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オリックス・2024年度サードユニを予想してみよう

まえがき

ファンフェスタで新たなBsspiritsユニフォーム(サードユニとも呼称されるため、以下そう表記する)を発表するのが慣例となっているオリックス・バファローズ。例年2年のスパンで新たなモデルが登場するが、現モデルのサードユニは神戸・三宮のショップでほとんど売り切れとなって再入荷がされておらず、今年でお役御免となるのがほぼ確実な情勢である。そのため今回は、11/26のファンフェスタで登場するであろう新たなサードユニを予想する試みを行う。

おさらい:2020年代・Bs’オルタネイトユニの特徴

①使用期間の長期化


2014年の登場以来、2015年モデルと併用された初代モデルを除いて毎年デザインが変更されていたサードユニ。この潮流が変わったのは2020年のことだった。この年登場した「勝紺」ユニ(デザインについては後述)から、1着につき2年に使用期間が延長され、勝紺ユニは2021年シーズンまで使用された。2022年シーズンに登場した現行のサードユニも、2023年シーズンまで2シーズンに渡って着用され、着用日の高い勝率も相まって縁起の良いユニとなったのは記憶に新しい。

②復刻企画の凍結?

 2010年にブルーウェーブの復刻ゲームを行ったことを皮切りに、阪急・近鉄のユニフォームを毎年のように復刻させ、2013年からは南海にルーツをもつソフトバンクと組んで「大阪クラシック→関西クラシック」なる近鉄vs南海,阪急vs南海のゲームを擬似復活させる企画も行っていた2010年代のオリックス。球団合併から観客動員に苦しんでいたことも相まって、オールドファンを球場に引き戻すために復刻企画が連発されていたが、2020年代に入り、こうした復刻企画はほとんど行われなくなった。2020年のブルーウェーブ,阪急復刻(西本幸雄氏のメモリアルゲーム)を最後に、復刻ユニフォームの企画は行われていない。
 考えられる要因は一言でいうとネタ切れである。2010年からの10年間で、阪急・近鉄・オリックスの1970-90年代のユニフォームはほぼ網羅されつくされてしまった。赤白紺の三色帽と岡本太郎氏の猛牛マークが有名な近鉄の1978-96年のホームユニフォームに至っては、10年間で3度も復刻される始末。1ファンとしても、企画にマンネリ感があったことは否定できない。
 関西クラシックが行われなくなった5月にはBsオリっ子デーという特別ユニフォームを着用する新たな試みがスタートし、恒例のBs夏の陣はユニフォーム着用ゲームを大幅に増加させるなどしているため、ホームゲームにおけるオルタネイトユニフォームの着用率自体は2010年代とあまり変わっていない。

③復刻ではなくオマージュ

 復刻企画を事実上封印した2020年代のオリックスだが、オールドファンへの配慮,リスペクトが忘れられたわけではない。その一環が、サードユニにおける過去のユニフォームのオマージュである。
 前述の2020-21年モデルは紺色で上下をそろえたMLBのシティコネクト・ユニフォームで流行中の上下同色スタイルをいち早く取り入れたもので、その上に白いストライプが施され、右胸には前年19年の夏の陣ユニで初登場した"令和版猛牛マーク"が取り付けられていた。


 このスタイルは1950年代に阪急ブレーブスが着用し、全身紺に身を包んだ選手たちがナイターの西宮球場を駆け巡るさまが「夜の勇者」と評されたモデルとそっくりである。ラケットラインの有無等の違いはあれど、おおむね同じデザインと言って差し支えないだろう。


 続く2022-23年モデルは、1967年にブレーブスがパシフィック・リーグ初優勝を果たした際と、69年にリーグ3連覇を果たした際のホームユニフォーム(前述した2020年の西本幸雄メモリアルデーで復刻)ときわめて類似している。

20-21年モデルと配色が反転し、白地に紺色のストライプが施されたデザインで、胸のマークはバファローズ史において初めて大文字でBUFFALOESという表記がなされている。


