推しポリシーに課金する

こんにちは。

世間では推しのタレントが表紙を飾った雑誌を「読む用」、「飾る用」、「保存用」とたくさん買う人々がいます。

書店でアルバイトをしていたことがありますが、熱烈なファンの人たち、すごかった……。たくさん買ってくれました。

雑誌an・anで応援したいグループが表紙を飾った号を大量に買うことで重版をさせ、グループの知名度をあげる「anan狩り」という言葉もうまれた。


自分も推しポリシーにどんどんお金をつぎ込むことにしています。

それは、推しポリシーをもっと世の中に広めるためです。

安くていいものが本当に良いもの?

社会学者の富永京子さんは著書『みんなの「わがまま」入門』(左右社)で身近なところからできる社会運動について書かれています。

〈買う・選ぶもわがままのうち〉社会や人権、自然環境に配慮した販路や工程でつくられ、流通した商品を購入することを「エシカル(倫理的な)消費」と言ったりもします。〜中略〜選択肢そのものをつくり上げるのではなく、あらかじめ定められた選択肢から選ぶだけでも、意義があることと言えるでしょう。


富永さんのゼミの学生さんは、「ブラック労働」を助長させないために、深夜にコンビニに行くことを避けたり、ワンオペのファーストフード店には行かないようにしているそうです。

この本を読むまでは、自分も飲み会の後に「お酒飲んだあとってなんかミルクティーのみたくちゃうんだよね〜」と、深夜コンビニへ気軽に行き、ついでにアイスまで買っていました。

深夜にコンビニが開いているのは、買う人がいて、儲かるから。

消費者にとって、安くていいものが本当に良いお店・良い商品なのか。

買うか迷うけどこのコストパフォーマンスなら!というのが成立して、多くの人をそう思わせて、売上が大きいものが本当にいいものかもしれない。

でも、コスパが良いのは然るべきところにギャランティが払われてないことがある。


良いものでも売れないのはなぜ

たとえば、バンドエイド。

米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンが展開するばんそうこうのブランド「バンドエイド」はこのほど、黒人や茶色がかった肌の消費者に合った色味の製品をラインアップに加える意向を表明した。(バンドエイド、多様な色合いのばんそうこう発売へ)


BLMの動きを受けて、多様な色合いのバンドエイドを販売するという。

驚くことに、2005年にも一度ラインナップを増やしていたものの、売り上げが伸びず、生産をストップしていた。

かなしいかな、資本主義では売れないものが淘汰される。(このバンドエイドの例のように、また復活することもあるけれど)

でも、売れないからといってそれは本当に悪い商品なのだろうか。

本当に自分の意思で買ったのか

Video Researchが調査したテレビCMの接触回数と購入率の関係性によると、広告を目にする回数が増えるにつれ、商品購入率も上がるという。(ただし、5回目以降は上昇しにくい)

接触回数としては4回までは効果が上がりますが、その後変化が小さくなります。つまり、広告配信量に応じて費用対効果が見込めるのはフリークエンシー4回までといえます。(ディスプレイ広告のフリークエンシーとは?適切な接触回数は何回?)

電車にのったり、テレビやYouTubeをみたり、ウェブ記事を見たり、日常生活では広告が知らず知らずのうちに目に入ってくる。

自分の意思で買ったつもりでも、実はお金をかけた広告で何度も目にしていて気になるように背けられてたりする。(ただ、広告は決して悪ではない。広告収入のおかげで運用できているいろいろなサービスがあるのだから)


推しポリシーに課金するのはただの自己満足か

好きな雑誌、好きな作家、好きな店……そのポリシーに共感したら、続いて欲しいから買うというファン精神をこれまで発揮してきた。

もしかしてそれは自分の勝手な正義感による偽善行為で無駄だったのでは?とたまに思うが、そんなことはないはず。

世の中ではどうしてもお金が人を動かすことがある。
アメリカでおこったレイプ事件で、黒人差別によるひどい冤罪があった。トランプ氏が大金を払って新聞の紙面を買取、容疑者たちを死刑にするよう訴えたことで、世論は流されてしまった。

