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【レンズレビュー】TAMRON SP 70-200mm F2.8 Di VC USD(A009)

1年経てば書けるだろうということで、今回は主力のレンズとして使っていたTAMRON 70-200mm F2.8 Di VC USD(A009) (以下A009)について、鉄道写真をメインとする筆者の視点から書いていきます。なお、マウントはニコンFマウントとなります。


ちょっと長いので目次をば


導入経緯

D7100の記事を見て頂ければわかると思いますが、私は2020年1月にLUMIX G8を導入しましたが、写真面で不満が出てきたため、動画はLUMIX、写真はNikonの2台体制を敷きなおすことに決めました。ちょうどお金も稼いでいたころだったので、鉄道写真においての王道レンズともいえる70-200mm F2.8でも導入しようと考えていました。
導入にあたっては、他に候補としてAF-S VR Zoom-Nikkor 70-200 F2.8G VR IF-ED、TAMRON SP AF 70-200mm F2.8 Di LD [IF]MACRO(A001)、SIGMA APO 70-200mm F2.8 DG OS HSMなどがあがりました。
その中でA009を選んだ理由は以下の通りです。

・AF-S VR 70-200/2.8G...周辺減光がひどい。将来的にフルサイズ導入で心配
・A001...手振れ補正ない、AF速度で難、もう少し予算つぎこめる
・SIGMA APO 70-200/2.8...ズームリングが逆

そんなわけで、コスパと手ブレ補正という面からA009を選ぶことにしました。4月に注文する予定でしたが購入先であるカメラのキタムラは緊急事態宣言を受けて5月まで休業。結局届いたのは5月中旬でした。


メリット

ここからはA009のメリット・デメリットを、作例を交えながらお話しします。

開放から十分使える画質

これは大きいです。購入前、F4~5.6あたりが描写のピークといわれていたので開放はダメなのかな、と思っていましたが蓋を開けてみればそんなことはなく、開放からもしっかりと使える性能でした。モニターで見ても四隅以外はF値の変動で描写が大きく変わることはないようにも見えます。高画素機D800Eでこれですから本当にすごい。

開放にて。ボディはD800E。地下では明るいF値が生命線みたいなものです。

絞るとさらにカリっとします。F6.3にて


手ブレ補正が強力

当レンズは約4段分の手ブレ補正をもっています。シャッターボタンを半押しした瞬間にファインダーが張り付くレベルです。それまで使っていたAF-S 55-200mm(キットレンズとか呼ばれるやつ)はVRが故障に等しいレベルだったので、ここにきて「本当」の手ブレ補正を知ることとなりました。なお、半押しを解除しても数秒間は補正状態が続くようで、ここは人によっては少し違和感を感じるかも。

(一個上のと似たような構図ですが)こちらは換算270mmで1/160です。ボディはD300。暗いところで135mm以上は手ブレ補正の恩恵を大きく受けると思います。


AFが静かで速い

超音波モータUSD内蔵のため、AF音はかなり静かです。「コ―ッ」って感じの音で合焦します。
純正を試したことがないためそれに劣るのかは知りませんがAF速度も速い方だと思います。
以下は電車の面にダイナミック9点AFで追従させたものです。ボディはD7100。

鉄道写真の世界では「置きピン」が原則ですが、現代の技術の進歩により低速であれば余裕で追従可能となりました。こういうところは「おまけで拾っておこう」という場面でありがたいです。


悪条件下でも動く安心感

当レンズは簡易防滴機能もあります。
2020年12月。吹雪の舞う湖西線の某駅でD300と当レンズを持って撮影しましたが、特に異常も起こさず動いてくれました。簡易ですが、あるのとないのとではこういった環境下で使う・使わないの判断材料となり、安心感でもあります。とはいえあの時は屋根の下に避難した後、即座にタオルで拭きましたが。

2枚目は1枚目を撮った直後。この時は本当にヤバいなと感じた瞬間です。


コストパフォーマンスが高い

当レンズは生産が終了したため、中古での入手となります。既に後継も出ているためかなりコストパフォーマンスは良いです。私が買ったときは7万円でしたが、2021年4月現在では6万円台から購入することができます。


その他メリット

あまり気にしなかったけど人によってはこれもメリットと言える点を。
収差は皆無です。デジタル時代のレンズはこういうところに配慮されてて補正しなくてもいいので楽です。
ボケはフルサイズで使うことで美しくみえます。APS-Cだと場合によっては汚めに見えるかもしれません。これは個体差かも
2021年12月現在、後継が出ているにも関わらずまだ修理が可能です。この点は心強いですね
また前述の通り超音波モーター(USD)内蔵のため、ニコンのデジタル一眼レフはすべての機種に装着、AFを動作させることが可能です。当たり前のように聞こえますが、ニコンの初級者機はボディ内AFを搭載していないため一部のAFレンズでAFができないのです。つまりは機種を選ばないといっていいでしょう。