 1950年代,1960年代と時代をなぞっていくようにオマージュが行われていること。これこそが2024年度の新しいモデルを予想するにあたって大きなヒントになると考える。

2024年モデルの予想

①1970年代オマージュという仮説

1950年代,60年代とくれば、よっぽどひねくれていない限りは1970年代をオマージュさせるようなユニフォームが次にやってくると考えるのが自然だろう。この仮説を補強するうえで唱えたいのは、70年代のブレーブスと現代のオリックスが置かれた状況の類似性である。ブレーブスは1975年から1978年にかけてリーグ4連覇,75-77年にかけては日本一3連覇を達成し、山田久志,福本豊,加藤秀司らを擁して阪急王朝を築いた。現代のオリックスも、2021年から群雄割拠のパシフィック・リーグで3連覇を達成し、今まさにブレーブスが成し遂げた4連覇の偉業に挑まんとしている。伝説の勇者たちが身につけたユニフォームを想起させる装いで、50年後のオリックスナインがグラウンドに立つ。これほど胸が熱くなるシチュエーションもない。

②"4連覇ユニ"について整理 

 ここで、4連覇を果たした際のブレーブスがどのようなユニフォームを着ていたかについて今一度整理しておきたい。1950-60年代にかけては、過去2作のサードユニのモチーフとなった紺と白のユニフォームや、当時のミルウォーキー・ブレーブスのような暗めの赤を基調としたユニフォームを着用していた。比較的落ち着いた装いで”灰色の阪急“と揶揄されたこともあった勇者たちだったが、1970年代初期から球界を席巻していた素材の進歩に伴うカラフル化の波に乗ったことで、赤と黒の二色帽や、赤・白・黒の三色ライン(このラインはブルーウェーブ,現代のオリックスまで引き継がれている)が特徴的な、阪急王朝の象徴となった明るい赤基調のユニフォームが誕生した。
 メーカーは当時巨人以外の11球団のユニフォームを担当していた美津濃。白いホーム用には前述した三色ラインが袖とパンツに入り、当時流行していたプルオーバースタイルを導入。胸には筆記体でBravesと刺繍が施されていた。ビジター用は上下グレーで、三色ラインの配色が赤・グレー・黒に変更。胸マークはブロック体でHANKYUとなっている。

1975年に広島を破って日本一を果たした後、ブレーブスはビジター用をマイナーチェンジ。従来の落ち着いた“灰色の阪急”のイメージが残っていたユニフォームをイメージチェンジし、明るいパウダーブルーに地色を変更。このユニフォームを着てブレーブスは敵地後楽園球場に乗り込み、1976,77年に長嶋巨人を立て続けに破って、日本一3連覇を達成した。

③赤の復権?

 サードユニにおける配色の変遷に着目すると、①で立てた仮説がより現実味を帯びてくる。2011年の「オリックス・バファローズ改造計画」以来の紺とゴールドのチームカラーをより強調する試みの中で2014年から制作されたサードユニだったが、2010年代後半には新たな方向性として赤色が押し出され、2016年,18年,19年モデルの3作で赤色と紺色を基調としたユニフォームが作られた。サードユニ以外においても、復刻試合や2010-13,17年の大坂夏の陣(Bs夏の陣)特別ユニフォームで赤はたびたび用いられていて、赤がチームカラーであった阪急,近鉄のオールドファンに向けた配慮がここでも感じられる。
 ただ、2020年代では前述したように復刻企画が事実上封印され、サードユニも1950-60年代の阪急をオマージュした白と紺のユニフォームが2作続いている。およそ4年間赤基調のユニフォームは登場しておらず、赤の復権があるならこのタイミングなのではないかと筆者は推測している。

