ラップバトル選挙法!! (ラフ)

(はじめに)

この「ラップバトル選挙法!!」は2019年参議院選挙の時に思いついたネタで勢いで書きました。その後の推敲や修正予定もあったのですが多忙と勢いの喪失で、いつそれができるかが不明になっています。そのため、(ラフ)としてあげることにしました。それでは本編をどうぞ

(以下本編)



202X年。

国会が史上最高に荒れた。

「こんな馬鹿げた法律を作って、国民になんと説明するのですか!国民に胸を張って報告できますか!民主主義を、選挙制度を侮辱するこんな法律を!」
「民主主義とそれを作り上げる選挙制度が崩壊しかけているからこそこの法律を作るのです!多数派工作でしかない選挙に政治家個人の力を要求する!選挙になかったコンテンツ力を生み出し選挙への関心を呼び起こす!全日本人の全日本人に対する政治議論を巻き起こす!それこそが選挙!それこそが民主主義!言葉で戦わぬ政治家に被選挙権なし!!」

与党過半数!!

「ラップバトル選挙法を制定する!!」

2025年
夏!

N県N市のとある中学校。

「えーすでに各家庭にも連絡があったかと思いますが、明日N市は”街宣地区”になります。学校は休みになりますので間違って学校に来ないよーに。先生も休みで〜す。」

帰りの会で担任の先生が生徒たちに伝える。

「やったぜ!明日ユウタん家行ってゲームしねぇ?」

帰りの会が終わるやいなや、あっちゃんが速攻振り向き後ろの席の2人に声をかける。

「は?んなわけあるかよ明日は街にいかねぇとだから俺家にいねぇよ」

「えー!なんでだよ カジも街行くん?」

「僕も行くよ。あっちゃんも行こうよ」

あっちゃん、露骨に嫌そうな顔。

「え〜〜??なんでだよ俺たちまだ中学生だし選挙とかカンケーねぇじゃん〜〜」

カジ、目を見開いて

「確かに選挙権はないけどtwitterで動画が出回ってるみたいに今回から選挙がすごいんだ!なにせあの法律ができてから初の国政選挙で最初はみんなシラけたことになると思ってたけどどの政治家も予想以上にアツいバトルを繰り広げてて連日twitterトレンド入りするしyoutuberが全国の街宣地区を巡って生放送とかしてるし5chの政治板なんか鯖落ち頻発レベルで書き込みされてるんだ!」

あっちゃんは明らかに引いている。

「ユウタもこんな?」

「俺はカジほどじゃないけど、やっぱ興味あるよ」

「ふーん……」


翌日!


3人は駅前の大通りから1本外れた路地にいた。午前中にもかかわらず街には休日以上に人が溢れている。あっちゃんが買うのに10分かかった缶コーラを開けて飲む。かなり暑かったので半分イッキし、足元の地面に置いた。

「す、すげぇな。休みなのにみんな街にいる……。おいカジ、お前何みてんの?」

「アプリだよ!これで街宣車が今どこにいるかわかるんだ」
すると街の人々が一斉に動きだす。カジとユウタも駆け足気味に動き出した。

「え?おいどこ行くんだよ!」

「あっちゃん早く!あっちの方に街宣車が来るみたいなんだ!」

二人を急いで追いかけるあっちゃん。突然のことにコーラも置きっぱなしだ。

「街宣車なんか待ってりゃ来るだろ!」

「知らないの?街宣車が2台カチあった時に始まるんだよ!」

「何が?」



「ラップバトルだよ!!」



駅前大通り・交差点!

周囲の人々がスマホを見、周りを見、ざわつきはじめ、次第に声が大きくなり、「会場」のボルテージが上がって行く。

「駅側から来るぞ!あれは新田だ!自明党公認候補の新田タケシだ!」
「明治通りの方から来やがったぞ……マジか!ありゃ民是党推薦の堂林、堂林ミツオ!」
「N選挙区の事実上決勝戦みたいなもんじゃねぇか!」

『一般車の立ち入りを禁止します!』

交差点に交通規制が引かれる!

「来るぞ、来るぞ、カチ合うぞ!」

そして両車が交差点を中心に向かい合った!観衆の市民は歩道をはみ出し車道に広がり、街宣車を取り囲む。

街宣車の上に候補者が登る!夏の日差しを無視したスーツ姿、手には白手袋、片手に58ひっさげて候補者が登った!

「これはこれは、民是党N県連代表の堂林さんではないですか」

「そういうあなたは自明党公認の新田さん」

「いやはや大変な盛り上がりですねぇ。65の老体には応える熱気ではないですか?堂林さん……」

「50と少しのあなたには荷が重そうですが?新田さァん……」


「おいおい、これ本当に選挙かよ?おいカジ、これガチか?」

「見ればわかるでしょあっちゃん!ガチもんのガチだよ!」

「自明党公認候補の新田タケシ51歳、こっちは新人だ。元医者らしい」

「いつの間にかユウタも解説してやがる。新人って?政治家1年目?」

「この選挙区じゃまだ当選したことがないってことだ。あっちは民是党推薦の堂林ミツオ65歳だな。現職だ」

「現職の方が強そうな気がするけどなぁ、歳も上だし」

「そうとも言えないよあっちゃん。確かにこの選挙区でこれまで議席を持っていたのは民是の堂林さんだけど政権与党は自明党だ。自明党は色々騒がれてるけど、それが政権与党だからって見方もある。何より野党が連立だの分党だのごちゃごちゃやってる間に、自明党は10年以上の長期政権を組み立てて来たんだ。大枠では期待するって声もあるんだよ」