デメリット

Fマウント版の拡張性は皆無

最大のデメリットがこれでした。まず、テレコンが装着できません。タムロンからは焦点距離1.4倍と2倍のテレコンが出ていますが、対応レンズは電磁絞り対応機種、ニッコールレンズで言い換えればAF-SのEタイプのみ。当レンズは機械式絞りのAF-S Gタイプに相当するため、このテレコンは非対応なのです。一応ニコンのテレコンTC-14E Ⅱを改造してつけられるとの報告がありますが、動作も不安定な模様。
さらにFマウントからミラーレスのZマウントに変換するアダプター「FTZ」はマウントにはつけられるもののAF非対応という有様。ちなみにSIGMA APO 70-200mm F2.8 DG OS HSMはFTZに対応しており、キヤノン版のA009もタムロンに預けることでEFマウントからRFマウントに変換する「EF-EOSR」にAF対応しています。本当に悲しいです。早く対応してタムロンさん。
現状では後継のTAMRON 70-200mm F2.8 Di VC USD G2(A025)がテレコン、FTZともに対応しているため、拡張性を求めるならそちらを買うしかなさそうです。

【2021/7/7追記】FTZでのAFについて
FTZのAF可否について、某家電量販店にてZ6+FTZ+A009で検証を行いました。結果としては、「AFは動くけど、大きくウォブリングしてなかなか合わず、だんだんウォブリングが小さくなって合焦する」といった感じでした。また、露出の極端な環境では合焦しないこともありました。これではA009の速いAFを活かすことはできません。公式HPで「MFのみ」と記載する理由がようやくわかりました。


MFリングが少し重い

暗いところやマウントアダプターを使うときはMFになるわけですが、そういうときに少し重いというか…かったるさを感じます。ちなみに当レンズはフルタイムマニュアルフォーカスが可能ですが、一度も活用したことはありません。


三脚座の付け外しが面倒

三脚座はネジを緩める(締める)ことで付け外しが可能ですが、ネジはかなり回さないと固定・解除ができません。緊急で三脚座を外す(つける)場面はそうそうないとは思いますが、、


ゴーストは普通に出る(訂正あり)

某C社の70-200/2.8よりかはずっとマシですが、ハイビームなど強光源下では普通にゴーストが出ます。A025ではゴーストやフレアを抑えるeBANDコーティングとやらを採用しているらしいです。
フレアに関しては未検証です。ごめんなさい…

【2022/6/13追記】どうやら目立つゴーストは保護フィルターが原因だったようです。下の作例よりかは抑えられるはず。完全になくすことができるか否かは既に手放しているので検証できません。訂正してお詫びします。


その他

・「(冒頭の写真にある)金帯がダサい、所有欲減退する」という意見が多くみられますが、レンズは鑑賞物ではありません。大事なのは外見より中身です。
・重さは慣れです。このレンズより重いレンズはいくらでもあります。

【2021/1/8追記】
片ボケが出てしまっため、1年と8か月で当レンズを手放すことになりました。遠征中にD500につけっぱにしてそのまま鞄に入れ、床に置いたときや、他の荷物を乱雑に入れた時に何らかのダメージが入ったのが原因かと勝手に推測していますが、はっきりした原因はわかりません。サードパーティとはいえ、当レンズは立派な大三元の一角を担うレンズです。皆様、くれぐれも取り扱いにはご注意を。
こんなしょうもないヒューマンエラーで、うちのパーティからは引退を余儀なくされてしまいましたが、使っている間は買い換えたいと思うことはありませんでした。それだけ優秀なレンズだったと思います。

【2022/3/25追記】
今になって手放したことを段々後悔してきました。
手放した当初は単焦点で軽くいくか〜wなんて思っていたのですが、未踏の地に乗り入れるとなるとデータを蓄積していないのでありとあらゆる焦点域を持っていく必要があります。そうすると重くかさばり、結果的にズームレンズ持ってった方がいいじゃん、という結論に至ってしまいました。
単焦点の持つデメリット「画角を変えられない」は、鉄道写真では場合によっては相当大きなダメージとなることをここに記しておきます。
まだ修理も可能ですから、壊れてもすぐに手放そうとせず、代替手段は慎重に検討してください。

【2022/6/13追記】
4月にAF-S 70-200mm F2.8 VRiiを入手して少し期間が経ったので、当レンズとの比較を。
描写力に関してはどちらもほぼ変わらないレベルなのではないかと考えています。純正のアドバンテージは、①FTZ、テレコンが使える ②フォーカスリミッターがある あたりだと思います。純粋な描写力だけを見るのであれば、このレンズのコスパの良さは際立って良いものだと思います。


結論

このレンズのニコン用は、Fマウントのみでシステムを固める場合にはおすすめできます。
現状では前述の通り、後継のA025がテレコン、FTZともに対応しているため、ミラーレスに主軸が移りつつある2022年現在において有利です。このレンズは、Zマウントなんて考えてないからFマウントでお安くナナニッパを導入したい、という方に勧められるレンズです。
少しネガティブな感じに書きましたが、描写は上々、手ブレ補正はしっかり効きますしAFも速い。何より修理が可能という点でも、当レンズは「おすすめ」はできます。ただ、昨今のミラーレス化にこのレンズがついていけなくなるという話であって。
(2022/3/12 考えが変わったためこの項目は大幅に修正しました。)

…長くなりました。ここまで読んでくださりありがとうございました。

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