幼児の転倒後の歯の変色について

1ヶ月前に鉄棒から転落して口の周囲を打撲した。
その際、口唇周囲に裂傷を確認するが、歯の欠損やグラつきetcは確認できなかった。その直後に医療機関への受診はしなかった。

受傷時期と思われる時点から約1ヶ月後、歯磨きをしている時に、前歯の右側に変色を確認。妻に確認すると、私が変色を確認した1日前から灰色の変色を確認している。尚、6日前の写真においては変色は確認できない。

乳歯の変色はわりと多い事象。

転倒後の、乳歯の変色を理由に歯科を受診するケースは少なくない。また、僅かな傷害であってもこのような状況が引き起こされることも多く、思い当たるような大きな外傷がないのに、気付いたら乳歯の変色が生じていることも多く見られる。

変色が生じている時に、何が起こっているか?

外傷直後の変色は、歯髄の内出血が原因。透過してピンク色に見えることもある。
時間が経過してから変色する場合は、歯の内部にある歯髄の入り口である歯根の先端でダメージを受けて、血液循環がなくなり、歯髄が死んだ状態になっていると考えられる(今回のケースではこれに該当すると思われる)。
疼痛がなくても、細菌感染を起こすと、歯茎が腫れることがある。最終的には永久歯が生えてくるが、その永久歯への影響を考慮する必要がある。

転倒直後の予後判断は難しい。

『歯髄が生存するか』『そのダメージで死んでしまうのか?』を判断することは困難とされる。
レントゲン撮影では、『歯の根っこが折れていないか?』『骨折をしていないか?』ということは判断できても、神経の生死を判断することはできないとされている。
故に、歯や骨には異常がない場合でも、経過観察する必要がある。

具体的な処置は?


神経が死んでしまったと判断されたら、乳歯、永久歯に関わらず、歯の内部の死滅してしまった神経の残骸を掃除する必要がある(根管治療)。
そのまま放置しておくと、根の中の神経が腐敗して根の先に大きな膿袋が生じることになる。
根管治療をすることで、乳歯の生存率が上昇するとされる。
根管治療は、通常は歯の裏側から削って穴を開けて、歯の内部を洗浄する。
尚、神経は死滅しているため、治療中の痛みはほとんど伴わないとされる。
消毒して歯の先の化膿が治癒したら神経の代替になるものを詰めて、治療で開けた穴に白い詰め物をして完了とする。

その他の注意事項

乳歯の変色は歯髄からの出血が歯の組織に浸透した結果生じるもので、完全に元の色に戻ることはない。しかし、乳歯が変色しても生え変わりの永久歯が変色することはない(飽く迄も、乳歯の内部の歯髄の問題であると推測する)。
乳歯が外傷を受けた場合、本来の生え変わりの時期よりも早期に抜ける場合がある(歯髄の異常吸収が原因とされる)。
また、生え変わりの永久歯の位置がズレて生えてきたり、逆に生え変わりの時期が遅延する場合もある。
予防方法はない。
将来的に歯列矯正が必要な場合があるが可能性の一つとして覚えておく程度で良い。
永久歯の交換まで、定期検診で経過観察することが望ましい。

最新の報告として。

乳歯の変色は外傷により歯髄が死滅してしまったことが原因で生じるが、最近では慎重に経過観察をすると数ヶ月程度で変色が改善するということも報告されている。
理由としては、子どもの歯の場合は、根の先で一度は切れた神経や血管に代替して、新生血管や神経が歯の中にできると考えられているから。最終的に歯が変色したままでも神経は生存している場合がある。

結局、どうすれば良いか?

変色したまま放置することで歯髄が感染をお越し、乳歯の根の下に膿が溜まり、永久歯の形成や生え変わりに問題が生じないかを注意深く経過観察すること。
歯科の定期受診はもとより、自宅で出来ることは歯磨きの際に変色の進行具合や、歯茎の腫れが生じていないかを詳細に観察すること。

現在の状況。

歯茎からの出血や裂傷は確認できない。
歯茎の腫れや変色、形状変化は確認できない。
歯の灰色の変色のみ確認できる。
恐らくは希望的観測として、経過観察のみで良いと思われる。


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