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生きている音

残暑が厳しい日々ですね。昨日はウォーキングを希望される利用者さんと歩いていました。暑い中も風は少し涼しくなってるなぁと思いながらフッと昔の事を思い出しました。

B型事業所に勤め出した頃、利用者さんのメインのお仕事はお箸入れでした。当時の養護学校でも授業のカリキュラムに入っており、手足が不自由な重度の知的障害の弟も職員に手を添えられながらお箸入れの実習をしている写真があります。約10年前は作業所ものんびりと日々の生活を送っていました。

夏の終わりにOBの利用者さんとお母さんが作業所に遊びにこられました。お二人とも高齢でしたがお母さんは若い頃養護学校を出た子供達に居場所を作る為活動をされていたカリスマな存在の方で、私の弟が小学部の時に高等部のお母さん達のムーブメントを眩しくみていたそうで、若いお母さん達はその動きに一緒に引っ張られるように参加をしていたそうです。学校卒業した後に働く場所を作りたい!熱い思いが世間を動かして作業所ができました。

引っ越しをして作業所をやめましたがやめてもカリスマであり利用者さんの話題にいつものぼっていました。入ってくると利用者さん達が○○ちゃん!○○ちゃんのお母さん!と一瞬賑やかになりましたが、皆すぐにお箸入れの作業にもどりました。

「あー作業所の音だわ〜お箸を入れる音!作業所の音!みんなが生きている音!私この作業所の音が大好きなのよ」と

皆が集中して作業をする時シュッシュッとお箸を箸袋にいれる音だけが作業所に流れます。それはとても穏やかな時間であり、皆仕事に誇りをもって行っていました。

扇子であおぎながらお母さんがニコニコと利用者さん達を愛おしくみていた姿を思い出しました。

時代は変わりB型事業所も工賃を上げなければならないし、お箸入れの作業もメインではなくなり、今はフルーツネットがメインみたいですね。施設外就労やクオリティの高い自社製品や食品をうる事業所も増えて、就労のレベルは上がり雰囲気も変わってきました。

あの日の夏は何年たっても忘れられず、お母さんが来ていた青い花模様のワンピースや利用者さん達の笑う様子やお箸入れの音は今でも懐かしく思い出します。

今の生きている音ってなんだろうなぁと思いながら夏の終わりを感じながら歩いていました。

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