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第5波は、なぜ急速に収束したのか?

第5波は、なぜ急速に収束したのか。多くの専門家が「理由がわからない」と述べています。本当に理由が分からないのか、分かっているけど隠しているのかについて、個人的に考察してみました。

下のリンクは JBPressに統計解析の専門家である沖有人氏が書いた記事です。(全文を読むには会員登録が必要です。無料です。)

この記事の中で、尾身氏が挙げたいくつかの理由全てを統計的な裏付けが無いとしています。
「ピークの前後で国民の日常生活が劇的に変わった事実はない」
「ワクチンに絶大な効果があるなら第5波の上昇を抑えられたはず」

ここで、感染者数のグラフをチェックすると、第5波は、第4波(アルファ株)を越す最大の感染者を出しています。

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下のグラフは、デルタ株の割合を示しています。
つまり、第5波は、ほぼ全てデルタ株感染だったと言うことです。

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下のグラフは、死亡者数です。第5波の死亡者は、第4波(アルファ株)より低くなっています。第5波の感染者数は、第4波より3倍以上多いのに死亡者数は、1/3くらいです。よって、デルタ株の毒性はアルファ株の1/9と試算できます。これまで、何度も書いてきたようにデルタ株は弱毒性です。
第5波の死亡者にはワクチン接種者も含まれている可能性が有ります。

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ウイルスの重要な特性には、毒性の他に基本再生産数(R0)があります。
基本再生産数とは、1人の感染者が何人へ感染させるかという数値です。
R0>1.0で感染が増加、R0<1.0で感染は減少します。
R0が大きいほど、感染は指数関数的に急速に広まり、抗体保有者が増えてくると減少に転じ、やがて収束します。

最初の武漢株では、R0=2.5とされ、西浦教授が、「何も対策をしなければ40万人以上死亡する」と発表して大騒ぎになりました。
アルファ株(N501Y)では、R0=3.2 とされています。
デルタ株(B.1.617.1:4つの変異を持つ)では、R0=8.0 が平均値のようです。

実際には、感染拡大防止のためにマスクを着用したり、ソーシャルディスタンス、行動自粛などによって基本再生産数より小さな値で感染は拡大します。この値を「実効再生産数 Rt 」と言います。

もう一度、新規感染者数のグラフを見てみます。きれいな山形になっていますが、この形がウイルス感染が拡大するSIRモデルという論理的な解析によるグラフとよく似ています。

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第4波のアルファ株はR0=2.5で、マスクやソーシャルディスタンス、ワクチンによる抗体保有者の増加で、Rt<1.0 となり収束した可能性があります。

しかし、R0=8.0 とされるデルタ株では、ワクチン接種がアルファ株の時より進んでいたにもかかわらず急速な感染拡大が起こりました。その後、オリンピックも開催され、大きな対策を行った訳でもないのに、8/25にピークを記録して急速に収束へ向かいました。
この現象は「抗体保有者の増加で収束が起こった」からと考えられます。

抗体保有者が増加した理由は、R0が高いデルタ株が空気感染に近い感染力で広く拡散したこと、ワクチン接種により高い中和抗体価を持つ人が増えたことが考えられます。(8/24の1回接種率は54%)
自然感染と、ワクチン接種による抗体保有者の合計が 70%くらいになっている可能性が有ります。

第5波の感染拡大開始を7/8、収束を10/4とすると、デルタ株の拡大から収束までの日数は、88日になります。感染症が1つのピークを持って収束するまでの期間から実効再生産数を予測できます。

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88日間で収束する実効再生産数を探るために、
R0=8、R0=4、R0=3、R0=2.5 の4つでシミュレーションしてみます。
このグラフは私が昨年作成した感染のシミュレータで作成しています。
(収束時の抗体保有率はSIRモデル準拠、一般には、(R0-1)/R0 )

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この4つのグラフで、感染期間88日に最も近いのは R0=3.0 の場合です。
R0=8.0とされているデルタ株が、日本の様々な感染対策でR0=3.0まで低下したという意味です。
R0=3.0で感染者のピークを記録した時点での Ctは約2.0と考えられます。つまり、Ct>1.0で拡散条件にも関わらず、抗体非保有者が不足したため感染は減少に転じたということです。
デルタ株は、アルファ株とは異なった理由で収束したと考えられます。

第5波のデルタ株が収束したということは、実は国民の半数以上が新型コロナに対する抗体を持っている可能性が有ります。
特段のロックダウンを行ったわけでもないのに、このような感染の収束が見られたということは、新型コロナについて集団免疫を獲得した可能性が有ります。それ以外に説明する理論が思い浮かびません。

感染者数が少ないのは、デルタ株が弱毒のため感染しても無症状または軽症のため、PCR検査を受けるに至らなかった人がほとんどだったと考えられます。

専門家は、集団免疫を確認したのかも知れません。もしそうなら、今後ワクチンを接種し続ける大義が無くなってしまいます。それで、「原因がわからない」と言っているのではないか?というのが私の立てた仮説です。

大規模な抗体検査を行えばこの仮説の正誤は判明するはずです。
なぜか、大規模な抗体検査は行われていません。

鹿先生も、デルタ株で集団免疫が成立すると話されています。

極端に言えば、「コロナは終わった」と言いたいところですが、これからワクチン接種者の方々の抗体価が低下し、ブレークスルー感染の波がやってきます。それは、イスラエルや、英国、シンガポールなどを見れば判ります。
日本の専門家も、第6波は必ず来ると断言しています。

ぜひ、皆さんで私の仮説の誤り、見落としなどを考えて教えて下さい。

参考資料

以上