Ron"Bumblefoot"Thal インタビュー和訳

ドイツのギター&ベース専門雑誌『Gitarre&Bass』のオンライン版2020年5月22日付、Sons Of ApolloのRon“Bumblefoot”Thalのインタビュー記事の和訳です。

GB= Gitarre&Bass誌
RT= Ron“Bumblefoot”Thal

GB:ロン、MMXX制作におけるバンドの変化について、また、デビューアルバムのPsychotic Symphony(以下PS)と同じように制作したのかきかせてください。
RT:MMXXは1枚目を制作した手法とはやや異なる。各バンドメンバーはそれぞれのプロジェクトで手一杯だったから、同じ時間、同じ場所に全員集ってのレコーディングは残念ながらできなかった。
PSを制作した時のように、まずリフやフック、曲のアイデアを僕の小さなホームスタジオでまとめてそれをマイクとデレクにメールで送った。僕ら3人、メールで活発にやり取りをしたよ。
曲が大体まとまってきたら僕らはペンシルバニアにあるマイクのホームスタジオに集って仕上げをし、自分のパートは僕の自宅で録音して、最後はデレクとマイクがバーバンクの(PSを録音した)スタジオに行き、PSと同じようにドラムをプレイし録音した。

GB:このような方法でアルバムを作るのは楽でしたか?あるいは、バンドメンバーそれぞれがの個人負担が大きくなって難しいと感じましたか?
RT:正直言うと楽だった。自宅で下準備したり、色々試す時間が十分にとれたからね。もちろん全員で同じ部屋に集まってプレイしたり、曲作りや各々のアイデアを出して議論するのはとても楽しいよ。そういうオールドスクール的なやり方はクリエイティヴなプロセスを助長するけど、今回のようにそれぞれが自分のアイデアに責任をもって出来る限り念入りに準備し、臨むのも悪くないと思った。

GB:今回の機材はどのようなものを用いましたか?
RT:いつもと同じくVigierのダブルネックギター(フレットレスとフレッテド)それからディマジオのTone-Zoneピックアップ2つをブリッジに、DP184 Chopperピックアップ2つをネック側に取り付けてある。
そのVigierギターを Line 6 helix nativeプラグインを通じて音をコントロールし、“Amplitube 4 システム”ですべてを処理した。MMXXの収録曲のうち8曲は、リズムトラックを左と右で録音し、ソロは真ん中でやったよ。

GB:オーバーダブはなし?
RT:ほんの少しだけ。僕はこの手の音楽―キーボードがふんだんに使われている-には、ギターはなるべくシンプルな方がいいと思うから。

GB:あなた達の音楽は全くシンプル(単純)には聞こえませんが。
RT:そりゃそうだ。でも僕はSOAはストレートなロックミュージックが核になっていると思う。個々のパートはかなりプログレ寄りだし、細かい部分はPSよりも更に複雑にできているけどね。デレクとマイクは僕にこう頼んできたんだ。「PSよりももう少し尋常でない、狂気じみた感じを出してほしい」とね。だからいくつかの曲のギターソロは本当に頂点を超えるものになってるし、デレクのキーボードプレイとともに「サイコティック」になっている。

GB:このような“オールスターバンド”の一員でいるのは普通難しいことではないかと思いますが。
RT:いいや。どうして?

GB:メンバーが自信に満ち溢れたミュージシャンの集まりなので、エゴのぶつかり合いがあるのではないかと。
RT:そんな“a●●hole”なヤツなんて無名のガレージバンドにだっているさ。有名ミュージシャンだからって、クソみたいなヤツの集まりってわけじゃない。ナイスガイが揃ったガレージバンドもいるし、いわゆるオールスターバンドだってそれは例外じゃない。
実際SOAのメンバーは皆良い奴ばかりだ。一番いい例がジェフ、僕らのシンガー。彼は完全に“a●●hole”な人間とは真逆の位置にいる。
彼はバンドにおいては神からの贈り物のような人物だ。ステージでもそれ以外の場所でも。いつもフレンドリーで頼もしく、礼儀正しい。ジェフはイングウェイを辞めた後もジャーニーと一流の仕事をした経歴もある。
SOAはジェフのおかげでバランスを保てているし、彼はバンドをファミリーのような雰囲気にしてくれる。彼のような人を友人に持てることは、バンドでも通常の生活でもなかなか叶えられない望みだと思うよ。

