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名字がカ行の女の子

 "狭く浅く"付き合う私に対して、大学で出会ったキクチちゃんは"広く浅く"付き合うタイプだったので、私の友達はキクチちゃんの友達に内包されていた。
「私の友達 ⊂ キクチちゃんの友達」
という方程式が完成していた。ベン図でいったらラグビー形のところ。モロ被り。

 友人に恵まれた、というより、「友人に恵まれている友人」が1人いただけかもしれない。ア行の苗字をもつ私の統計上、「友人に恵まれている友人」はカ行に多い。会社の同期で1番仲良くなったのもカ行の女の子だった。

「違う部署の人と飲むことになったから来ない?」
会社の近くで一人暮らしをする彼女は、入社まもなくスーパーで同じ会社と思わしき男の子に声をかけたらしい。どんなコミュ力してんの。私だったらどんだけ知り合いが居たとて、踵を返す。仮に相手に気づかれたら、仕方なく営業スマイルをご用意する。それがどうだ、カ行の同期は既に連絡先を交換し、飲み会までセッティングしている。こういうところで差が出る。

 ということで、用意された飲み会に私はホイホイと着いていく。2人して"あわよくば"を期待しながら。自己紹介を済ませれば、相手に彼女がいることが発覚するというのに。九州から東京に越して来た彼らは、本当に「友達」を募集していただけだった。ったく。

 私の統計によれば、カ行の女子は基本的に明るい。同期のカ行ちゃんは比較的気の合うタイプで、配属も近くで安心したのだが、日に日に様子が違うことに気付いてくる。上司の家で開かれたホームパーティーに、彼女が招待された時から薄々感じていたが、常に予定を詰める性格で、私と違って外交的だ。私がよく1人で映画を見ると話すと、
「私、1人以前に映画館で映画が見れない」
エンドロールで立っちゃうらしい。
「絶対だめだよ」
とだけ伝えておいた。

「カ行ちゃんがチーフの家行ったって本当?」
「俺ですら行ったことないよ、行きたくもないけど」
 私の直属で、サ行の上司はこう言っていたので、自分と気が合いそうだと思った。

 同期飲みの後、カ行ちゃんがクラブを提案して来た時、こいつは絵に描いたような陽キャだと悟った。いろんなメディアから少しずつつまんできたような語彙しかない、こんな日陰者と仲良くしてくれてるのは何故だろう。カ行はコミュ力が高い。(私統計)

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