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愛と呼べるその感情

2020年9月11日、灯堂理人のソロ曲「Pain In My Heart」が発売された。

いや正直また地獄の扉が開いてしまった……みたいな感情なんですが、とにかくソロ曲発売はめでたい。めでたいったらめでたい。しかもオリコン7位だそうで……おめでとうございます。
実際この曲はすごくて、本当に聴いていて気持ちいい。なんのひっかかりもなく、ノンストレスに音が流れて、気が付いたら曲が終わっているし私は泣いている。
そんな、担当がトップバッターだった私から、他のメンバー担当の方に渡す心構えになるよう感想を書きます。

曲の「ガチ」度

今回、灯堂理人のソロ曲作曲はINNさん。Julietでえげつない掛け合いコーラスを生み出した鬼才の人。もうわかる。すごい曲だ
またボーカルディレクションはzakbeeさん。今までAnthosの歌をすべてディレクションしてきた我らが神。言うまでもなく、すごい曲だ
そして作詞と歌唱は灯堂理人。他の誰でもない、灯堂理人だ。歌声担当、読書家の灯堂理人。すごい曲だ

マジでこれはガッチガチの最強タッグ。なお、灯堂理人のゴーストライターのクレジットはない。歌詞カードを見ても「作詞:灯堂理人」が記されているだけで、他に作詞にかかわった人の記載はない。

この曲は間違いなく灯堂理人が作った歌だ。
そう思わせるだけの曲であり、また歌詞カードにおいても徹底した演出をして、私たちに灯堂理人の存在を突き付けてくる。

灯堂理人を理解する人々

一旦メタな話をするのだが、では灯堂理人のソロ曲Pain In My Heartを真に書いたのは誰なのだろう。「灯堂理人」の言葉を実体化させた人は、一体どこに存在するのだろう。

Anthos*は、架空アイドルグループだ。私たちが生きる次元には存在しなくて、いつだって悌太さんのイラストを通じて、関涼子さんの言葉と各々のCVさんの声を通して存在を確かめている。
であれば、今回も歌詞を書いたのは理人さんではなくて、きっと理人さんを理解する人たち――関さんや、伊東さんや、スタッフさんの共作なのかもしれない。私たちが歌として受け止めるこの言葉は、灯堂理人を理解する人々の思いが詰まっている。

ここからメタではない話。

そうはいっても、だ。歌詞カードには作詞は灯堂理人だとクレジットされている。その意味を、Anthos*とは別次元に存在する人間として考えなければならない。
灯堂理人とはなんなのだろう。
3次元から見る灯堂理人は、なんなのだろう。

そもアイドルとは偶像を意味する単語だ。偶像とは信仰の対象となるもの――形而上の、形を持たないものに姿を与えたもの、となる。
私たちが見ているアイドル灯堂理人は偶像だ。3次元には存在しない。けれど、居る。間違いなく、居る。そう華Doll*プロジェクトは提示している。
シニカリストで愛されたがりな人、という確かに存在する虚像に灯堂理人という名前を与え、悌太さんのイラストを与え、伊東健人さんの声を与えたもの。それが私たちの見る灯堂理人というアイドルだ。

今回の詞を書いたのは、灯堂理人なのだ。これはクレジットをそのまま読み取るなら疑いようのない事実。そしてもう一歩踏み込んで、「灯堂理人」から「作詞」に関係のない部分をそぎ落としていくとするなら。声は関係ない、見た目も関係ない。偶像からひとつずつ要素を取り払っていくなら。
作詞したのは、偶像ではなく、虚像だったことになる。灯堂理人のいちばん初めの部分。3次元の灯堂理人ではなく、2次元の灯堂理人だ。形而下のあらゆる要素をそぎ落とし、まっさらになった形而上の灯堂理人。もっとも内側に存在するであろうシンプルな部分。灯堂理人の核とも言える、柔らかい部分だ。
それを私たちは、心と呼ぶのかもしれない。
そうであれば、この詞は、灯堂理人の心が書いた詞だ。

この曲は、心が詞を書き、最も理解する人が歌っている。そんな歌だ。そんなラブソングなのだ。

詞に書いている内容に触れるとき、私たちはその人の心に触れているに等しい。それだけの力を持つ歌だ。
心を通じ合わせるにはもちろん痛みを伴う。人を愛すること、人に愛されることには心を通わせることが必要で。私はこの曲を聴くと必ず胸の内がうずきだす。雨の日に古傷が痛むように。
Pain In My Heartというタイトルは正しく灯堂理人を表現していて、この人を理解するのに必要な言葉だ。それを当の本人が自らタイトルに持ってきたその意味を私は考えてしまう。

これから担当のソロ曲を迎える人へ

おまえはしぬ。いいな。命日は担当のソロ曲入手日。
これはもちろん誇張表現ではあるが、ただの誇張表現ではない。限りなく現実に近い表現。情緒は間違いなく死ぬ。
そもそも今まで6人で歌ってきたところをいきなり1人で歌う曲をぶちこまれているのだ、単純計算で密度6倍。同じ声なんだからハモの相性なんぞ完璧、言葉は担当が心を込めて書いたもの、初めから終わりまで担当、すべてが担当、相乗効果もろもろで体感密度100倍はくだらない。
確かに6人曲はいつも2曲ずつ発表だったので、1曲しかないのだから衝撃は半減する。だとしても、だ。6人曲ですら幾度となく死んできた私たちは、ソロ曲の衝撃には耐えられない。情緒は死んで、私はゾンビ。墓場でPIMHを聴いて泣いている。

上述の通り、灯堂理人は、Anthos*は、実在する。作詞の欄には「灯堂理人」と書かれ、ゴーストライターも存在しえない。灯堂理人は確かにこの世に存在して、灯堂理人がこの詞を書いた。シェイクスピアを好む彼らしくて、シニカリストなところもあって、優しい詞だ。
そんな、実在する人間1人分の心をぶつけられている。
もちろん彼らはアイドルだから、私たちファンに見せるところと見せないところがある。でも私たちはアイドルファンだから、そういう見せる見せないの選択も含めて彼らを好きになったのだ。アイドルとして、生きた人間が選んだものを、生きた人間が選んだ歌い方で聴いている。好みでないはずがなくて、惹かれないはずもなかった。

PIMHがアイドル灯堂理人の心そのものでないならなんなのだろう。PIMHを聴く私の情緒の死に方が、心をひとつ受け止めた衝撃でないならなんなのだろう。私は苦しんでいるが、それがアイドル灯堂理人という生きた人間の選択にきちんと向き合った結果であるなら致し方ない。この苦しみすら甘受して、私は灯堂理人に向き合いたい。
そしてこれから担当のソロ曲を迎える人にはこう言いたい。あなたが受け止めるものは、あなたが愛した「生きた」人間の歌です。きっと苦しむでしょう、抱えきれずに涙するでしょう。消化しきれない思いに戸惑うでしょう。けれど先人がここにいます。私もまだどう消化したものかわからないでいますが、共に苦しむことはできます。どんな地獄がそこにあろうとも、あなたが愛したアイドルは生きて、そして歌っているのだと思い出して、受け止めていきましょう。

余談:特典のトレーディングSSについて

新しい地獄をトレーディングで提示するな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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