若き日に誤らず(笑)
女を口説くのに酒は要るが、酒を飲むのに女は要らねぇ
今の私ならイキがってとクスッと笑って流してしまう台詞。
当時、私はそれをカッコいい!と思う程うぶではなかったが、微笑んで聞く程に大人でもなく、鼻で笑う程度の子供だった。
そんな彼との出会いは
“聞いてくれ!俺は今日少年団Aではなくなってしまったんだ?”
という台詞だったと記憶している。
当時私は高校生で、学校以外に多年齢によるグループにいくつか足を突っ込んで顔を出していた。
それでも初対面が20歳の誕生日であるなどという人は今だかつて彼だけである。
いつの間にか彼は、私が学校以外では一番顔を合わせている仲間の1人に加わっていた。
いつの時代もそうなのだが、その年代の若者はただ意味もなくつるんでいるのが楽しい訳で、何をそんなに日々話をしていたかは全く覚えていない。
その仲間は、私が関わっていたグループの中では一番年齢層が近く、一番統一された趣味のない主だった数人が、時折その友達だの後輩だのが加わった10人弱の面々だった。
あまりにも漠然としたメンバーだからだろうか、その年代のグループにありがちな色恋沙汰はなかった。
だからこそ居心地よく、次から次へとダラダラと時を過ごしていたのかもしれない。
もちろんお年頃の集団に、恋心が皆無だった訳ではなく、彼は私の後輩と2人でコンサートに行ったりして、皆はカップルと認識していた。
今振り替えると、あの居心地のいい仲間達は一年半程の時間を共に過ごしていただけだった。
彼を除いては。
私と彼との交流は、大学生社会人になっても続いていた。
互いに筆まめである以外に、共通の趣味という程のものもなく、主な交流は文通だったのだか、それでも社会人になってからでさえ、偶然に時間が合うと昼食を共に食べたりもした。
互いに相手に好意を持っている事はわかっていた。
残念な事に、片方の好意が強くなったときには一方通行であったり、相手の好意が弱まったりして、交差するチャンスはなく、まさに友達以上恋人未満のまま。
家族の事情で、彼は故郷へ戻らねばならなくなった。
文通もいつしか途絶え10年以上経った夏、全く突然に見慣れた文字で彼から暑中見舞いが届いた。
古い本の整理をしていたら、偶然昔の手紙を見つけたのだと言う。
何と言うことだろう!
そして現在もなおSNSと言う文明の力により、実際に会うことはまずないだろうが、ぽつぽつと交流は続いている。
そういえば、明日は彼の誕生日。
出会って何十年?
あの当時恋人になっていなくて本当によかった。
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