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母よ

昨日は母の日だと連絡したら
沖縄にいる母が精神が弱って涙が出ると返事が。
人生ではじめてじゃない?
そんな事いうの。

母よ、
中学生の私を連れて「黒蜥蜴」に「乱歩地獄」
結構ショックな映画、桜坂劇場で観たね。
空の洗濯機がくるくる回るのを眺める浅野忠信の気持ち、今は少しだけわかる。
母よ、
中学で友達とうまくいかない私を連れ、
留学中の姉がいるケアンズを訪れたね。一緒にシドニーのハーバーブリッジに登って風を感じて、オペラハウスが小さくみえる程に、世界を広く感じたよ。
母よ、
高校生の私が42.195キロ走ったあの日、
ゴール地点の小禄ジャスコ前で私を見つけて走ってきたね。
恥ずかしくてあなたに冷たくした事を今も後悔してる。
母よ、
E.Mスパで温泉入ってE.Mトマトの甘さに感動したね。
野菜は甘いって窓越しに沖縄の海を眺めながら、塩気を感じたよ。
母よ、
自作のラタトゥイユをタッパーにつめて冷凍保存で東京に持ってきたね。
母親のエネルギー保存の法則だって勝手に愛情の化学反応感じてた。
母よ、
頼んでないのに電子レンジの中をふいて冷蔵庫の霜取りをしてくれてたね。
あなたが居なくなった独りの家で、家電を撫でて寂しさをを拭ったよ。
母よ、
映画「山猫」のルキノ・ビスコンティの美しさを熱弁し、
歌舞伎役者の坂東玉三郎について話すあなたの綻んだ顔は玉三郎そのものだったよ。
母よ、
哲学の道で桜が散り、一瞬の儚さを感じた後、円山公園の枝垂れ桜に、どっしりとした祇園の幹を感じたね。
鴨川沿いの河床で食事してたら土砂降りの雨が落ちて、洪水の様にテーブルを店内に運ばれて、店内はいつも以上に賑わってたね。
母よ、
出町ふたばの豆大福を頬張り、二条城の深緑をベンチで並んで眺めたね。
暑さにやられて、しんだ様に熟睡してたあなたの横顔をいつまでも眺めてたよ。
母よ、
あなたが教えた
河瀬直美監督の「2つ目の窓」
満島ひかりの「ラビリンス」
心が空になりそうな日に思い出すよ?
生と死。心の開放。
空っぽの心を満たすのは、頭を空っぽにする事なのだと確認してたよ。


今帰仁城跡でヨガをする母よ。
歩くのが大好きなのに足底筋膜炎で足が痛む母よ。
日本酒で酔ってホテルのお手洗いで寝てしまう母よ。

あなたの優しさ、弱さ、強さ、全て感じて私はここにいる。
どうか忘れないで。
あなたが私達に逢いに行けないと思った時、
「逢いにきて」
と寄りかかってもいいことを。

言えない母よ。
楽観的な母よ。
本当は寂しがりな母よ。
電車で私の姉と「あなたが座りなさい!」
っていつまでも譲り合う母よ。
キャンプで父から鼠花火を足元に投げられ
ぎゃーぎゃー逃げ回る母よ。

ちょっと頑固で不器用な母よ。
それ以上に不器用な父と一緒になった母よ。

我慢するなかれ。
生き方を体現し教え支えてきたあなたの愛。
人生は一瞬だけど、
ここからもう少し歩けば、
いいことがあるんだって
中学生の私に気づかせた母よ。

愛しているとも
遠い地より

私なんて。
私だけなんで。
私はこんなに。
私だって。
私って?

そんな事、考えないでいい
置いておいで
置いてこれないなら私の手の平に

私が握りつぶしてあげる

砂にして海にまいてこよう

おもいを込めて
飛んでけ私のおもい

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