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2020年のベスト・アルバム10枚

昨年12月のツイッターにはこんなことを書いていたけど、

これはこれでホンネだとして、それでも今年は何もかも特別なので今年聴いて気に入った音楽のことを記録しておきたいという気分になったということです。では、早速。

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【01】Perfume Genius / Set My Heart On Fire Immediately
【02】Brad Mehldau / Suite: April 2020
【03】Khruangbin / Mordechai
【04】CRAZY KEN BAND / NOW
【05】AC/DC / POWER UP
【06】山本精一 / selfy
【07】Bob Dylan / Rough And Rowdy Ways
【08】Mac Miller / Circles
【09】Ben Watt / Storm Damage
【10】Moment Joon / Passport & Garcon

【01】Perfume Genius/Set My Heart On Fire Immediately

緊急事態宣言(2020年4月7日~5月25日)明けの5月27日に営業再開されたタワーレコード吉祥寺店に行き、2か月ぶりに購入したCDがこれだった。

プロデューサーは自身も今年印象的なアルバムを発表したブレイク・ミルズ。曲調はエレクトロ寄りだったりロックだったりポップだったりとバラエティに富んでいるが、にもかかわらず統一感のあるサウンドとそれに何より繊細だけど堂々としたボーカルが自作自演歌手の作品だなあ、と思わせる。
しかしビニールをペリっと破りツヤツヤのデジパックを触りながら久しぶりにCD買ってうれしいなと思ったし、内容も古くも新しくもない素敵な音楽だったので満足。あー、オレはCDやレコードを買うのがこんなに好きだったんだあ、と改めて。レコ屋と本屋がない街には用がないんだオレは。

【02】Brad Mehldau / Suite: April 2020

3月中旬からロックダウン状態だったオランダでブラッド・メルドーが録音した曲を収めた、その名も『組曲:2020年4月』。ジャズともクラシックともとれる短い12曲が並び最後にカバー曲が3曲、ニール・ヤング「ブリング・ユー・ダウン」とビリー・ジョエル「ニューヨークの想い」とスタンダード「幸福を求めて」。世界中がこの2020年を体験していたんだなあ、と思うと、当たり前なんだけど、でもなんだか不思議な気分。何十年か先の新しいジャズファンがなんでこのアルバム「2020年4月」なの?って訝る未来が来るのかな。

【03】Khruangbin / Mordechai

今年一番聴いたのはこの新譜も含めてクルアンビン。どんな時でも聴ける最高の「いい湯加減」ミュージック。

あとクルアンビンが選曲したコンピレーション『Late Night Tales』も最高で。世界各国の「いい湯加減」ミュージックが並ぶ中に日本からは柳ジョージ「祭りばやしが聞こえるのテーマ」がエントリー。

【04】CRAZY KEN BAND / NOW

今年のLIVEは1本だけ、10月30日のクレイジーケンバンド日本武道館公演。約半数しか入れてない上に一席づつ開けた客席。なぜかこういう時に限って幸運にも最前列だったり。ぶっちゃけゆったりまったり観られるのは快適だったけど、それでももうこんな武道館LIVEはこれっきりでいいなあ。videotapemusicが担当した大型ビジョンの映像も超良かった。このNEWアルバムが1週間前の10月21日に発売したばかりということで、ここからの新曲は歌詞付きだったのもなかなかのサービス上手、さすが。
アルバム自体もいつになくベースがゴリゴリしているファンクアルバムだったのが良かった。どんな悔しいときも/どんな悲しいときも/この星にはクレイジーケンバンドがあるんだ!

【05】AC/DC / POWER UP

私は11月13日の発売日にタワレコ新宿店で購入したんだけど、翌日にタワレコ横浜店にフラッと立ち寄ったら日本盤、輸入盤とも売り切れでビックリした。入荷枚数が少なかったということもあるのかもだけど、それにしてもしっかりとコーナーが出来ている発売日翌日ですからねえ。超大物バンド6年ぶりの新作で亡くなったマルコムを除くバンドを離れていたメンバーが勢ぞろいした奇跡の復活作だとはいえ、AC/DCですから、内容が過去作と大きく違うということも考えられず(実際にいつものAC/DCサウンドだった)、この間に日本でAC/DC人気が最熱とかしたわけでもなく(クイーンじゃあるまいし)。となるとあれかな。自粛だ時短だマスクだ消毒だとなにかと鬱陶しい2020年だからこそ、こういうスカッとしたロックンロールを聴きたい人の期待が集中したと、そういうことかな(各国でのセールスも好調だったみたいだし)。私にもそういう気持ちあったしな。で、爆音で聴いて、確かにひとときスカッとしたよ。

