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私が小児科ではたらく理由

現在、私は小児科クリニックで受付として働いています。鍼灸師の資格も持っていて、大学病院で非常勤で外来を担当する他、近隣の産婦人科クリニックとも連携しており、そちらの仕事も忙しいので、週に1日午後だけなのですが、続けているのには理由があります。

私は「医療」という制度、仕組みが良い状態で機能していることは、人が生まれる時、病める時、死ぬ時をより幸せに過ごせることにつながると思い、その一助となりたいと願って仕事をしています。

その手段が鍼灸であることもあるし、事務や受付、診療補助である場合もある…という感じです。ちょっと異色の考え方かもしれません。縁があり自分を必要としてくれる医療機関で様々な働き方をしてきましたが、20年間、自分なりの筋があってやってきました。

特に、小児科には何かと縁がありました。赤ちゃんが生まれてからの数年は、人生の中で最も医療機関とかかわる最初の時期。そこでの体験は今後の受診行動に大きく影響する大事なタイミングでもあります。親となって最初の不安な時期に、丁寧であたたかい声かけをしたいと思って、受付業務をしています。受診しようかと悩む電話、予防接種のタイミングの相談など、親御さんの不安に寄り添い、サポートができるような対応を心がけています。

小児医療に対してそう思うようになったのには、きっかけがありました。

知ろう小児医療守ろう子ども達の会

20代の頃の私は、親が大きな病気をしたり、大学病院で働いていたこともあり、忙しすぎる医療現場、患者として求めることのギャップを目の当たりにして、そこをつなぐ役割をどうにかできないものか…と、その頃取得した鍼灸師の資格を通じてできることを模索していました。

そんな思いを抱えつつ、30代に母となった頃、出会ったのが、阿真京子さんでした。1つ歳上の彼女は3人の男の子を育てながら、「知ろう小児医療守ろう子ども達の会」という会を立ち上げていました。

私が持っていた問題意識に対して、親の立場から「病院のかかり方」を医師から学んでおく、知ることで人は受診行動が変わり、医療をよくすることができるという解を導き出し、行動していました。目から鱗でした。とても共感して、事務局としてサポートをするようになり、そして理事として活動してきました。

彼女の素晴らしいところは、人情派のお母さんキャラに見えて、実はクールでクレバーなところ。社会問題に対して声高に取り組むのではなく、アプローチの仕方は着実で冷静です。草の根の活動も地道に行いながらも、行政にも働きかけます。患者の立場として医療について意見を聞いてもらう機会が徐々に増えていき、省庁や都、学会などから声をかけられるようになっていくのですが、患者の声を集めつつ、分厚い資料やデータはしっかり読み込んでいく、患者、行政、医療機関、それぞれの立場、言い分をよく聞いた上で、ちゃんと意見をする姿勢を尊敬していました。

意見を言いすぎた、言わなすぎたと落ち込んだり、悩んだりする姿も身近で見てきました。プライベートでは自由なおもしろさに溢れているのですが、オンになるとピシッと大変かっこいいのです。不思議な魅力のある人です。

10年で決着をつけると取り組んできたこの活動も10年を少し過ぎた頃に、スススっと展開を見せました。地道に実施してきた小児科医による講座、行政向けに作った「医療のかかり方マニュアル」などが響き、厚生労働省が「医療のかかり方」を学ぶ機会を市町村で行うように通知することになったのです。お役目を果たしたと団体をたたむことになりました。

その後の、このコロナの影響は医療を守る行動をする責任を患者としての私達に突きつけました。

しかしなが医療や保健行政は逼迫しており、この1年間は乳児健診や教室なども実施しづらい状況となってしまいました。具合が悪くなった時に、どのタイミングでどうやって医療機関にかかったらよいのかを知る機会は、より必要とされています。これまで培ったノウハウや情報を、知ることのできるものを提供するために、阿真さんがクラウドファンディングを始めました。

私自身は、団体をたたんだ後、この活動で学んだ親御さんへのあたたかい眼差しと知識を、自分が小児科クリニック勤務することで還元するという選択をしています。

クラウドファンディングには消極的だった彼女があえて今、このタイミングで挑戦することを遠くからですが、応援させてもらいました。私の医療への思いも含め、知っていただけたらうれしいと思い、今回noteに綴らせてもらった次第です。必要な人に必要な情報が届きますように…。

これまでの活動や今回のクラウドファンディングについてはこちらの記事をご覧ください。