群れなせ!シートン学園(3話)感想

群馬サファリパーク……ではなくアニメ群れなせ!シートン学園の感想です。主人公たちを離れて、他のキャラクターがメインの回でしたね。

・ネズミ

 異種族交流は自然ではないというスローガンの生徒会長。そういえば、毎回オープニングでナレーションがありますがこの学園は「弱肉強食を学ぶ」であって、共存共栄とか思いやりを学ぶ目的なんてありませんでしたね。

 生徒会長がなぜネズミ、と最初は思ったものの組織的な行動すると聞いて納得。個体数はもちろんですが、擬人化された世界における生徒会選挙では役割分担、組織票で有利に機能する要素になってくるんですね。

 名前からしてハダカデバネズミなんていうネイキッド志向を義務付けられていそうな種族ですが、服を着るのを嫌がるという設定はちょっと納得いかなかったです。価値観の違いで笑いになる騒がしさは漫画アニメとしてその場限りでは楽しいものの、擬人化の際に服を着せてセクシュアルな要素を隠すというのは暗黙の了解なのではないかと。他の場面と対照して違和感がある。シマウマのクロエがパンツではなく尻尾を見られたことがショックだったであろうというのは私がその恥じらいの理由配分を感じたものであって、あれは視聴者ごとの受け取り方ができた。しかし会長くらいに発言が明確だと恥ずかしさの解釈が固定されてしまい、作品のよさを誰かと語り合うときに違う理由で肯定するのではなく賛否分かれる形になりやすい。少し嫌。

・ジンが主犯扱い

 アニメ版ではジンだけではなくランカの存在の大きさが増しているように感じるんですよね。だから、ジンがハーレムを築き~という解釈は、野生動物にもよくある「頂点のオスが複数のメスと群れを形成」に当てはめて決めつける態度のように見えて、会長が本質を見ようとせず暴走しているだけといった印象がいっそう強まる。果たして料理部を繋げているのはジンかランカか、あるいは二人か~と考えない時点で会長がどこか間違っているのではないかなと思いながら見ていました。

・料理部への寛容こそが異種族交流を否定する者として正しい(かも)

 ランカのおかげで猫から救われた部下たち。異種族同士であっても助け合い、恩恵があるという実例を見せつけられ、異種族交流のメリットを提示された。今は見逃してもらえる。説得して寛容になるのは王道展開ですが、実はこれによって彼女たちが掲げていた異種族交流が不自然という主張もまた認められたのだという感じがしました。もし生徒会長の言い分が通って廃部にしてしまったなら、きっと事実として異種族の群れは存在しない世界にはできても、精神的には彼女の敗北であったはずです。自分たちの種族が持つ理屈が他種族の影響を受けて変容してしまうなら、それは「料理部が歪だったから是正した」という建前だけではきっと足りない。ジンとランカたち相手に「異種間コミュニケーションが上手くいってしまった」ことになれば、理想からは程遠い過程を経て手に入れた不自然な結末でしょう。同じ種族でまとまっているのが正しいし、心地よい。そんな共同体が守られるためにも、彼女が群れの外では敗北者になれたことこそが救いになっていると感じます。「会長として」=ネズミの長ではなく、自然界全体の代弁者としてという場合でも、その自然界の常識を守るためなら団結して特定の不自然な群れを弾圧するなんていう協力関係の方が不自然ですしね。

 彼女の異種族チームへの不快感の根底にあったのは、群れから仲間を引き抜かれる恐ろしさでしょうかね?

・ライオン

 ライオンのキングが祀り上げられている。群れのメスが実働部隊で、オスが積極的に色々なことをしないのはちゃんと動物要素に基づいた性格設定で安心して見ていられますね。異種間恋愛を求めている逸脱があるものの、それ一色で性格が塗りつぶされるのではなく染みついた自分たちらしさが残っているのがいい。ランカよりジンのアドバイスを求めるのは、生徒会長の時とは違って「オス同士のほうが相談しやすい・オスの立場からの視点で意見が欲しい」と考えているのかな。

 コアラやナマケモノの時もそうだったのですが、自分から逸脱を目指そうとしている動物が相手だと、他人がアドバイスをしても思想の押し付け展開になりにくいので不快に感じませんね。

・食欲と恋愛感情の混同? どっちにも解釈できますが、シリアスがほんのりまじったコメディで楽しかったです。

 シホが「発情期ではないので」と断りを入れるシーン。異種族との恋愛でそういう部分が関係してくるのは盲点でした! 人間は発情期の周期に影響されませんが、自然界では特定の時期しか雄と雌が一緒に行動しないなんて生態の動物も普通にたくさんいるんでしたね。狼のように群れを形成して常に生活を共にするケースもあれば、違うケースもある。肉食獣と草食獣の捕食関係ばかりに目が行きがちですが、実はそれが解決しようとも発情期の時期が重ならなければそもそも恋愛がうまくいかないというのは、興味深い着眼点だったと思います。やっぱりシートン学園は面白い!

 話の締め方としても、群れから離脱してお別れでおしまい……ではなく、ライオネスたちが「そのうちまたタテガミが復活したら」と考えているところが大好きです。ちゃんとキングに居場所が残っている。一度は疎遠になってしまっても、彼らはいくらでもやり直せる。犠牲を一時的に支払っても、不可逆の変化ではないために、ハッピーエンドとバッドエンド気味のどちらだろうと安心して結果を受け止められるんです。セクシー要素さえなかったらこの作品をゴールデンタイムに流して、全国の子ども達に是非とも見てもらいたいと思っていたに違いない、とても魅力的な優しい世界です。


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