【06】山本精一 / selfy

※アルバムではなくシングルをリンク

『CAFÉ BRAIN』、ROVO『ROVO』との合わせ技という意味も込めて。私はそんなにつぶさに山本精一の音楽を追っていないけど(追えないし!)、ふと聴くといつでもほぼほぼその時の自分の気持ちとフィットするという感想を持っている。
歌詞のある曲と歌詞のない曲との質感があまり変わらないというか(ROVOはバンドなのでまた違うとして。ああ『ROVO』はバンドのアルバムという感じだった。もっと言えばロックバンドのアルバムだった。ソフトマシーンやCANがロックならROVOもロックバンドだろう。こっちを選んでも良かったな)、そういうところが何にも聴きたくない時にも聴ける音楽というか、でも別に薄いとか軽いとかではなくアクは強いという。

【07】Bob Dylan / Rough And Rowdy Ways

もうね、ボブ・ディランはなんだっていいんだ。ノーベル文学賞なんだし。近年のカバー集も興味深く聴いたしね。来日公演は中止になっちゃったけど、また来てくれればいいし、解散もないしね、そもそもソロ歌手だからね。
でもそのボブ・ディランの新譜が普通にいい、超いい、すっげーいい、てのは、どういうこと!

私はノーベル文学賞だから権威だなんてちっとも思っていなくって、ノーベル様がディランを選んでくれたなんてまったく感じていなくって、そりゃボブ・ディランなんだし、ディランがロックなんだし、ノーベルだって賞くらいくれるでしょ、と、そう捉えていますが、しかしでもその一方でボブ・ディランももう神棚かな、なんて、少しそういう感じもしてたけど、いやいや現役じゃん。御大がよっこいしょという作品じゃなくてかっこいいアルバムなのが良き、最高ですよー。

【08】Mac Miller / Circles

SSW名盤。そもそもすべてのラッパーは自作自演歌手なんだけれど(何事にも例外はあるとして)、そういう広義の意味としてだけでなく、26才の男性が自作の曲を自分で歌う狭義のシンガーソングライターの作品でもある。繊細な歌声とかパーソナルな作風とか簡素にして必要十分なアレンジとか、別に本来はSSWの条件でもないはずだけれど、SSWの作品と言われるとなんとなく思い浮かべる要素とも合致する。そんなアルバム。
マック・ミラーはもうずっと未来永劫26才なんだけど、私を含む誰もが(生きている誰もが)毎年齢を重ねて、5年先、10年先にどう聴こえるのかな、と思わせる音楽だし、その時にもちゃんと聴けるアルバムなのかな、と感じる。ジョン・ブライオン、いい仕事しました。
そういえば↑は79才のシンガーソングライターの新譜だな。人生いろいろ/男もいろいろ/女だっていろいろ/咲き乱れるの、か。

【09】Ben Watt / Storm Damage

で、SSW名盤が並ぶ。ベン・ワット58才の作品。シンガーソングライターのアルバムが多いね、2020年はそういう年で私の2020年はそういう感じだったということか。とはいえこれはコロナ禍前のリリース(日本盤は1/31発売)。
私はそんなに熱心なエブリシング・バット・ザ・ガールのファンということでもなく、たまたま昨年、2014年のベン・ワットソロ作『Hendra』を中古盤で聴いて、これすっげーいいじゃん、と思っていたところに届いた新譜ということで、聴いてみたら、これもすっげーいいじゃん、となったと、そういうこと。

【10】Moment Joon / Passport & Garcon

誤解を恐れずに書くと本当に知的な音楽家だと思う。その若くて知性溢れるアーティストが選んだ表現方法が「日本語ラップ」であるということも感慨深い。そしてこの作品に中に、そういう感想や評価とか、あと「韓国人の移民ラッパー」であることの意味も、すべてアンサーがあらかじめ用意されているというのも凄い。さらにそのいろんな意味で凄いこのアルバム、強烈な言葉や心をざわつかせる要素も多く含むこのアルバムに収められた音楽がとても美しく響くということが、とても素晴らしい。美しい音楽という意味では今年一番。それが「日本語ラップ」アルバムということも感慨深く・・・あれ、なんかループしてる?ま、いいや、そのくらいに凄いアルバムで(以下略)

そういえば2020年一番うれしかったリリースはこれ

ストーンズファンとしてうれしかったのはもちろん、なんつうかビックリしたよね、この曲、ロックダウンを歌ってるのか!っていう。ザ・ローリング・ストーンズは2020年も現役バリバリ。オンラインフェスの「無情の世界」も超良かったし。あとはニューアルバムもお待ちしております。来年リリースなら2021年ベスト・アルバム第1位は決定だ。

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