その本は…


その本は、無邪気に遊ぶ子供のようだ。

私が小学生の頃、「探しものはなんですか?」で始まる歌詞が印象的な曲が流行った。

探しものを急いですると見つからず、探すのを諦めかけると見つかる不思議な法則がある。そんな経験をしたことがある人も少なくないだろう。

人には、心の柔軟さが失われてしまうと、途端に視野が狭くなってしまう傾向がある。これは、探しものに限らず、悩み事の解決など色々と応用できる話だ。そんな時に「遊び心」を活かすことで思わぬ道が見つかることがある。

もしも、遊び心のある画家が、保育園で飾るための絵を子供達のために描いてほしいと依頼されたら、どうするだろうか。遊び心を活かさなければ、絵をしっかり完成させて、絵の質を高めることに注力するのかもしれない。一方、遊び心のある画家は、子供達が喜ぶ絵とは何だろうと考え、子供達がワクワク姿を想像して、それを実現させる仕掛けを考える。その結果、絵を描く楽しさを味わう機会を提供するため、未完成の絵を敢えて贈り、その絵の続きを子供達に託す選択肢を選ぶこともできる。

実は、このような例え話をしたのは、子供の頃の経験が影響している。
当時は、外で遊ぶ子供が今以上に多い時代だった。いつもの仲間といつも同じ遊びだけではつまらない。そこで、新しい遊びや独自ルールをみんなで考えて、年の離れた子も混ざり遊んでいだ。自分たちが気に入った遊びがないなら作ればいいし、より楽しめるようなルール変更も自分たちで考えてしまえばいい、そんなスタンスだった。

改めて、自分が大人になってから、子供達の遊びを観察してみるとほんとに面白い。遊ぶ場所が狭いなら狭いなりに遊べることを考え、遊び道具が少ないならその少ない遊び道具を最大限活用して遊ぼうとする子どもたちの心の柔軟さがあることに気づく。

又吉さんとヨシタケさんの遊び心が、黄昏時のあの懐かしい思い出を再び蘇らせてくれたのだ。



◎参考
 ビブリオエッセイ 
 『その本は』
ヨシタケシンスケ 、 又吉直樹 共著


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