#15 マイナスを肯定すると無敵になる
11月7日(金)
昨夜、ENJOY KYOTOのIssue7にも登場いただいている陶々舎の中山福太郎さんという茶人とイタリアンを食べながらお話をしていました。ぼくなりの「わびさび」をなんとなく発見したのでそれを聞いていただいてたんです。で、ぼくの回答というのはひとことでいうと「マイナスをプラスに転じる」それがわびさびではないか?ということでした。
たとえば「若さ」「花盛りの春」「新緑」「新品」「豪華」「調和」。こられはすべてプラスの概念としてとらえられる言葉です。いっぽうでそれと反対の言葉。「老い」「葉枯れの秋」「苔むす緑」「使い古し」「質素」「不完全」。これらはすべてマイナスの概念として語られる言葉ですが、この後者がいわゆるわびさびなんですね。
わびさびは、いわゆるマイナスの概念に美しさを見るというか、マイナスをマイナスとしいてとらえるのではなく、そこに美を見出すことでプラスに転じようとする運動ではないかと思ったんです。だってプラスはそのままプラスだから、マイナスもプラスにしちゃえば、この世に存在するものはすべてプラスということになりますよね。いわばこの世の全肯定です。
そして、究極のマイナスは「死」ですよね。この視点でいけば、究極のマイナスである死は、究極のプラスだということになります。死によって人は自然と一体化し、完璧な調和が訪れるわけですからね。ああ、そうか、やっぱりわびさびと禅が近いというのはそういうことなんだなあと、実感しました。
自然が豊かである反面、自然災害も多くて、台風や洪水や地震や火山や冷害やなんかでたくさんの人が死んだ。そういうなかで日本人は、四季のなかに輪廻転生のようなもの、自分が死んでもまた同じところから芽が出て花が咲き、それを繰り返していくんだという無常観、その無常観もまたプラスとしてとらえていたんだろうと思いました。死さえもプラスとして捉えられたら、怖いものなんてもうなんにもないですからね。京都はそろそろ紅葉のシーズンですが、葉の落ちる季節は、果が実る季節でもあるんです。
それではみなさん今日もお元気で。I hope you enjoy Kyoto!
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