「どうかなぁーカジ。確かに自明が長期間引っ張って来たことへの信頼もなくはねぇけど、やっぱり度重なる失言問題とか、経済政策の実感があんまりないって声も大きい。それにこれは参議院選挙だ。自明他の与党が衆議院の議席数で勝ってる今、参議院では野党にそのストッパーとかカウンターとしての役割を期待するのもあると思うぜ」

「ねじれを作りたいの?隣国がきな臭いいまあんまり悠長なことしてられないよ」

「現政権には数でコトを推し進めて来た感が否めない。一度バランスをとって熟慮する期間が必要なはずだ」

「おいおいカジ、ユウタ!二人とも喧嘩はよせよ」

カジとユウタは平然とした表情であっちゃんをみる。

「喧嘩じゃないよあっちゃん」

「そうだな。こりゃ”議論”だ」



その時!


『そこの街宣車2ダァーーーーーーーーーイ!!そのラップバトル、この私「選挙管理委員会の井上」が預かる!!』

駅前商店のアーケード上に立ち上がった人物がそう名乗る!同時に交差点4カ所にスピーカーがスタンドとともに設置される!

『これで準備は整った!両候補、マイクを接続しろ!DJもこの私選挙管理委員会の井上が受け持つ!』

「来るぞ、いよいよ」
「来るよあっちゃん」
「来んのかマジでよ!」


『先攻自明党新田タケシーー後攻民是党堂林ミツオーー16小節2本勝ーーー負ッッ!!!!!』

ー新田ー
「お暑い中足をお運びいただきありがとうございますN市の皆々様 
 自明党公認候補の新田タケシもとはN市の医師
 病の人助けるのが医師 変わらぬは世のため人のための意思
 健康長寿で医療費安いN県 このモデルで日本を席巻
 だけじゃないこの県内各地の山野を整備 林野を管理
 アウトドアで地域盛り上がる 夕方ニュースで地元取り上げる
 野山整備なら人を準備 高齢者雇用に若人も来ようよ
 両方登用とっても重宝 老若男女が意気軒昂 」

ー堂林ー
「はい民是の推薦 堂林ミツオ 現職でお世話になってますいつも
 拝聴しました自明の新田さん でも甘さがあるのは自明の理さ
 N県の自然が素敵な公約 でもそれよりすべきなことあるはず
 足りない賃金 ありすぎ税金 解釈だけで憲法改正?
 冗談ではありません 誰がやったのか あなたたち政権与党です
 10年以上の単独政権 止めるためにここに立っています
 賃金引き上げ消費税引き下げ 夢見る前に足場を固めよ
 学校行けずに戦争行かす 9条改悪大反対」
 
ー新田ー
「10年以上も私より生きてて 寸分ほどもわかってない
 何より基本雇用を生み出す 自然と財布もゆるみ出す
 買う人増えれば企業も儲かる 企業が儲かり所得が上がる
 補助金だけばらまく どこかの誰かとは全然違います
 まぁもう10年以上も前ですけどねー
 あと憲法改正 これはまさに戦後日本の集大成
 違憲合憲微妙なラインの自衛隊をしっかり明記
 国際社会をリードする外交 そのため必要憲法改正」

ー堂林ー
「外交努力と自衛隊の明記 どう繋がったのか謎のspeaking
 話し合いを頑張りたいなら 殺し合いの武器は置け
 経済のご講義 どうもありがとう 散々聞いた夢物語
 では実際どうですか? 雇用は増えましたか?
 実感ある景気回復 いつになったら訪れる?
 いつになったら好景気?でもいつまでたっても高税率
 先ほど言った 足場を固めよ まずは国民の気持ちを知れ
 山の頂上見て足元見てないから それじゃすぐに踏み外す」


『終了ーーーーーーーーーーー!!両候補握手ののちお戻りください。以上で街宣ラップバトルを終了いたします!DJは選挙管理委員会の井上でしたーーーー!!!』


集まっていた人々が四方に散って行く。だがその熱は冷めることがない。あるものはSNSに感想を書き、あるものは別の者と早速議論している。見れば近くの店は「店内議論OK!」と看板まで出している


「すげぇ……マジでラップバトルしてた……」

「確かに消費税に関しては僕の親もきつくなって来たって言ってたな〜、でもあげるタイミングなんていつだって難しいよ〜」

「ただ正直堂林さんの雇用が増えたか?って言葉は案外軽かったな。増えてるって統計もあったみたいだし。だが憲法に関してはまだしっかり国民と議論できてないんじゃないかな」

「それは僕も感じた。確かに、話し合いで解決できるなら武器はいらないもんね。抑止力……とかって話もあるけど、まだ勉強が足りないや……あっちゃんはどう思った?」

「そうだ、俺もあっちゃんの感想聞きたいわ」

「うーん、なんか正直何言ってんのか半分くらいわかんなかったけどなー。でも今まで何も知らなかったから残りの半分だけでもすげぇ濃い感じだったわ。何つーの、ある方法があればそうじゃない方法もあって、どっちが正しいかってなかなか難しいんだなって感じ?」

「あっちゃんがまともなこと言ってる……」

「やかましいわ!んーでも実際ほんと、今まで何にも興味なかったからマジわからんことばっかだわ。そもそもウチの県って長生きだったんだな」

「おー、じゃあせっかくだしこの後ユウタくんの家に言って色々話そうよ。パソコンもあるよね?」

「おう、いいぜ。一応親に聞くわ」

「えーそしたらゲームしたいぜ」

「あっちゃん〜〜」



(終)





サポートしていただくと、元気になります。元気は良いこと