弟との最後の会話はSixTONESのことだった。


VVS当落結果を電話で家族に報告した。
普段、仕事で疲れていて滅多に家族と電話はしないが当選があまりにも嬉しかったため、母親と弟に電話で報告した。
母親も弟も喜んでくれた。
「よかったね。楽しんできてね。」
と弟が言ってくれた。
ライブが終わったらたくさん感想を話そうと思った。
この電話が弟との最期の会話になるとは、微塵も思わなかった。



弟との些細な喧嘩で家を出て、それ以来弟とのLINEのトーク画面は4月で止まっていた。
一人暮らしを始めて切羽詰まって、月一の通院で会う母親にもそっけない態度を取ったり、LINEの返事も雑だった。
9月あたりにSixTONESを好きになり、こんなあたたかい人達みたいになりたいと憧れを抱くようになった。
一人暮らしにも慣れたというのもあってか気づいたらわたしの心は穏やかになっていた。
12月の中旬。弟の誕生日。
4月で止まっていた確執のある弟との関係性を無くしたいと思った。
「こんなわたしを弟は許してくれるのか…」
と不安な思いを抱きながら母親に電話をかけた。
いきなり弟に連絡するのはやはり怖かったからだ。
母親に弟と話をしたいと弟を呼んでもらった。
いままでごめん。お誕生日おめでとう。と恐る恐る声をかけたら
「もういいよ。」
と言ってくれた。
そのあと他愛もない会話をした。
喧嘩してる間にSixTONESを好きになったことも話した。
「楽しそうだね。喋り方も穏やかになってて、前はずっと怒ってるみたいだったよ。」
と弟は笑いながら言ってくれた。

数日後。
4月から止まっていた弟とのLINEが動き出した。
「お正月休みある?地元帰るなら行きたいところ連れて行くよ。」
とメッセージが来た。
わたしはお正月休みがあることと行きたいところを伝えた。

元旦のお昼には地元に着いて、実家に帰った。
母親がドアを開けるとその後ろに弟がいた。
9ヶ月会ってなかっただけなのになんだか大きく感じた。
昼食を食べ終わると弟は行きたいところ全て連れて行ってくれた。
わたしが行きたいと言ったところは、中古ショップ。
SixTONESの過去の写真やCDが欲しかったからだ。
いろいろな中古ショップを巡った。
その中の一つのお店で「1ST 原石盤」が手に入った。
ずっと欲しかった。
SixTONESを好きになったのは、去年の9月からだがJr.時代の曲が大好きだったので手に入った時は本当に嬉しかった。
嬉しさのあまり弟の車に乗った瞬間、すぐさまアルバムを流した。
いつもYouTubeで見ていたライブ映像の曲が流れてきた。
あまりにも興奮して運転している弟の横で曲の説明とSixTONESというグループがどういうものなのか説明をした。
弟は優しく「うんうん」と相槌を打ってくれた。
全て話終わると
「すごいグループだね。漫画やドラマみたい。」
と言ってくれた。
本当は日帰りで帰るつもりだったが、あまりにも地元の中古屋巡りに夢中になってしまい、この時間に帰るとTHE VIBESの元旦限定CMが見れない可能性があると思い、その日の夜は実家で過ごすことになった。
元旦限定CMまで時間があった為、弟にオススメのSixTONESの動画を見せた。


字幕付きで見せた。
動画を見終わると「面白いね!」と言ってくれた。
男の子なので森本慎太郎のNARUTOの真似がどうやらツボに入ったらしい。
「字幕もメンバーが役になると変わってて細かいね!」
と細部までちゃんと見てくれた。
わたしはSixTONESの動画の字幕芸も好きだったのですごく嬉しかった。

テレビをつけて元旦限定CMが流れるのを待機。
CMが流れるとSixTONESを好きになった時のことから元旦までのことを思い出して涙が止まらず号泣してしまった。
そんなわたしに弟は
「悲しい涙じゃなくてよかった。これからたくさんSixTONESといろいろな景色が見れるね。」と声をかけてくれた。
こっからSixTONESとたくさんの景色を見ようと思った。
そして実家に帰るたびにわたしがその話をして、弟が優しく相槌を打って笑ってくれる。
そんな日々を想像していた。
この前まで喧嘩してたのが嘘のようだった。
こんな優しい子にわたしは酷いことをしてしまったなと反省した。

VVS当落日。
結果は、2/19大阪公演当選。
嬉しかった。
わたしは世界で1番幸せな女かもしれないと舞い上がっていた。
ライブまであれをしよう。これをしよう。必要なものとか調べなきゃなぁとライブのことで頭がいっぱいになった。
ふと家族のことが頭をよぎった。
当選報告をしたらきっと喜んでくれるだろうな。久々に電話をしよう。と思った。
仕事を終え、帰宅をする。
帰宅する足取りは軽く、気を抜いたらスキップをしまいそうになるくらいだった。
家に着いて真っ先に家族に電話した。
母親と弟も喜んでくれた。
はやくライブに行って、感想を聞いてもらいたいと思った。
わたしの推してるグループはこんなにもすごいんだ!って話したかった。


その数時間後。
姉から電話が入った。
深夜に珍しい。
姉にはメッセージで当選報告をした。
「もしかして電話で祝ってくれるのー!?
それにしても時間遅すぎだって!
まぁ、いまのわたしはチケット当選して幸せだから許すけどー!」
なんて舞い上がっていた。
その言葉を聞くまでは。

