源泉(AIのべりすとを使用し作成)

職権乱用をした熊がいる。ここは奥深い山の砦。その屋上で、熊が、職権乱用を犯したのだ。その日は朝から、雨が降っていた。熊の毛皮も濡れそぼち、毛並みに水滴をまとわせている。
彼は、砦の前に座り込んでいた。砦の中に入ろうとしない。
砦の中は、いつもより騒がしかった。
熊の名前は雄厨悪。程度の低い熊に職権乱用という言葉が解かろうはずもないが、この熊は一度だけ、瞬間的に罪を犯したのだ。
雨に打たれ、そろそろ砦の中に入ろうとした熊は、砦の屋上で若い男の声がするのを聞いた。――いやあ、どうしましょう? お嬢さん…… 声の主は、美しい娘だった。長い髪の娘だ。その娘の頬が赤く染まっているのを見て、熊は腹を立てた。あの娘には恋人がいたはずだ。恋人よりも自分の方が美しい、という自信があったらしい。だから、娘の頬が赤いのを見た時、娘の恋人に対して嫉妬したのだ。そして、その時だけ、熊は自分の意思で動いた。一瞬、ほんの少しだけだが、自分の意思に従ったのだ。
そのおかげで、娘の恋人は死んだ。熊が殺したわけではない。だが、死んだことは確かだ。
娘とその恋人が死んだことで、娘の両親は嘆き悲しんだ。それは当然のことだろう。だが、ぐちゃぐちゃに引き裂かれた恋人の身体を見て、狂い叫び、その天災と彼を分かとうとした彼女は、噓のように静まり返っていた。ただ静かに泣いていた。
娘を殺した悪魔を捜していた警察も、彼女の両親同様、諦めたようだ。結局、捜査は打ち切りとなり、事件は迷宮入りとなった。
熊は思った。自分が悪いわけじゃない、自分が悪いわけじゃ…… 自分は悪くないぞ。
俺は無実だ。
神は思った。地の文を書き連ね、熊の魂を強引に奪い、熊の欲望を叶えてやろうと。そこに善意も悪意もない。第四の壁を突破して気持ちよくなりたい訳ですらなかった。ただ、野生の熊が職権乱用をして人間の命を奪う、宇宙運命を遂行しようとしただけなのだ。それが、たまたま人間にとって不幸な出来事になっただけで。
だから、神はその事件をなかったことにした。
事件そのものがなかったことになったからといって、娘の死体まで消えた訳ではないのだが、それは熊にとってはどうでもよかったことだ。
ただ、熊が職権乱用をして無惨な若い男と娘の死体があるという事実があればそれでいいのだ。熊は立ち上がり、砦に向かって歩き出した。
熊の名は雄厨悪。程度の低い熊である。
砦に入ると、そこは楽園だった。大勢の人間が忙しく動き回っている。
何事が起きたのか、と思った熊は、砦の入り口に張られている紙を読んだ。そこには、こう書かれていた。
本日をもちまして、当砦では調理人の募集を一時中断させていただきます。
つきましては、ご希望の方は下記の電話番号へ連絡して下さい。
電話:45-09877
これはどういうことだ、と熊は思った。魂が奪われたため、どうしようもなく歪み、軋む自分の足を引きずりながらも、熊はその番号にtelした。すると、受付の女性が出た。
――はい、こちらは山賊料理専門店・山羊鍋ですけど…… そこで熊は気付いた。自分が職権乱用を犯していたことに。
そうか、そういうことなのか! 俺はこの砦の料理人になる資格がなかったんだ!! 熊は叫んだ。そして、自分の愚かさを呪った。こんなことも気付かぬとは。そうだ、俺は職権を乱用していたんだ。だから、神様は俺の魂を奪ったのだ。
――あの、もしもし? お客様ですか?……………… 砦の中の厨房で一人の男が働いていた。名を、オズワルドという。
彼の作る料理は美味いらしい。彼が作った料理を食べると、皆が言うのだ。うまい、と。
その言葉を聞く度に、彼は思う。おいしいって素晴らしいよね。本当に。
その言葉を聞いた時、彼の手元で切り刻まれていた悪魔が、醜いひだの隙間から猛烈に血を噴き出した。彼は思った。おいしいは正義だ。
おいしいは絶対だ。
おいしいは真理だ。
おいしいは神の摂理だ。
おいしいは宇宙の法則だ。
おいしいは奇跡だ。
おいしさ万歳だ。
この一瞬から、彼の心に宇宙のバランスなど消え去っていた。殺せ、血肉となる生命全てを殺せ。
宇宙のメモリが不具合を起こし、オズワルドど熊の精神が同一の場所に存在した宇宙時間があった。その時、神は狙って「熊の職権乱用グリッチ」を引き起こしたのだ。

未完

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