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スパイの妻(映画レビュー)

蒼井優、高橋一生が夫婦役。プラス東出昌大が出てて、監督は黒沢清が珍しく時代ものを録ると。これは、見なくてはと、去年12月ですが、見てきました。
時代は第二次世界大戦の開戦直前から始まり、戦中から戦後への道のりを描きます。窮屈で生きにくい時代です。思想とかイデオロギーというより、正義感につき動かされた神戸の若い実業家、その美しい妻。こんな人がいたら、どんなに良かっただろうと胸踊る。深い愛に結ばれた夫婦。妻の幼なじみで妻に憧れる陸軍軍人の存在が不穏な空気を作り出す。
なにやら、わざとらしく時代がかった台詞廻しや変に決まりすぎの衣装、高橋一生と蒼井優の愛情表現が、今どき過ぎるとか、細かいところが気になるけど、あんな青年実業家にいて欲しかった、その人にはこういう妻がいて欲しかった。というミステリーやサスペンスでもありながら、ファンタジー風味もあり。
蒼井優ちゃんの瑞々しい存在感と、時に幼女のように純粋で、時に若妻の艶やかな色気も見せる表情の豊かさ。柔らかさ。
高橋一生のあくまでもスマートな青年実業家の立ち居振舞い。ポーカーフェイスで目が鼻に抜ける鮮やかな頭の回転の、スマートなバタ臭い紳士。
東出昌大、演じる妻の幼なじみは、やたら背が高く、素直で真っ直ぐな青年に見えて、次第に物語の中で違う一面も見せてくる。その変化の中に、人間の闇が垣間見れるのです。マインドコントロールされていた当時日本人は、少なからず、こういう闇を知らずに抱えることになったのでしょうか。
荒唐無稽のようでいて、ひょっとしたら似たこと、似た人がいたかもしれないと、希望を繋ぎたくなる高橋一生と蒼井優の夫婦。今の世には、時代を越えて、イデオロギーを越えて、正義と真実に生きられる人がどれだけいるのでしょう。