はじめての「一番星」という意味。~アビスパ福岡のルヴァンカップ優勝に寄せて。

これは2023年11月6日に天神の市役所前ふれあい広場で行なわれた祝勝会の後、急遽運営ボランティアのお願いが来て慌てて博多駅に向かうために乗ったタクシーでの車内でのこと。運転手さんは私に「アビスパ、強くなりましたね……」という前置きからこんな話をしてくれました。

昔アビスパが雁ノ巣ではなく、今津運動公園というところで練習をしていた頃でした。運転手さんはアビスパの若い選手三人ほどを乗せました。でも乗せる前に運転手さんはコンビニでパンなどを買って店から出てきた彼らがあろうことかその場で袋を開けて路上に捨ててしまったところを遠目で見てしまいました。その後手を上げて車に乗り込んできた彼らに運転手さんは「余計なお世話だけど、路上にゴミを捨てるのは良くないと思いますよ」と一言告げました。そしたら彼らの一人が「はぁ?なんや、俺らプロのサッカー選手やぞ?」と運転手さんに食ってかかったそうです。運転手さんは冷静に「プロの選手だったら、市民のお手本になるような行動をしないと」と忠告したのですがプロに注意するなんて生意気な的な感じで車内の雰囲気は最悪だったそうです。

「それは良くないですね。私がその場にいたらやはり不快に感じていたと思います」
私は運転手さんにこう答えていました。ただ伝えたいことがあったので一言だけ付け加えました。
「確かに素行の悪い選手がいたりチーム自体も雰囲気が悪かったと、私も感じていた時期もありました。でも今のアビスパにはそんなことをする選手は一人もいません。みんな、プロとして立派な自覚を持っていると私は思っています」
そう答えると運転手さんは笑って「そうですね。だから強くなったんだと思いますよ」と言ってくださいました。

ルヴァンカップの決勝戦、私達家族は現地の国立競技場にいました。
そして強豪の、そして素晴らしい応援をする浦和レッズさんに対して私達サポーターも喉が枯れるほどに声を出した。チームも素晴らしい戦いをした。試合終了の笛が鳴った時、私は大声を上げて泣き崩れるようになっていました。
「色んな想いが溢れてきた」とXでは書きましたが…… J1で定着することが出来、この舞台に立つことが出来、一番星を獲れた喜び。そして過去の悔しさも、悲しみも、戸惑いも、怒りも…すべて報われたと感じた瞬間でした。
そしてカップを福岡に持ち帰った時の祝勝会での選手達のあの嬉しそうで誇らしい姿が、ちょっとお茶目な長谷部監督が、そしてコーチやスタッフの皆さんが今まで以上により一層愛しく感じた時間でした。

タクシーが博多駅に着く直前の運転手さんの言葉が心に残っています。
「これからアビスパが、もっと市民に愛されるクラブになるといいですね」
運転手さんに感謝の言葉を伝えてタクシーを降りて沢山の人が祝勝会に集まっているのを見てこんなことを思いました。

手に取った一番星は私達にとって、そして福岡にとって。
とても大きな、「最初の星」でした。
アビスパ福岡が本当の「福岡の誇り」として育ち、歩いていく物語はまだまだ続いていくのです。私達はそれを精一杯応援していくだけです。


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