ファイターズは喜ばない
京大戦、流れの悪いシーンでいいパントリターンが出来た。
4年間で初めてチームの為にプレーで貢献できた瞬間だったと思います。
ご存知の通り、大喜びしました。
サイドラインでもはしゃぎまくりました。
そして試合後に
「何しとんねん、あの程度で喜ぶな」と怒られました。
テンションの波を作ってしまったら、この1本で全てが決まるというシーンで力を発揮出来ない。
などなどの理由からファイターズでは「喜んだらあかん」とよく言われます。
これにはずっと納得がいっていませんでした。
いや、テンション落ちんかったらええやん。
上げる分にはええやん。
と思っていました。
また、自分はアメフトのエンターテインメント性が好きだという部分もありました。
NFLを見たとき、スポーツではあるが、とても派手で、一流アーティストのライブを見てるかのような気持ちになる。
だからこそ、喜び方は派手でいたかった。
そのため、喜んだらあかんと怒られ、喜ぶことを禁じられた自分の中にはこんな感情がありました。
「次良いプレーしたらもっと派手に喜んでやろう」
ほんまに副将としてはあるまじき行為だと思いますが、絶対にしてやると決心していました。
かなり性格悪いと思います。
そして西日本代表決定戦。
残り2秒で逆転して、勝った瞬間、
サイドラインを飛び出しました。
監督に怒られるシーンがテレビでも流れました。(みなさんご存知のあれです)
ここで喜んで怒られようがどうでもよかったです。
こんなに力のこもったガッツポーズは人生で初めてでしたし、これからも出来ることはなかなか無いと思います。
その夜コーチたちの飲み会に呼ばれ、その日の試合を見ながら余韻に浸っているとき、
ディレクターの小野さんが2人で喋ろうやと声をかけてくれました。
PRの話で盛り上がっているときに、小野さんがふと「お前はなんで喜ぶんや?」と言いました。
そこで自分はアメフトのエンターテインメント性に惚れているという話や、観客を喜ばせたいとか、派手に喜ぶのがカッコいいと思うという気持ちを正直に話しました。
小野さんは
「なるほど、、、今日本の現状ってさ、アメフトがショーとしてではなくてスポーツとしてとらえられてるやん?日本人にとってスポーツは武道のイメージがやっぱりあって、特に学生スポーツには学校教育の延長って観点からその武士道精神みたいなイメージが強く残ってるよな?やっぱりそこでは喜ばずクールに決めることが美学とされてるんよな」
「もしお前が人を喜ばせたりカッコいいと思われたいなら、今現在はちょっとクールに決めてみるほうが効果あるかもな?」
「あと、武士道精神はそれはそれで素晴らしいものやし、海外でも評価されてる日本人としての誇りでもあるからそこも俺はちょっと理解してほしいかなぁ」
「アメリカの派手なエンターテインメント性を取り入れながらも、日本人の武士道精神も忘れないような、日本独自のアメフトの形が出来てこればきっとアメフト界は幅広い理解を得れて、面白いものになっていくんだろうな」
長々と書きましたが、小野さんのこんな言葉をもらって自分は
「ちょっとクールにきめてみるか」と思うようになりました。
ここで思う小野さんの伝え方のポイントは2つあると思います。
まず、「禁止」せずに「提案」しているところ。
「するな」ではなく、「したほうがええんちゃう?」とあいての行動に縛りをかけずに、判断を相手に委ねているところです。
反骨精神の強い人間に対して、禁止することで縛りをかけるとさらに反発する力が強くなる事を理解した上での「提案」だったと思います。
次に、相手の視野を広げていること。
「ファイターズでは喜んだらあかん」という枠で、そういうチームだからと片付けていません。今の日本でのアメフトというものの位置づけがどのようなものなのかということや、武士道精神の美しさなど、大きな枠や背景を語りながら、喜ばないことの正当性について「気づき」を与えている。
この2つのポイントを押さえながら、結果的に相手が納得感をもって行動できるように導いているんです。
今改めて振り返るとあっぱれとしか言えない。
4年間納得いってなかったファイターズの哲学をものの5分で理解させ、相手主体で行動に移させるこのテクニック。
なかなか真似できない凄技じゃないかと思いました。
また「喜ばない理由を自分なりに説明ができる状態」を小野さんが作ったことで、ファイターズは喜ばない集団に向かうわけです
本来の「喜んだらいけない」理由とは違ったとしても、結果「喜ばない」という行動が生まれています。
いやぁほんとにすごい、、、
伝え方とかは本当に難しい。
気持ちをストレートにぶつけすぎてもダメだし、ロジック過ぎても嫌がられるし、、、
小野さんの伝える人によって絶妙に変化する伝え方はこれからも是非参考にしたいです。
そういや、食堂のおばちゃんも
「小野ちゃんの解説ってほんまにわかりやすいねん〜やから小野ちゃんとアメフト見るの楽しいんよ〜」と言ってました。
うん、やっぱりすごい。
また長々と書きましたが、
ファイターズの「喜ばない」という哲学が小野さんの絶妙な「伝え方」によって4年の最後の最後に何となく理解できました。
というお話でした。
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