GB:ジェフ以外の3人はどうでしょうか?他のメンバーより大きな影響力を持ちたがるような人は?
RT:SOAはこういうバンドだ。全員が自分の目的と何を成すべきかを分かっている。それが僕ら全員が常にベストなバランスを保つ秘訣なんだ。つまり、僕ら1人1人がバンドに対し20%のシェアを持ちバランスが保たれている。誰かが他の奴のシェアを奪おうとしたらすぐにバランスは崩れてしまうよね。それは僕らの望むところではない。

GB:パーセンテージといえば、あなた方のショーを見に来る観客には圧倒的にミュージシャンが多いと見受けられますが。
RT:それはそうだね。でも彼らはまず僕らが関わってきた(関わっている)バンド、Dream TheaterやGuns N’ Roses, Mr.Big, SotoやBumblefootのソロ…などのファンなんだ。

GB:ファンがSOAのショーに何を期待しているかを感じ取ることはできましたか?
RT:それは間違いようもない。ファンは僕らがステージでどんなことをやるかを見たいんだ。どれほど難解なパッセージを演奏しているか、どんなクレイジーなことをやってくれるか、とね。それを僕らがファンに届けられる限り、皆満足してくれると思うよ。

GB:ツアーに出る前にはこれほど大きなフィードバックがあると思っていましたか?
RT:PSへのポジティブな反響からある程度は期待していたけど、ツアー中のホテルに数十人ものファンがサインやセルフィーのために待っているなんて思いもしなかった。10年前の僕は最低でも30分は彼らの要望に応えるべくファンサービスをしたものだけど、最近ではツアースケジュールがかなりタイトになり自由時間もほとんどない。ホテルについたらショーの前に少しでも休息が欲しいと思うようになったよ。

GB:最初のツアーでプレイするのが楽しかった曲は?
RT:まず僕はすべての曲をプレイするのがとても楽しいと言っておくよ。その中からあえて選ぶとしたら、Signs Of The Time, Labyrynth, 驚きのOpus Maximus, Coming Homeかな。
とにかく毎晩、すべての曲から何かしら新たな感動を得ていたよ。

GB:いくつかのカバーソングも含めて。
RT : そうだ。ポートノイ/シェリニアン時代のDream Theaterの曲、例えばLines In The Sand。それから僕がアドリブで弾くピンクパンサーのテーマなどは毎回楽しかったな。

GB:最初のツアーではカバー曲もありましたが、MMXXが出た後のツアーではカバー曲は必要なくなるかもしれません。
RT:そうだね、2枚もフルアルバムがあるし。PSリリース後の83回ものショーではカバー曲やソロパートなども含めたものにしていたけど、MMXXの後は新譜からもたくさんやりたいよ。

GB:2020年、SOA以外のあなたの計画は?
RT:The Dodiesというガレージロックバンドをプロデュースしようと計画してるんだ。
このデュオはどこかカート・コベインのオーラを帯びたようなシンガーと、ドラマー…彼は片手でドラムを叩き、もう片方の手でキーボードを弾く…の2人で構成されているちょっと変わったバンド。彼らは凄く才能があるし特別だ。彼らをプロデュースするのに僕は適任だと思うんだ。
それに加えて昨年の春に僕は「Cintaku」というシングルをリリースしている。You Tubeで見れるよ。ああいった曲を将来的にリリースしていきたいね。
あとは僕のオリジナルバーベキューソースを6年ほど前から販売している。

GB:最後の質問です。Bumblefootキャンプの展望を聞かせてください。
RT:まだ僕の構想の段階だけど…僕は若いミュージシャンたちと親しく交流するのが大好きなんだ。彼らと共にたくさんプレイし、音楽やビジネスについても語って、語りまくる。僕の手にカメラを固定し、僕が演奏しているところを録画して彼らにそれを持ち返ってもらうというのも考えているんだ。キャンプの参加者がギターについて沢山の有益なことを学ぶことができる。
先日、アイルランドで2回ギタークリニックを行い、大成功を収めた。それと夏にはニューヨークでポール・ギルバートの素晴らしいギターキャンプに参加する予定だ(訳注:このキャンプは2020年7月開催予定→2021年に延期になりました)つい2,3日前にはポールと2つのブルースフェスティバルで共演したんだよ。まだまだやる事は沢山ある!

GB:ありがとう、ロン。素晴らしい未来をお祈りしています!