車とわたしのこと
今日、2年間乗った車を手離した。
生まれて初めて買った車で、探し回って探し回ってやっと手に入れた車だった。
私は昔から車が好き!というわけではなかった。工場と寮の15分足らずの往復だけの生活に疲弊しきっていて逃避の為に車が欲しかっただけ、とにかく走れば何でもよかったのだ。お金に余裕があるわけではないから中古でいいや。事故は怖いけど維持費も安いしほぼ乗り捨ての気持ちだから軽自動車でいいな。色は…うーん青か白がいいな。と検索する日々。
一目惚れだった。
どこを切り取っても大好きだった。
ナンバーは自分で決められることになったので、悩んだ結果「最初の車は人生の記念だから、記念になる番号にしよう。」と思い“みーちゃんが25歳で買った車”なので31-25にした。いつか(例えばだけど)31-46とかいうナンバーの車に乗るんだろうか。年齢を前面に推していこうだなんて、25歳が考えることだよなぁ。と今は思う。後悔はしていないけど。
ブルーマイカメタリックという名前がついた色の車体に軽自動車の黄色いナンバープレートがとても映えた。紺色と黄色の組み合わせが昔から好きだったので、意図せず最高の色合いになったな…と鼻を鳴らす。
そんなビジュアルが最高な車を手に入れてからというものの、車内は私のもう1つの部屋と化し、トランクにはいつ遭難してもなんとか平気グッズが積まれた。「部屋が汚いのは男性、車内が汚いのは女性」とはよく言ったもんだなと思う。汚くはなかったが物は多かった。本当にこんなにブランケットいるの?あーここにもあったのかヘヤピン!え、ハサミ?もちろんあるよ!
体力仕事でヘトヘトだけど寮の部屋に直帰したくない時、ひたすら田舎道を走らせた。水の張られた田んぼは街灯のない夜道で見ると湖のようだった。自分の生きてきた世界の狭さに驚く。ドライブに飽きたら帰ってすぐに寝た。
恋人の家が70キロちょい離れた東京にあったので、毎週金曜日は仕事が終わったらシャワーを浴びパジャマを着て大声で歌いながらビュンビュン飛ばして向かった。疲れてるけど、私が移動しないことには2人は会えない。彼は寝てても私に会えるわけなので、なんで私ばっかり…と思うこともかなり多かった。意地の2年。
定時で帰れた仕事帰りにふと思い立って、越谷レイクタウンや佐野アウトレットにも行った。物欲がない時って、どこに行っても「なんにもないな。」と思うもの。大体仕事帰りのレイクタウンとアウトレットには、なーーーんもなかった。(そんなわけはない)
大好きなカフェには、自転車でもいけるし歩けるっちゃ歩けるけどわざわざ車で行った。大好きなカフェに大好きな車が停まってるのって、とてもいい感じなのだ。いつものコーヒーとサンドイッチに癒されたあと帰り道もずーっと自分の好きな空間にいれる。
思い返すと、いつも2人きりだった。(…車は1人とは数えないよね、なんて言えばいいのかな。)
彼と2人で乗るよりも、1人で乗ってる方が好きだったかもしれない。2人で出かける時にジャンケンで運転手を決めるのは楽しかったし話し相手がいるのも嬉しいけど、1人で運転してる時間があまりにも長いからかな。みんなどうなんだろう。
そんな愛車との別れは、突然ではなかった。
キッカケは彼からのプロポーズ。そろそろかな、と希望的観測をしていたので予期せぬ車との別れではなかった。彼と共に都内に住むことになったわけだ。それにしても都内の駐車場は高い。軽自動車の車庫証明がいらない地域に住んでたので、持って行くことも考えていたが駐車場料金だけでいとも簡単に怖気付いてしまった。都会怖いよう。
手離すと決まった途端、悲しみの連鎖が止まらなかった。後部座席に座ったことがなかったので、同僚に運転を任せて後ろでくつろいでみた。ええやん?軽のくせに居心地悪くないやん?でも他人が運転しているっていうのが居心地が悪くて、早々に「サンキュー!」と行って運転を代わった。なかなか嫉妬深い女。
別れを惜しみながらも、最後の方は引っ越しのために大量の荷物を積まれたり工事中の砂利道でパンクしたりして、彼女なりに、車なりに、かなり“みーちゃんの車ライフ”を楽しんでいたと思う。あ、女なんだーって思ったでしょ?私も。へえ、女なんだ。
仕事の終わりと共に、一人暮らしと愛車との生活を終えることになった。別れ、別れ、別れ。結構くるものがある。車との別れには特に弱い。親の車ですら、乗り換えた時に泣いたくらいだ。
中古車屋さんに売ると軽の中古の中古は5万円くらいにしかならないので、大切に乗ってくれそうな同期に譲ることにした。知ってる人が乗ってくれていたら、ちょっと寂しさも紛れるかなと思ったが、別に今後の車のことじゃなくて自分との思い出によって悲しくなってるだけなので、誰が乗ろうが関係ないのかもしれないな。
手離す前日は、所用で乗り回したあと2時間ほどドライブをした。車も喜んでるなぁ。とかそういうことは考えなかった。そういう言い回しは文章の中だけの話で、悲しんで喜んでるのは私だけだった。
次、もし車を選ぶとしたら。
こんなに愛を語っておいてこの子には申し訳ないが、とにかく馬力のある大きい車に乗りたい。だって10年ほど前に生産終了しているこの車はそれはそれはもう古くて、坂道を登る時にはアクセルをベタ踏みしないといけなかった。なぜか登りきった時に私が疲れている。一心同体yeah 。高速に乗ると車内がエンジン音でうるさいので音量をかなり上げないと音楽が聞こえなくなるし、ちょっとでも坂になっている駐車場にバックで入れようもんならむしろ前に進んじゃうのでは?と思うくらい力がなかった。坂道で止まらないといけない時とか本当にやばかった。何度もひやっとしたし何度目の坂の頂点でも例に漏れず私は疲れていた。
そんなこんなで車そのものが好きになった私は、次の車もなんとなく決めている。でもこの“みーちゃんが25歳で買った車”はいつまでも覚えておきたい。
ミラジーノという車。2年間ありがとう。
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