800字チャレンジ#9「青空の日」

※アニポケ夢小説(サトシお相手)
※名前あり固定主
※800字チャレンジ100本ノックの自分用記事


アオは青空の形をしている。
はじめてオレの元にアオがやって来たとき、青空が落ちて来たと思ったんだ。
ピカチュウの体調が悪くて、不安で仕方がなくて、そうしたら突然「どさっ」と音が聞こえて、振り向いたら目が眩むような青空を背に、目を瞬かせるアオがいた。
あの日から、アオは青空の象徴だ。

空を仰ぐ。
目が眩むような眩しさに、右手を顔の前に突き出して、太陽を阻む。
こんなに晴れた青空の日には、夜になれば星が盛大に光るだろう。

「サトシ」

オレを呼ぶ声が聞こえる。
振り向くと、あの日と同じように目を瞬かせるアオがいた。

「何やってんの」
「……アオ、髪伸びたな」
「あー、まぁ、サクラさんのおかげでね」

あの日、肩まであったアオの髪は、一度ばっさり短くなって、そして今では背中の辺りまで伸びて、アオが動くたびゆらゆら揺らめく。
髪だけではない。
あの日と同じ表情をしていても、アオは随分変わってしまった。
変わらざるを得ない出来ことが、あまりにも多すぎた。
今でも青空はアオの象徴だけれど、散りゆく桜のように儚い面があることをオレは知っている。
それでも、散りゆくと知っていても、懸命に太陽に向かって咲き誇るから、アオの在り方を尊いと思うんだ。

「今夜、星を見ないか?」
「星?」
「こんなに晴れてるんだ。今夜はきっと満天の星空になるよ」

あと、どれくらい一緒にいれるんだろうな。
あと、どれくらいの思い出を一緒に紡げるのだろうな。
その思い出を、オレは一体一生のうちでどれだけ記憶に留めておけるのだろう。
「いいね」とはにかむアオの笑顔を、決して忘れたくない。
笑顔も、オレの事を心配して怒った顔も、喧嘩した時のふくれっ面も、つらくてそれを懸命に我慢する姿も、傷ついて零した涙も、全部全部、忘れたくない。

「(忘れたくないよ)」

もうすぐアオは、ここから立ち去る。
オレとアオが一緒にいた時間は、一生の中でたった数年だ。
でも、目が眩むほどの眩しさの中で、確かにオレはアオといた。

確かに、オレはアオと共に在るのだ。

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