけれど、
ここまで思ってしまった以上は他の患者さんにも同胞にも恐怖と迷惑でしかないから、
二度といのちの現場に立つことはしないけれど。

私の同僚や他の医療従事者の皆さんは、
どうかこんな屑に遭遇してしまうことがありませんように。
お体を今以上に壊しませんように。
皆さんの尊い志と誇りが打ち砕かれる日が来ませんように。
まっとうに生きている人々を、どうかこれからも守って救ってください。

そしてこれを読んでくれたあなたは、
決してこの屑どものようなことをしませんように。

私のような医療従事者が、この先出ないとは限りません。
私のようにドロップアウトせず、私のような憎悪を抱えたまま働く医療従事者もいるかもしれません。

その数がもしも増えてしまったら、待ち受けているものは恐ろしい結果だけです。

どうか今一度、ご一考いただけますように。

そして上記のようなことをした屑が一刻も早くその醜さに合った報いを受けますように。

コロナの終息と、まっとうな人々の安寧を心より願っております。

元医療従事者より

追記▽

バズっているので追記しておきます。
この記事は
「天職だと信じていたけど想像絶する屑に耐えられなかったから天職ではなかったと気付いたので辞めることにしたし、想像絶する屑はこれ以上、それでも屑に耐えて医療を遂行しているまともな医療従事者を追い込むな」って話です。

私が聖人君子であるとか、医療従事者としてこんなに頑張ったのに!この世はクソ!私を褒めろ!
という話ではありません。


また、医師看護士看護助手薬剤師検査技師介護士医療事務歯科衛生士etc...すべて医療従事者です。


医師でもないのにだの、看護士介護士薬剤師程度がだの、医療事務は関係ないだのと思い込んでいる方を多数お見かけしますが、


医療は様々な業種が現場にいてそれぞれの仕事を全うして成り立っていることが理解できず医療従事者を貶すなら、
医療の恩恵を受けることなく自然治癒を目指して頑張って引きこもっていてください。

あとこの手の人が本当に多いんでそろそろいい加減にしてくださいって感じなんですが、

読んでどう思われてもそれは自由ですし賛同を求めているわけでもないので結構なんですが
わざわざ引用RTしてのこちらを否定するお気持ち表明はより一層求めてませんし
ハッキリ言ってうるせえからご遠慮お願いします

「私はそうは思いません」も
「私は反対です」も結構です、色々な考え方と
受け取り方があると思いますし否定しません
ですが

他人の独り言や個人ノートに挨拶もせず了承も得ず勝手に議論だの抗議だの吹っ掛けて来るのはちょっとは自粛してください迷惑なこと山の如しです

解釈違いでクソリプを送ってくる方々に再度申し添えておきますが、

あなた方のような人に耐えられなかったから辞めることにしたのです。

ご自身のことを振り返り、ご一考いただけると幸いです。

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コメント (21)
拝読いたしました
新入社員の若造ですが心に留めて生きていきます
今までお疲れ様でした
お疲れ様でしたの言葉が適切かわかりませんが
、今まで現場を支え、患者のためにありがとうございました。

文面を読んでいて心が痛かったです。

私は乳がんの脳腫瘍を持っている患者です。私は医師や看護師、医療の受付に傷つけられることもありました。医師にとって重い病気だろうが風邪だろうが患者としては扱いは変わらないと言うことを、日々感じてきてました。

文面を読んでいて、立場変わればなのかな?と思う部分もありましたが、hatoさんが一生懸命患者さんを救ってくれたこと、自分の身がボロボロになっても患者を助けようとしてくれたことにありがとうございますとお伝えしたかったです。

hatoさんのような医療従事者がたくさんいれば、
患者ももっと救われて笑顔になれるのに...

私のかかりつけだった医師に"日本人はバカだ。自分の体もろくに知らない”と言われたことがあります。私は日本人の考える質、想像力の欠落がそのような人たちを増やしているかと思います。

真摯に受け止めます。改めて考えるきっかけをいただき、ありがとうございました。

私も同じく医療従事者です。
この文章を読んで、悲しくて辛くて涙が出てきました。
自粛令が出されても、私たちには関係のないことで、どんな時でも仕事に行かなければならない。
働いている中で感染するかもしれないし、媒介者になるかもしれない。そんなプレッシャーに耐えながら働いていて、家に帰ると決まって「私って何のために働いてるんやろう?」と日に日に虚しさだけが増すようになりました。
私もこれからの人生を、どう生きていくか本気で考えたいと思います。
hatoさんはご自身のことを、こんな医療従事者呼ばわりされていますが、本当は真面目で責任感が強く、人の気持ちが分かる心優しい方であると思っています。
どうかこれからの人生を、自分のために生きてください。
まだまだ油断できない日々が続きますが、どうかご自愛ください。
涙が出ました。共有ありがとうございます。
人は、学ばない生き物なんでしょうね、悲しいですが。
正直、私も、疲れちゃいますよ。この繰り返し。
社会に絶望して、また頑張って、また裏切られて絶望して。
でも私は、仲間たちとまだ頑張ってみます。
hatoさんも、休憩して、休憩して、もしまた頑張りたいと思ったり、志を同じくする人に巡り会えたら、医療従事者というかたちじゃなくても、魂が抱えている願望を遂げられるといいですね。勝手ながら。
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