「弟が息をしていない」
その声は泣き叫ぶような声だった。
頭の中では姉の声で内容もわかっている。
しかし処理が追いつかなかった。
誰の声?どういうこと?
頭の中がごちゃごちゃする。
ショックのせいかこのあたりの記憶はない。
気がついたらわたしは暗い部屋で布団に横たわっていた。
スマホが光る。
姉からのメッセージだった。
「弟、ダメだった」と。
何度も「本当?」と問いかけたが、返答は変わらなかった。
夢であってほしいと願い、一晩寝て翌日に実家に帰ることを伝えて寝ることにした。
一睡もできなかったが。


日が昇る頃、地元に帰る準備をした。
何日泊まるか分からないのでとりあえず持って行ける荷物を詰めてアパートを出た。
地元に帰る電車の中で涙を堪えるのに必死だった。
弟と顔を合わせたくなかった。
弟の顔を見たら全てを受け入れなければならないからと思ったから。
出来ればもうこのまま電車の中にいたかった。
このまま時間が過ぎなければいいのにと願った。
しかしそんな思いは叶わない。
時間も電車もわたしの気持ちを無視して進んでいった。


地元の駅に着くと姉と姉の旦那さんが迎えにきてくれた。
葬儀屋へ向かう車中で詳しい話を聞いた。
くも膜下出血で急死した。
弟が亡くなったという現実が近づいてくる。
酷く胸が痛んだ。


葬儀屋に着く。
もう現実から逃れることはできないのかと落胆し扉を開いた。
弟はまるで寝ているようだった。
実家で一緒に暮らしてた頃の朝みたいに名前を呼んで体を揺さぶれば「んー?なにー?」と言って目を擦って起きるのではないかと思った。
しかし何故か身体を触ってはいけないと思い、弟を起こすように名前を呼んだ、あの頃の朝のように。
起きなかった。
何度名前を呼んでもピクリとも動かない。
弟が死んだという現実を受け入れるしかなかった。
わたしの横では母親と姉が子供のように泣き叫んでいた。
わたしもここで泣き叫べば弟が心配してあの世に行けないと思った。優しい子だから。
だからわたしはなるべく笑うようにした。
少しでもその場を明るくしようと。
自己満足かもしれない。
それでもあの子の心配を一つでも減らしたかった。
できる限り家族と弟と一緒の時間を過ごした。
弟ともっと一緒にいたいと思った。
田中樹がペットの遺骨をネックレスにいれているという話を聞いたのを思い出した。
「弟の遺骨をネックレスに入れて持ち歩かないか」と提案した。
ペットと人間。
違うけれどもうこの方法でしか弟と一緒にいれないと思った。
家族、葬儀屋さんから了承を得た。

お葬式までの間、姉夫婦の家に泊まることにした。
姉の部屋を借りて一人になった。
「なるべく笑っていよう」
自分で決めたことだがこの状況が酷く自分を疲弊させた。
もう動画を見る元気もない。
ただ何かを聴く力はあった。
髙地優吾とジェシーのユニット曲「Blue Days」を聴いた。


心は見せないブルーシート
中は汗だくで苦しいよ

Blue Days/Jesse×Yugo Kochi(SixTONES)

泣いたって悔やんだって
そのままで綺麗だよ
隣に居るように歌を歌うよ

Blue Days/Jesse×Yugo Kochi(SixTONES)


二人の温かい歌声とこの歌詞が刺さり、ずっと我慢していた涙が止まらなかった。
心の底からSixTONESに出会えてよかったと思った。
SixTONESの音楽はしんどい時、いつも寄り添ってくれる。
そしてその日はSixTONES ANNの日だった。
時間になり、radikoを開く。
田中樹の挨拶と共に聞こえた声は、髙地優吾の声だった。
偶然でも嬉しかった。
去年の夏、元推しと離れてMUSIC IN MEと出会い、しんどい時いつも聴いていた。
そのこともあってか髙地優吾の声を聞くとすごく安心した。
いつも通り面白い。
面白さと楽しさで笑ったが、安心感もあり気づいたら泣いてもいた。
泣き疲れたのか笑い疲れたのか分からないがANNが終わると眠気が襲い気づいたら朝になっていた。


お葬式までできる限り弟と家族と一緒に過ごした。
火葬をしてもらい、粉々になった遺骨をネックレスにいれてもらった。
もう弟がこの世から完全にいなくなったがこのネックレスがあれば近くにいる気がした。



ふと思う。
もしもSixTONESに出会わなければ弟と最期、会話もできずに永遠の別れをしていたのかもしれないと。
もしかしたら仲直りもできなかったのかとも思う。
全ては偶然であれど起こったことは事実である。
SixTONESがこのようなことが起きた事実を知らなくてもわたしはこのご恩を忘れることはないだろう。
重たい発言になるが、自分のできる範囲で生涯をかけてSixTONESに恩返しをしようと思った。

SixTONESに出会えてよかった。
こっからSixTONESとたくさんの思い出を作ろう。
この世で叶わなかかったSixTONESのライブの感想を弟に話すということをあの世で叶えるために。
ライブの感想だけじゃない。
SixTONESと共に生きた人生を弟と再会したときにたくさん話して「ドラマみたいだね」と笑ってもらおう。

SixTONES、本当にありがとう。



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