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市のゴミ集積所で働き始めてもう二十五年。真っ黒い異臭には慣れたし、ゴミとは対照的に輝いていたあの時を思い出させるものを見つけたってただのゴミにしか過ぎないから情なんかも消えた。薄暗い集積所の中で寂しく点っている灯りが照らしていたのは十七年前に行方不明になった息子が大事に持っていた時計だった。


『遠泳』より

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