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天守物語!

今回一番楽しみにしていた演目。今もまだ何かを忘れて来ているような気がする、あの中村座に。 
もう全然纏まらなかったのでそのまま載せます。

・幕が開く前、鐘の音から始まるのがとても良い。異界に誘われている気分。

・新しい富姫の誕生を目の当たりにした。

・富姫若返った?ヘラみたいに定期的に泉に浸かって若返る設定?

・皆に傅かれる、戴冠を受け新しく即位した若き女王のような富姫。紫の着物コートがローブのよう。大役、それもある意味特殊な大役へ挑むそこはかとない緊張感が表情や雰囲気に見て取れる。

・玉様のような練絹の柔らかなこなれ感ではなく、卸したての真っさらな生硬さのある富姫。周りを「従える」玉様の富姫に対して、周りの腰元や侍女が皆で新しい女王を「支えている」ような雰囲気が中村屋ならでは。

・そんな若い富姫は、恋を知る前の全能感が瑞々しい。亀姫と並ぶと姉貴分の威厳はあるんだけど、妹分に良いとこ見せようといっそ無邪気ささえ感じさせる「見ておいで、それは姫路の、富だもの」。

・首を掲げたときの送り絵感(ねぷた絵の)。

・亀姫を見送った後、ちょっと寂しそうにしてるのが可愛い。

・闇の中ひとり文机に向かうとこ、小学生のときに読んだ「姫路の昔話」に出てきた挿絵を思い出した。「はっ」と振り向いて「誰!?」と誰何する動きと声の、打てば響くような鋭さ。

・天守に上がってきてあんなんが居たらびっくりするよね図書も…という美しさ気高さ。声が低めで天守に住まう主としての威厳と存在感のある口調、表情。 

・そこから図書のすずしい言葉に触れ、顔を見て目を見交わして、恋が始まる心の動きが、展開としては唐突なはずなのにそうは感じさせないの、特に「恋をする」という表には出ない細やかな心の動きをやらせたら天下一品の七之助丈ならでは。

・図書に向ける目がほんとに違う。愛しい人に向けるそれなんだよ完全に。かつて四谷怪談で「父が(想い人役の)自分に向ける目が云々」ゆーてたけど貴方もそれをばっちりしっかり受け継いでるよ。あんな目で見られたらどうにかなってしまうよ。虎ちゃんよく平気で居られるな。

・図書と別れて落ち込む富姫の背中が切なくも愛おしい。

・龍の打掛の似合うこと。

・闇の中の妖の姫君の美しさと気高さと恐ろしさ、威厳ある低い声色。

・「帰したくなくなった」恋に落ちた瞬間の顔。ここで笑いが起きなかったのほんとすごい。玉様の時ですら起きてたのに。

・「貴方お帰りなさいますな〜なお返したくなくなった」で図書を守るように打掛を広げて、でも断られて。

・「今度来ると返しません」と気持ちを押し殺して迫る厳しい顔。図書を見送る切ない表情。それまではわりと厳しい顔だったのに、眉ひとつ動かしてないのに、図書を追って階段の近くまで来たときの切ない顔。

・一人取り残されて頽れる背中。あの人を私にくださいと希う顔が見たい。

・恋を知り、けれどそれを手放さなければいけない辛さに泣きそうになる。「私の心を差上げます、私の生命を上げましょう。貴方お帰りなさいますな」と掻き口説く真剣な表紙に泣きそうになる。間違いなく今世紀最大のラブストーリー。

・「水際立った…」で惚れた男の活躍を嬉しそうな表情で覗き込む富姫(ちょろい)

・恋を知って弱くなったのか、富姫がおそらく無意識に天守に張っていた心因的ガードが外れて天守にまで土足で踏み込まれ、目を傷つけられての愁嘆場。介錯で「舌を噛み切ってあげましょう」というのは要するにキスシーンということでしょうか。

・「千歳百歳にただ一度、たった一度の恋だのに」この台詞七之助丈の富姫でほんと聞きたかったの…素晴らしかった。動きも。身を絞るような悲痛な声…

・見えたらばな、で姫の頬に唇を寄せる図書。

・目が開いて、図書と見つめ合ったときの、本当に嬉しそうな、愛しい人を見る目、首の傾げ方に、こっくりと蕩けるような濃厚な恋する風情を纏わせる。桃六の語りをよそに完全に二人の世界に入ってる(図書しか見えてない)。桃六の「嬉しそうに見える、恥ずかしそうに見える」とのやりとりも良い。この台詞が初めて説得力を持って聞こえた。

・最後はどこか神妙に神々しささえ感じられる表情。カテコでもそのまま、「富姫」として3回。まるで本物の、天守に住む姫神の富姫に、その眷属達にお辞儀をされてるようだった。いつもの中村座の面子なのに。

・中央に立つ七之助丈の、名実ともに立女方になった姿が立派すぎて、ほんと想像してたより遥かに立派に勤め上げていて、感慨も一入。

・薄とのやりとりが、若い富姫だからこそのバランスの良さ。

・どこか義侠心というか江戸っ子みというか人間に甘い感じのある富姫、人外なんだけどちゃんと七之助丈ならではの等身大の富姫。

・鷹(吹雪)やったことあるから説得力あるなあ鷹の件。

・事前に姫路城天守まで行くと解像度すごい

・図書、昨年に引き続きMVP確定。何なんあの若さであの上手さ。理想通りの図書すぎる。言葉に乗せた思いの熱さ、勢い、若さ、全てが「富姫が絶対好きになっちゃう」図書。

・桃六は確かにデウスエクス・マキナなんだけど、演じる俳優の格や存在感がちゃんとしてるから説得力ある。役者の格として富姫が一番高位にあるとその辺りの整合性取るのが難しいよね。

・亀姫あざとかわいい。かわいい顔してド攻め。これまで見てきた富亀姉妹にはそういうの感じなかったけど今回はその手の戯れをしてそうな生々しさがある。福島の民としては岩代国とか猪苗代の名前が出るたび誇らしい。姉妹(妹分)として遠慮のない感じ。富姫とのイチャコラも等身がベストマッチ。なおあの首の持ち主の城は今こんなんです(亀ヶ城跡)

猪苗代城(亀ヶ城)跡

・朱の盤坊はなんていうか理想の朱の盤坊すぎた。顔も声も雰囲気も。出番あんな多かったっけ?でもちゃんと間を持たせてたのえらい。化粧のせいか目が泥眼みたいに見えてより妖怪らしさが増してた。

・舌長婆、舌の仕掛けがちゃんと見えて嬉しかった。舐め方上手い。キャラ作りも上手い。カラコン入れてる?腰から太腿にかけてがむっちりしてて謎の色っぽさがあった。若い頃ぶいぶい言わせてたってそういうこと?

・女童達、微妙に等身が高い(幼くない)ので可愛いけど不気味さが増して良し。亀姫の女童が居ないのは寂しかったけど。声が綺麗で歌が上手いのも妖怪ぽくて良き。

・腰元ズ、女郎花さんがとりわけ真面目な感じで良い。

・薄、年若い主人の恋路を応援するようなムーヴが良い。乳母まではいかないにしても、富姫の良き理解者という感じ。成駒屋親子+七之助丈の絡みが素晴らしい今回。

・修理、とにかく声が良い。この状況でそんな長々と話す?みたいな獅子頭の由来も聴かせる存在感。さすが。

・狭い舞台を暴れ回る獅子頭や大蝙蝠、一つ目入道の迫力。小屋が小さいと臨場感が段違い。


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