④"ネタ"となるのはどちらか

 予想をする上で当然考えなければならないのは、1970年代阪急のホーム用(白),ビジター用(グレー,パウダーブルー)のどちらをモデルとして新しいサードユニが制作されるかという点だが、本稿ではビジター用が採用されるという前提で話を進めたい。その理由は、前述した2019年モデルのサードユニが1970年代阪急のホーム用と随所で類似していたためである。2019年にオリックスはホーム用・ビジター用・サードユニの全てをモデルチェンジし、これまでの細い腕ラインを1970年代阪急からの伝統の3本ラインに変更した。当然、赤色を用いたサードユニは非常に似通ったものとなり、暗めの地色(紺と黒の違いはあれど)に赤いマークの帽子といい、袖・パンツの3本ライン(当時よりは細め)といい模倣度の高い仕上がりとなった。要するに、1970年代阪急のホーム用はオマージュのネタとしてすでに消費されているのである。となれば、もう片方のビジター用、それもリーグ4連覇(川崎球場でのロッテ戦),日本一3連覇(後楽園球場での巨人戦)を果たした際に着用されていた縁起の良いパウダーブルーのユニフォームが次のモデルとなると考えるのは自然だろう。

⑤上下同色ユニへの馴染み


 2010年代は日本球界全体で上は特別ジャージだが下は普通の白パンツのようないわゆる「特別ユニの着っぱなし」の風潮が色濃く残っていたが、オリックスは19年の黒のジャージにグレーのパンツを合わせた夏の陣ユニを皮切りに、上下両方をきちんとコーディネートする方針に転換。21-23年の夏の陣では、グレー,ゴールド,グリーンの順番で上下同色のユニフォームが3作連続で制作された。前述したサードユニにおいても、2020-21年モデルで初めてユニフォームに対応した専用のパンツ(紺のパンツに白のストライプが走っているもの)が登場。22-23年モデルでも引き続いて白のパンツに紺のストライプが施された専用パンツと、新しく登場したOBマークが入った専用ストッキングが使用され、一層の「全身コーデ化」が進んだ。
 こうした上下コーディネートユニのファンからの受けも悪くないようで、例えば2021年に球団youtubeが行った歴代夏の陣のユニフォーム選挙では、19年モデルが1位、21年モデルが2位となっている。ファンにこうしたユニフォームを受け入れる土壌があることも、私がこの仮説を立てたゆえんである。

⑥実戦運用上の都合

パシフィック・リーグで度々見受けられるのは、ホーム側が特別ユニを着た際に、ビジター側の通常モデルと色かぶりが起きてしまうため、ビジター側がホーム用を着て試合をするといういわば本末転倒の事態である。かくいうオリックスも、今季は千葉でのロッテ戦でホームチームが黒のビジター用を着用するイベントがあったため、やむなくホーム用を着用したことがあった。
 仮にオリックスがパウダーブルーのユニフォームをサードユニとして運用するならば、こうした通常モデルとの色かぶり問題が起きそうな場合は、アウェーでもサードユニを着用することで違和感なく解決ができそうである。

シミュレートしてみた

 ここではZETT社のユニフォームシミュレーターを用い、筆者がここまで述べてきたことを視覚化してみる。70年代阪急のパウダーブルーのユニフォームを現代のオリックス風にアレンジしてみると、このようなものになった。BUFFALOESのマークは、各自既存のブロック体マークに脳内で差し替えていただきたい。

 ブレーブスの胸マークがブロック体だったことを鑑み、ここでは2022-23年モデルのBUFFALOESマークが継続して使用されると予想したが、実は2019年のサードユニ以来、3モデル連続で胸マークが変更されている。この傾向をみるに、なんらか新しいマークが導入されるか、もしくは22-23年モデルの帽子に採用されたOBマークが右胸につくことも考えられるのではないだろうか。

あとがき

執筆時点でいよいよ明日に迫ったBsファンフェスタ。昇華プリント製のユニフォームが蔓延る球界において、刺繍製を頑なに維持し、安易な柄物シャツに逃げないオリックスの姿勢には賞賛が送られるべきである。そんなオリックスが新たに世に送り出すユニフォームを1ファンとして楽しみにしつつ、この項を締めくくることとしたい。

参考文献

「日本プロ野球ユニフォーム大図鑑」 綱島理友 株式会社ベースボールマガジン社 2013年
「日本プロ野球優勝伝説238」株式会社ベースボールマガジン社 2014年