見出し画像

おもかげ(映画レビュー)

スペイン/フランス映画。愛と赦しの物語です。12月に見てきました。
エリナはスペインに暮らすシングルマザー。別れた夫とフランス方面に旅行に行った6歳の息子、イヴァンは、パパがいなくなったと迷子になった助けを求める携帯電話をかけてきたが、電池切れに。取り乱すエリナの様子がノンストップワンカットの短編で描かれました。緊張感で切なくハラハラするこの短編の後述談として作られた本作。息も切らさない緊張感ある短編の後に、10年後がゆったり描かれています。

美しかったエリナは、相変わらず美しいながら、孤独な影のある女性になっています。イヴァンの消えたフランスの海辺にひとり移り住み、毎日海を見ながら暮らしています。そこへ、イヴァンのおもかげのある少年がパリから家族とリゾートに来ているのに出会います。エリナのふくざつに揺れる表情。この揺れる表情の表現の中に何があるのか、引き込まれて行きます。ベネチア国際映画賞等でいくつもの主演女優賞を取るだけあります。少年ジャンのピュアな演技もさながら、成熟した一人の女性の中に母と、女性と、母性愛と恋心がゆらゆら。しかも、息子を守れなかった元夫に対する激しい感情を一番下に秘めています。愛するものをいきなり失った戸惑いと怒りがまだ、生々しく彼女の中に生きているのです。

おもかげを追いながら海辺で10年暮らしてきたエリナは、新しい人生に踏み出して行けるのか。優しい恋人がこの上もなく、親身になり支えてくれます。ジャンの家族は息子と親子ほど年の違う「いかれた女」との関係に反発を感じます。当然でしょう。

果たして結末は、、、。