クリムト展 ウィーンと日本 1900

2019.07.11
クリムト没後100年記念の展示とのことで都内では
国立新美術館で
「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 
世紀末への道」展、
目黒区美術館で
「世紀末ウィーンのグラフィック」展と、
クリムトを中心とする展覧会が開かれています。

「主要作品は3つの会場で展示されるはず。
 ああ、ハシゴするの面倒だな…」
と、なかなか足が向かなかったのですが、
ぎりぎり滑り込んで観てきました。

油彩画25点以上が集う東京では、
約30年ぶりの大規模展だったので
平日なのに凄い人でした…
もう、作品見てるのか人見てるのか
分からないくらい。

今回は事前情報で音声ガイダンスを
借りるといいと聴き久々にガイダンス
つきで鑑賞しました。

もうね、正解です。
ベートーヴェン・フリーズの展示中に
第9が聴けたし、ガイダンスの内容も
分かりやすかったですが、
何よりも人が多すぎてキャプションを
読む余裕がなかったからガイダンス聴き
つつ観れたのは良かったです。


作品についてですが
日本美術の影響を受けていたことがよく
分かる展示でした。
以前作品を見た時はその点はあまり印象
深くなかったし、画集をみてもそこまで
感じたことがありませんでしたが、今回は
色濃く影響を感じることができました。

クリムトは
『風景画や肖像画などの絵画作品は
装飾品である』
と考えており、空間を彩る装飾品として
絵画を描いていたことから、日本美術の
平面的な表現と、絵画を装飾として捉える
自身の作風が合致したのでしょうね。

一部、
日本の作品を展示している箇所があり
「浮世絵ってなんだかね…」
とどこかから声がして、確かに若い時は
そんな風に思っていたなあ。と。
クリムトだけでなく、世界の名立たる
作家が影響を受けた日本の美術を私たちは
もっと誇りに思わなくてはいけないわ。
とか思いつつ鑑賞しました。

展示自体について、私個人としては
2003年の
「クリムト 1900年ウィーンの美神展」
(兵庫県立美術館)が大変よかったです。
安藤忠雄建築(豪華!バブリー!)を最大限
に活かした展示で、展示と展示の間に余韻が
あった事と、《ベートーヴェン・フリーズ》
の展示室で第9が流れていた事が印象的でした。
見応え、満足度を考えるとどうしてもこの時
の展示に軍配が上がってしまうのです。

とは言いつつも、
初来日の『女の三世代』は拝めて良かった
です。


実物は私が思っていたよりも優しい絵だと
思いました。

クリムトの優しいタッチと、金箔・銀箔は
画集で表現するには難しいのできっとコン
トラストは強めにしているのでしょうね。
そのイメージがあったので、生まれてから
死ぬまでを一枚に描きあげた『女の三世代』ですが、「死」の部分がかなり強調されて
いたように感じていました。

でも、実際は死をも包み込んだ柔らかく
優しい作品でした。
人間の存在そのものを表しており、
クリムトの人を愛する気持ちが現れている
のだと感じました。


◆今回の展示テーマは「人生」だった?

こうやって感想を書き上げると、
なぜ今回の展示が引っかかったのか
分かった気がしました。

初来日の『女の三世代』をメインに
考えるとメインテーマは「人生」に焦点が
いくと思います。
人生というのは人それぞれに違っていて、
全てを理解するのは難しいですよね。
理解しがたい何かが私の中にあったの
でしょう。
鑑賞後にもやもやしたものを感じたのは
そこが影響しているからかも…

先ほど比較した神戸県立美術館での展示の
メインテーマは展示作品から考えると「愛」
だったのだと。
色彩が明るい作品が多かったこともあって、
割と受け入れやすい展示になっていたのな。
なんて。

どちらの展示にしても、私の中に「何か」
を植えつけたことに違いはないのです。


#クリムト展 #三世代#東京都美術館#ウィーン

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