選手たちに好きに練習させてみる

新入生が入部してくれました。

中学生チーム「大同ハンドボールアカデミー」にも新入生が入部してきた。そのほとんどが小学生チーム「大同キッズ」の卒部生だが、そこに他チーム出身の選手と中学生からの初心者が若干名いる。

小学生でハンドボールを始めてくれた選手が中学生でも競技を続けたいと考えてくれて、かつ自分のチームを選んでくれることはとてもありがたく、とても嬉しい。彼らの成長も楽しみである。

そんな中で、先日は正規の練習日とは別に、「自主活動日」という扱いで追加練習を行った。そこで面白いことが起こったので書き残しておきたいと思う。

好きにやらせてみる

今年度から自主活動日という活動形態を試行的に実施している。
正規の活動日ではないので、参加は自由。そして何をするかも自由と言う活動日である。

参加状況は悪くなく、他の習い事で予定が埋まってない選手のほとんどが参加してくる。

活動内容は、練習でも勉強でも自由としている。同じチームであっても、それぞれの価値観の元にバラバラな活動をすることがある状況を意図的に作り、お互いを尊重できるようになってほしい狙いがある。
ただし、基本的には選手は練習を選択する(ここで勉強する勇気を持った選手が出てきてくれないだろうか…)

参加した選手たちが練習を選択した時も、こちらからは極力介入せずにメニューを決めさせている。その日の練習のテーマを設定させたり、メニューの目的を問いかけるなど、ある程度ファシリテートはするが、選手たちが決めた内容を修正することはしないように心がけている。練習中のフィードバックもほとんどしない。質問があれば答えるよ、くらいのスタンスである。

正しい知識や計画に基づいたメニューに取り組むことも当然ながら重要である。しかし、選手たち自身の主体性やチームワークの向上のためには、内容はさておき、まず選手たち自身で考え、対話したことを実行させることも必要だと考えている。そのような考えから自主活動日を試行することとなった。

1・2年生チームの取り組み

前置きが長くなってしまった。

先日の第1回自主活動日では、公式戦を終えた3年生がミーティングを希望したため、試合に出なかった1・2年生だけで練習をすることとなった。
小学生からの持ち上がりが多いとはいえ、出会って間も無い選手もおり、仲を深める良い機会だと思い、自分たちで練習に取り組ませてみた。

結果として、お互いを名前で親しげに呼び合う良好な雰囲気ができたのだが、こちらの予想を超えて良かったことが2つ起きていた。

1.練習の強度が指示することなく高くなっていた
2.自然にプレーが向上する様子が見られた

練習の強度が上がった

一つ目は練習の強度が上がったということだが、とにかくいつも以上に走りまくっていた。

選手たちがテーマを速攻としたこともあり、ワンマン速攻や折り返しの2対2などのメニューに取り組んでいたのだが、とにかく本数が多い。

その実態は、後先考えずに膨大な本数を設定したり、どれだけやったら終わるのかを決めないからエンドレスにやる羽目に陥っているのだが…

しんどそうではあったが、途中で投げ出そうとする者はおらず、全ての練習を楽しそうにやり切っていた。

また、シューターとGKで勝負して負けたら筋トレをする方式でシュート練習もしていたのだが、GKが止めまくっていたのでシューター側は4種目くらいを各100回以上はやっていた。正しい負荷がかかっていたかどうかはさておき、選手たちは勝負を楽しみ、仲良く筋トレしていた。

いつものようにこちらの指示で同内容のメニューに取り組ませたら、やってくれるとは思うが、こんな雰囲気にはならなかっただろうなと感じた。

自分たちで決めたことならやれる。遊びの延長のような感覚でやっていると夢中でキツいこともこなしてしまうことなのだろうか。強度を上げるなら好きにやらせてみることも一つの選択肢なのかもしれない。

自然にプレーが上達していく

彼らは折り返しの2対2をひたすらやり続けていた。見かねたこちらが止めるまで、20分以上はやっていたと思う。コートプレーヤー7人でやっていたので回転はそれなりに速く、体力的にはいいトレーニングになったと思うが、いいことはそれだけではなかった。

彼らは1部の子を除いて、パスキャッチの精度はそこまで高くなく、OFのボールを受ける動きなども決して上手ではない。実際に、練習の中でなんでもないパスキャッチミスは多く、DFから少しプレスをかけられた途端に攻めれなくなってしまっていた。

しかし、遠くから見守っているうちに、あることに気が付く。疲れているはずの彼らのパスキャッチの精度が向上している。そればかりか、ボールを受ける動きを、こちらが教える訳でもなくできるようになっている選手がいる。いつの間にか上達しているのである。

これは後から考えるに、今流行りのディファレンシャルラーニングとか、ゲーム中心の練習等で言われる「繰り返しのない繰り返し」の状況が生まれていたのではないか。(そんな立派なものではないかもしれないが)

相手の動きは固定されているわけではないので、毎回状況は微妙に異なるが、起こりやすいプレー、望ましいプレーは同じなので、失敗の繰り返しの中で上手くいったプレーが選別されていくように見えた。ちょうど、自転車の乗り方を覚えるような感じだ。失敗はしてもいいと選手には常々伝えていたが、「これだけ失敗してもいいのか」と思ったのが正直な所である。

そのような変化を自分が認識したのは、少なくとも10分以上が経過したからだったように思う。通常の練習なら自分は恐らくそんなに長く1セットを組まないので、このような現象は引き出せなかったと思う。

また、普段の練習ではフィードバックが多すぎたのかもしれないと反省した。プレーのたびにアドバイスをするよりも、特定の状況下で試行回数を増やした方がよっぽど選手は学ぶのかもしれない。

ここからは、ある程度の大枠を示し、基礎的な動き作りをした後は、自然と良いプレーが身につくまでひたすら繰り返させることも効果的な方法の一つなのかと考えさせられた。

より良い方法を探して

初めての自主活動日は、今までの自分では気づくことのできなかった発見をもたらしてくれた。

自分たちで好きにやらせることは指導者として勇気を伴うが、選手たちの主体性を伸ばす以外にも恩恵があるのかもしれない。今の自分は、通常練習はメニューを組むけれど、自主活動日は選手たちに委ねていくことで、適切なバランスを探していきたいと思う。

もちろん、今回たまたま上手くいったとう可能性があることも否めない。

人数バランスが絶妙だったから、見本を示せる選手がいたから、練習メニューがたまたま上手くいくものだったから、それまでの練習で蓄積されていたものが偶然このタイミングで形になったから…考えられる要因は多い。

ただ、そんなところも含めて、選手たちと一緒により良い方法を探っていくことも、スポーツの楽しさの一つで、結果的に上達のための最短距離になるのかもしれない。なったら良いなと思う。



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