過去とバイバイ
なんも面白くない話を一つ。
社会に出るまで性的経験がないのは損だと思った。
初めてがあんな形で奪われるとは思わなかったし。
人間後悔ばっかり重ねて生きていて、浅はかで失敗ばかりなのに、他人よりはマシで居たいという願望でいっぱい。
その他人よりはマシ、がなにをもってマシなのかわからんくせに…
思い出せば胸の奥がジンジン痛んで、鼻の奥がキュッとする。涙出そう。
24歳の秋は、上司と二人きりでご飯を食べにいくことに、少々戸惑いつつもなんも疑って無かった。けど回数を重ねていくうちに、スキンシップも増えて、一回は同期に相談してみた。
同期はびっくりするほど心配してくれたけど、その心配ぶりにびびって相談するのをやめちゃったなぁ、アホな私…
案の定ご飯を終えて車で送ってもらうとき、人気のない道で止まって求められたとき、嫌だと全身で思ったのに、上司だから、気まずくなりたくないから、と少しの好奇心と、「この歳で処女はまずいでしょう」という罪悪感。
罪悪感は何?
誰に対してなのって感じ。
己に魅力が無いのを測る一つのスケールだから?
その日は最後までやらず、後日断れずにラブホに行って初めてを経験してしまった。
その時は血は出なかったけど、翌日トイレで少し出血してた。その時の絶望は言葉にできなかった。コンドームをつけていたのか忘れたけど、きっと妊娠して人生終わってしまうと本気でおもった。
知識は人並みだったけど、いざやってしまうと不安でしょうがなかった。
そしてやってしまった後に、私は自分の価値が減ったとすごく思った。
ああ、正しく生きていくのに値しない人間だ、と。
終わった後にでも激怒すれば良かったんだけど、全く逆の対応を選んだ。
波風立てたく無いから、己のバカさ加減を周りに知られたくなかったから。
周りにバカだと思われたく無い。一番はそこだ。
相手に舐められたら終わりなのだ、既に舐められてるからやられたわけだけど。
そういう浅ましさがあって、上手く立ち回れるように相手を本当に好きと思ってしまおうと努力した。
でもこれが、全然無理。
セックスは好きになったけど、相手はどうしても好きになれない。好きになったフリはできた。
おぉ、意外に器用じゃないかわたし。
でもそれは逆効果で、(当たり前)
相手はどんどんわたしに対して執着する一方で、私はどんどん相手を嫌いになっていく。
気持ち悪い。
そう思ったら止められなくなったので、どうにかして相手から嫌いになってもらおうと努力した。
不倫だったので、こんな未来も何にもない関係に嫌気がさしたとか、あなたは家庭も可愛い子供もあって私には何もないとか言ってみたり。
相手の同情を誘って別れてもらおうと思ったのだ。しかしよくよく考えると、二回り年下の部下に手を出すなんて犯罪者予備軍じゃん。キモ。相手は相手で私を愛してるといつも言ってたけど、最高に都合がいいから手放したくなかっただけだと思うよ…
そういう自分も実際なにを考えてたかというと、こんなおじさんとセックスしてる自分に腹が立ってた。もっとイケメンとやれるだろうと、私顔も悪くないし、周りから性格良いねと言われるくらいには他人に優しいのだ
しかしまぁ相手は別れたがらない。
しまいにはラブホで別れ話を切り出したら死ぬと言って壁にたんこぶできるくらい頭をぶつけ始めるのだ。
警察呼ばれるんじゃないかとヒヤヒヤして、相手をなだめるようなことを言った覚えがあるが、実を言うと面白くてしょうがなかったよ。
なにやってるんだこのおっさん。こんなんで死ぬわけないじゃん。
笑いたくなるのを必死に堪えて、なんとか「私のこと愛してるならお互いの未来をお前のわがままで潰すな」と怒鳴ってやった。
それからヒステリックに泣いた。そしたら相手は「お前のためだから、お前を愛してるから別れよう」ですって!!なにその上から目線、気持ち悪!
昔からいじめられたりしたら嘘泣きしてた。
嘘泣きしてて周りが同情するとスッと悲しい気持ちとかなくなるのだ。
あ、皆私に同情してる、と思ったらなんとも言えない愉快さがあった。
おじさんはまんまと騙されて別れるのを承諾した。
わーい私の勝ち。
と、当時はやっと別れられた安堵と開放感で心が軽くなっていたのだが、きてしまうのよ、PTSD。
意固地な奴なので、この経験で自分が穢れてしまったと思い始めるの、そしたらもう気持ちはどん底。
涙は出るし、自分のこともっと嫌になるし。
さらにタチが悪いのが、身近な誰かに言って正直に晒さないといけないとか思うわけ。これが厄介で、突き詰めたらこの気持ちは、本当は誰かに「あなたは悪くない」と言ってもらいたいだけである。
3年くらい経って気づいた。
穢れてしまった自分を他人の評価で自信を取り戻そうとしているので、酒の場で男に「かわいい」と言わせようとする。それも既婚者ばっかりに。
すっかり歪んでしまってる。心が健康じゃない。
既に愛する人を持ってる人にそう言わせることで、自分がその人の妻をも超えたという錯覚に陥ってるのは分かった。
でもやめられない。
愛されたい、満たしてくれる人はいない。自分で努力もしたくない。少女漫画みたいにある日私だけの王子様が来てくれることを今でも望んでいるんだなぁ。
可哀想な私…
こんなにも自分を分析できてるはずなのに、やってることは愚かだからなぁ。
こうやってまだまだもがき続けるのだろう。
自分が自分を許せる日がくるのか、はたまた誰か心身共に健常な人が私を愛してくれる日まで。
あーまともな人間になりたい。
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