風の訪れ

出会いは、唐突だった。

歩いていたら、突然つむじ風が吹き上がって反射的に顔を背けるような、あの瞬間と同じくらい俄に起きた。こういう言い方をしては、どうも掻き乱して去っていったように聞こえてしまいそうだけれど、“彼”はどちらというと、春から夏にかけて頬をくすぐる爽やかな風だった。彼は、普段そこまで大きく開けることのないであろう瞳をぱっちりと開け、くるりとした黒目でこちらを見ていた。

「ああ、あなたが宮岡くん……ですよね。」

慌てたように頭を下げ、顔を上げたときには、くすくすと小さく声を上げて、彼は笑った。
軽やかに通り抜ける風に、頭を傾げた彼の茶髪がさらさらとなびいた。
「いやだなあ。同い歳なんだけど。」

そういって再び視界に入った彼の表情は、どうにももっと強い風が吹いたら吹き飛んでしまいそうな得体の知れぬ儚さを湛えていた。

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