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感想◆ゴースト&レディ6/1夜

原作も舞台もネタバレ前提なのでご注意ください。今回は原作好きの友人との観劇でした。

友人は「作者公認の原作改変はアリ派だけど、原作者がどれだけ絶賛しても私に合わなかったら無かったことにする」いうハッキリしたタイプなので、ちょっと……いやかなりドキドキしながらの観劇だったんですけど、第一声が「いいモン観たわ!!!」だったので安心でした!
「原作と違う伏線張って綺麗に回収してくる技術やばくない?!」と初見時の私より絶賛してたぞ。

今回の席は一階センターブロック後方寄りだったんですけど、開演5分前のグレイ(仮)の足音聴こえなかった……。友達にも聴いて欲しいから結構耳を澄ませてたんですけどもなんだかんだでおしゃべりしてしまったし、聞き逃したかも……。ひょっとして壁際じゃないと聴こえない仕様?気付いた人だけ楽しんでね的な遊び心なんだろうな。とりあえず一階後方上手端の席だとばっちり聴こえます!二階席や下手側はどうなんだろ?

フロー達が持ってくる食料に「Springald」と書いてある缶があると聞いていたのに、一幕はオペラグラスを鞄から出し忘れて確認出来ませんでした……。次の課題!

客席降り直前のグレイが泣いている、という情報の確認の為にオペラグラスでグレイの顔見たんですけど、前回確認した時は顔面汗びっしょりで判別できず(お疲れ様です)今回はそんなびっしょりでもなく目元から涙らしき水がスーッと流れてて(汗の可能性ある)「おおこれが…!噂の」と感動していたら下唇に口紅付いてるの見つけて動揺のあまりオペラグラスが曇ったよね。灰色のメイクに一か所だけ赤が…それも唇&唇からちょっとずれた位置なのがセクシーで……そんな……ちょっと……どう……え?……この動揺を言葉にできない……されど圧倒的感謝……。顔面の良い人類の乱れた口紅……幸あれ……。
(そういえば萩原さんて他演目絡みで舞台上の3人の共演者とキスしとるな……)

カテコでグレイ&フローが他のキャストを呼ぶ時にお互いの肩コツンとくっつける仕様になってて「なんじゃこの可愛いポージングは?!」となりました。2週間観て無い間に親密度が増しているだと……?!え~ん舞台は生もの!
カテコ最後の二人のハグもグレイがほんのちょっと前かがみに余裕な感じでフローを見てて……ときめいちゃったな……。初日の明らかに谷原様フローに振り回されてる萩原さんグレイもかなり好きだったんですけども。間に真瀬さんフロー挟んで余裕でたのかな……。
これはオタクの妄想ですけど、真瀬さんのフローめちゃくちゃ分かり易くグレイのこと好きなので、力関係が「谷原さんフロー>>>>>>>>(略)>(金本さんグレイ※未見なので人様のレポから予想)>萩原さんグレイ>真瀬さんフロー」という感じがしますね……。

5/6~6/1までの公演を観た総括感想

舞台化にあたって、グレイめちゃくちゃ愛されてるなと思いました。
劇団関係者からしてみればシアターゴーストなんて存在からして可愛くてしょうがないですよね。仲間というか、座敷童的な。そして勿論ゴーストアンドレディのグレイは性格も不器用でいいヤツで悪ぶってて可愛い。それはもう色々なギミック搭載したくなる!狂言回しもコメディもする。歌うし踊るし戦うし空も飛ぶ。舞台を観る側じゃなくて創る側にする!客席降りもする!
俳優はやることが…やることが…多い!!お疲れ様です!!!!!グレイ!大好きだよ!!!!!(咆哮)
観てる側だったゴーストを舞台の上どころか裏側(制作サイド)まで引っ張り込んじゃうの……制作側の愛じゃよ……。この愛は、絶望を知らないんじゃよ
……。