当時ニューヨークの不動産王であり、ゴーストライターの存在が明らかになっている“自伝”、『トランプ自伝(原題:The Art of the Deal)』がベストセラーになっていたドナルド・トランプは、1000万円以上の私財を投じ、ニューヨークで最も広く読まれている新聞4紙の紙面をページごと買い取り、「死刑を復活させよ。警察を復権させよ!(BRING BACK THE DEATH PENALTY. BRING BACK OUR POLICE.)」という巨大な見出しで広告記事を掲載しています。(冤罪「セントラルパーク・ジョガー事件」に関するトランプの不当な介入

 
この広告がなければ、悲しい冤罪は生まれなかったかもしれない。

このnoteを読んだ何人かが今日から絆創膏を買うときは多様な人種に配慮しているバンドエイドを選んだら、一人一人のちいさな水しぶきが大きな波になる。

そして、「ジェンダーとシティボーイ」でも書きましたが、差別的な感情がなかったり、環境に配慮されていたり、そういう商品が売れたら、その価値観ももっと広まる。(バンドエイドなら、「多様な肌が持つ美しさを取り入れる」という概念が広まることに貢献できるはず)
素晴らしい理念をもった会社が、社会に訴えかける広告を打ち出したり、意義のある活動の支援をしたりするかもしれない……。そういうわけでまたnoteを書きました。


最近の推しポリ購入品。

推しポリシー購入品、略して「推しポリ購入品」。

・SPUR8月号

日本の多くの雑誌はコロナであっても、いつもとほとんど変わらない特集を出していますが、きちんと世の中の声をひろってくれた特集。

これもまた「ジェンダーとシティボーイ」でも書きましたが、たとえいいものでも売れないと続かない……。「Pen」のジェンダー特集のように、またこういう取り組みを続けてほしいので、買いました。

「SPUR」はマリウス葉さんとSDGsについて考える連載や、他にも武田砂鉄さん、山崎まどかさん、秋元才加さんなど魅力的な執筆陣!特集に関わらず廃刊して欲しくないので、立ち読みで済ませないできちんとお金を払うようにしています。

取り次ぎには配本システムがありますが、売り上げが続いている雑誌があると、注文をしていなくても毎月きちんと売り上げ実績のある書店にその雑誌を届けてくれます。逆に言えば買う人がゼロの月があると、翌月から優先して店頭に置かせてもらえなくなる。

自分は多くの人に立ち読みでもいいからこんな社会と政治のことを考えたかっこいいモード誌があることを知って欲しい。自分が毎月買えば、どんなに「SPUR」が売れなくなっても行きつけの書店には置かれるわけで、それだけで多くの人の目にとまるはず!

ちなみに、amazonではなく書店で買うことも大切にしています。知見を広げてくれる意味で書店の偉大さ、本当に計り知れないと思うので、急ぎで必要なとき以外はなるべくアマゾンなどの王手ネット書店ではなく実店舗や実店舗のウェブストアで買うようにしている。お金がないとお店も存続できない!

また推しポリ購入品あったらみなさんにご報告します〜。


おわりに

暑苦しくなんども書きますが、やっぱりちゃんと良いと思ったもの、ビジョンに共感したものにはお金をきちんと落とす!

心底感動した企画の本はメルカリで買わないで版元にきちんとお金が届くようにする、とかね。

ただし出費がかさむので、そこはもう身銭を切る感覚でお財布を緩めています。もっと良い社会になってほしいから。

(とはいえ自分も一度mei eharaさんの「sway」のレコード欲しすぎて、でもディスクユニオンじゃ状態Bの六千円で……メルカリで六千円の新品を、売り上げ金の3千円とクレジット3千円で購入して転売ヤーに加担してしまったことがあります)

できるところからちょっとずつ、でよいと思っている。共感してくれた人、推しポリシーに課金していこう〜。おわり



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