小さな嘘。

玄関先の小さな小さな庭。
好きな場所。

整然と並んでいる花壇より、野山みたいな自由な場所にしたくて。
そんなふうだから、よく模様替えされる小さな庭。
花の終わった鉢を
『しばらくここで我慢してね。』

と、隅っこに追いやったりもする。

春になった。

『ねぇねぇ。わたしここにいたんだけど
  わすれてないよね。』
と小さな花が私をみている。
あの隅の花だ。
私は
『忘れるはずないよぉ。』
と視線を返した。

かわいく咲いたその花にジョウロでたっぷり水をあげながら心の中で呟いた。

『ごめん。
 ホントは忘れてたんだ。
 ホントにごめん。』

『やっぱりね。』
とクスッと笑ったみたいに
小さい花が小さく揺れた。