公演始まってからグレイに対する個人的感情が明らかに変わっていってるので戸惑っている昨今です……ミュージカルだったらこの戸惑いで1曲歌い上げてるわ……。
なんだろな……圧倒的人外だと思ってた生物(死んでる)が予想外に人間だった戸惑い……?あと「お前のこと結構前(※コミックス初版)から知ってるけどさ……そんなに……100年がかりで舞台化するほどフローのこと好きだったなんて知らなかった!!なんで私に隠してたの!?何年間も!!?早く言ってよ!!私に出来ること少ないけどさ?!ファンアートくらい描いてあげたよ!?アッいらない?そうね!!」みたいな感情は確実にあります。
なんなんですかねこの感情……。その正体を突き止めるためにも可及的速やかに金本さんのグレイが観たいです。こう、別パターンを観て解釈を広げたい。広がった解釈の海で溺れるかもしれない。ごらん……この海全てが私の墓だよ。
いや……むしろグレイの処女作「ゴースト&レディ」がグレイによるフローの墓だったのか……?人はやりきれない感情になんとかケリをつける為に創作をすることがある……そして没頭は建設的な逃避だ。
グレイ……お前やり遂げちゃったけどこれから大丈夫?生きていける?(死んでる)
私は「グレイとフローは同じところには行けない」派なんですけど(原作者も言ってたし……)「客席に降りて行ったグレイ」はフローに会いにいったとも客席に戻ったとも取れるので、そこは脚本家と原作者が河原で殴り合って(※比喩表現)到達した場所なんじゃないかな。

フローについて
初見の私は原作よりもフローが弱めなのが不服だったんですけども、舞台には「共感」ってお客に対する大切なフックだから必要だったのかなと思います。
原作よりも一般女性に近い人が偉業を成し遂げ現代の私達の日々の歩みに繋がっている、その象徴がラストシーンの無数のランプなのかな、と考えるとなるほど舞台化として一つの解だなと。
そういえば時間軸も1910年から現代(多分)に変わってるし。グレイの処女作を観た私達へ繋がる物語だった……。その為の共感……。共感の為に必要な弱さ。

フローが襲われる場面。
原作では自力回避していて「それが観たかったのに!」という声を友人達(今回の同行者では無い)から聞いたりもしていたのですが、舞台化にあたっては妥当だろうなと思いました。倫理的に。原作ですら学芸員さんが真顔で怒って「暴漢は悪ですよ!」と読者に釘刺してからの撃退なので、それを(学芸員さんの注意無く)舞台でやったら、多分笑うお客が出てしまうと思うんですよね。人の笑いのツボって多様なので……。ゴースト&レディも初日の時エイミーの結婚します!で笑い声おきてたし、他劇団では子供が殺されるシーンで笑うお客もいたりしたので、どこで何に笑うかは人それぞれ……。これでもしフローが撃退して笑いが起きたら、それはそれで責められるの制作サイドだよな……と個人的に思います。「女性に暴力をふるって思いどおりにしようとする男性のお話を笑顔で聞けるワケありません」なので。
だからといって暴行シーンを全部カットしなかったのは「暴力は暴力として書く」という言葉通りだったのだな。

エイミーとアレックスの件。
初見では「え?フローはとっくの昔にフッた男と妹分が結婚してショック受けちゃう感じなの?!」と驚いたんですけども、そこでは無かったんだなと2回目以降の観劇で気付きました。看護婦から犠牲者が出たこと、協力者(エイミー&アレックス)が去ること、そして追い打ちの軍隊の噂。真瀬さんのフローをオペラグラスで追って観た時が特に顕著だった(エイミーの結婚には喜んでて、軍の噂でスッ…と目の光が消えた。谷原さんもそうかもしれないんですけどオペラグラスで追えてないのでわからず)。
絶望しちゃったか~という気持ちはまだちょっとあるんですけども、舞台としてはこうなんだなと納得できた感じです。

構成として一般人寄りになったフローがホールと対決する歌で谷原さんの圧倒的歌唱力が爆発して「歌こそが力だ!」みたいになっててスカッとする。最終的に超人ナイチンゲールさんになってる。ミュージカルの楽しい&凄いところ~!好き。
原作フローは「私がやめたら皆がやめてしまうから…」「一人だけの戦い」と言っていたけど舞台は「私が死んでも誰かが後に続くでしょう」と歌っているのでこの辺りも媒体と訴える対象の違いなんだよなと思った次第です。
脱線するんですけど、この違い「漫画」と「舞台」だなと思いました。
漫画はアシスタントや編集さん等の協力者は居ても、基本は一人だけの戦いで創り上げて、それを読んで影響された人達がそれぞれの漫画作品を描いていく。
舞台は脚本家、作曲家、演出家そして俳優と大勢の共同作業で創り上げ、その演目を(ブラッシュアップしつつ)色んな人達が入れ替わり立ち替わり続けていく。誰かが居なくなっても誰かが後に続く……。

他雑感

愉快な権力者の強歌パフォーマンス
デオン様の謎のソロタイム(グレイを添えて)
ストーリー的に要るのか要らないのかと言われた要らないのかもしれないけどミュージカルオタク的には絶対必要なサービスだよね。
ミュージカルって、芝居があって歌があってダンスがあって、とても楽しいエンタメだよなと「ゴースト&レディ」に触れて改めて思った次第です。私はミュージカルが好き。


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