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芳醇でほろ苦い愛慕

序章

自分が心の底から感情を奮いだし涙を流したのは何年ぶりだろう。
高校の頃の部活でスランプに陥ってた頃に泣いた。
受験勉強の模試で思うように結果が出なくて落ち込んいる最中当時のクラス担任に喝を与えられた時も泣いた。
ぱっと思いついたのはそれらで、実に3年ぶりの涙だった。

 これから話すのは自身が初めて本気で愛した女との四か月に渡る恋物語。

本章

逢着

 僕らが最初に会ったのは2月8日深夜の渋谷だ。僕自身少しお酒が回る中楽しそうにその子に声を掛ける。どうやらクラブに友達と来たらしく彼女曰く初めて(初めてが本当かどうかは今でも知る由はないが)きたらしいが、死ぬほどあの環境が合わなかったそうなので外で少し休憩していたらしい。軽く状況開示して話す。当時の自分は長髪で今の短髪の自分とは雲泥の差ほど系統が違ったが、その感じの雰囲気が彼女に刺さり、ある程度彼女自身が酔ってたいたこともあるだろうがしばらく話すと
「何で君みたいなモテそうな男があのクラブにいるの?」
と言われたのでこの時点で勝利確信してそのままホテル前まで連れ出すが、
「友達のロッカーに荷物があるから無理」
と言われる。だが、ここまで来たので流石に強行突破だと思い流すもグダ。ここまで来たらストレートに思いを伝える
「俺は君のことを魅力的だと思ったから抱きたい」
「その気持ちは嬉しい、ただ今日は無理」
「いつ都合が合うか分からないので僕は今しかないと思っている」
「今日はダメ、後日なら全然いいからその時会おう」
そんな攻防をしている最中彼女は
「ごめん、鬱が来た!」
と突然その場で頭を抱えて座り込む。
「私、実は鬱病持ってるの。急でごめん」
と言われ抗うつ剤を鞄の中から血眼で探し出す。僕はこの状況を瞬時に理解しそこそこ鬱の経験はあるので共感しつつ丁寧にヒアリングをしていく。僕が支えながら10分前後ほど共にいると彼女も大分落ち着いてきたので病に対する共感や理解者としての立ち位置を保持することを意識しつつ少し会話した後には、ロッカーに荷物があることを思い出し冷静に考え
「じゃあ友達に許可貰って取りに行こう」
と言ってクラブに戻りその子の友達にも許可を取り荷物を得る。その後は何の躊躇いもなくホテルで一夜を過ごした。朝になると、他愛のない会話を少しして、
「次飲む機会あったら会おうぜ!」
みたいなことを言って駅まで見送って解散した。これが最初の出会いだ。


再会

 時は流れ2週間後。僕自身その子がそこそこタイプではあったのと性格が歪んでいる訳でもなかったのでまあゆったり話しておかわりするかと思いシーシャアポを組み再会した。出会った当時はお互いのことを深くは話してなかったので、このタイミングで様々な事を話した。実は俺より高学歴だったこと、彼女が躁鬱に苦しんでいるといった病気のことや過去について、今の職業のこと、そしてつい先日彼氏ができたことを報告してくれた。僕としては相手に恋人ができることは祝福できる事実である反面なぜ男の僕と会ったのか不思議でしかなかったので、話を聞くと
「その男と元々友達関係だったんだけど、会ってくうちに何となく付き合おうってなったんよ。ただ私自身全然好きじゃないから彼氏って何だろうねって思ってるw」
なるほどと思った。僕自身としては相手に彼氏がいるから何か感情が動くとか背徳感や罪悪感が湧くということは一切なく、この場合だと彼氏がこの子を魅了できてないこと自体が大きな責任であるので特に気にすることはなかった。それに、彼女と話してみるとこの子は頭が少しは良いゆえに話は面白く会話も弾んで時間感覚が無くなるぐらい楽しい時間だったのでそんな彼氏がいる云々の話はとうに頭の中から消えて行った。そのまま僕の家に招待して清々しい朝を迎え解散した。
 実はこんなこともあった。その日から僅か1日後に性病の症状が出る。これは自身に心当たりがあって、新宿の朝に声を掛けてピル持ちの子と性行為をしたことや、クラブには相変わらず出動していたこともありそこで感染したのだろう。僕自身はもう帰省中ではあるが、一応薬は持参していたので大丈夫だった。それよりかは彼女に移した可能性が極めて高いのでこれは流石に連絡しなきゃまずいと思って連絡。電話で話し、少し悲しまれるも僕が薬を東京へ近々持っていくことで合意をし少し呆れられながらも
「もうしょうがないね!」
と電話で言われ、後日東京に戻って会い、この件は事を納めた。そしてその当日某所でその子とご飯を食べてる最中僕自身が京都に予定があって行くことになったと彼女に告げたら
「私も旅行に行きたい!」
と言われ彼女は本来あった予定をわざわざ潰してまで自分と2泊3日の京都旅行の予定を立ててくれた、自身のために他の予定を削ってでも時間を割いてくれるという事実は誰からしても嬉しいものであろう。そんなこんなで私は彼女に再度別れを告げ東京を一旦離れる。
「京都旅行か、女の子と旅行楽しむのは初めてだしどんなものなんかな?」
と僕自身も心の中でわくわくしていた。


好意

 僕は大阪・福岡の立て続けの遠征を終えて京都に向かう。高校時代の親友と3日間遊んだ後に彼女と3日間遊ぶ、僕からすれば頑張ったご褒美みたいなものだった。ちなみに親友と会うのは実に成人式ぶりで彼と鴨川でお酒を飲んだり馬刺しを食べたり色々回って楽しかったのはもちろんだが、彼女との京都観光も楽しみで仕方がない、僕は躍動感で溢れていた。
 3月25日の金曜夜。親友との飲みを楽しんだ後解散し、仕事終わりに終電の新幹線で来る彼女を宿泊先の最寄り駅まで迎えに行く。その後は京都であるにも関わらず鳥貴族でお酒を軽く飲んで明日に備えて早めに就寝、今考えればここまで思い出に残り美味しい鳥貴族はもう二度と無いのかもしれない。そして翌日はいろんな場所へと出向いた。晴天の四条で昼ごはんを食べ、曇りの中の清水寺を参拝し、雨が強く降り注ぎ暗闇の中の嵐山を散策、そして京都らしさはなくごくありふれた住宅街の中に佇む焼肉店を歩いて目指して夕ご飯はそのお店で食べた。そんな煌めく宝石のような思い出は今でも鮮明に思い浮かびあがる。そしてその夜宿泊先でお酒を賞味し営んだ後の睦言で
「私、2年前に彼氏にめちゃくちゃ依存したけど結局は振られて叶わなかった恋があるのよね。」
「へえそれは苦い思い出と同時に良い経験やな」
「色んな感情が動いたよ!、それ以来男にしがみつくのはやめようと思ってた。けど君といるとまたしても同じことが起きてしまいそう」
「そうなの、ごめんな俺が魅力的な男でw」
「ホントだよww」
こんなキザな台詞で返してた気がする。この時は自身が恋人に依存することの辛さも分からなかったし恋を通して感情が動くことも未経験だったので割と適当な返しをしていた。この他にも
「他の女の子とはもうしないでほしい!」
などの好意ある言葉を投げかけられた。確かに僕自身こういう言葉を言われるのは何度かあるが、その度に何か追いかけられることに対しての嫌悪感が生じてしまい切ってきたりしてきた。だが、今回は僕からしてもそこそこ好意のある子ではあったのでこの言葉は当たり前のように嬉しかった。だが、当時は私たちは恋人の関係ではないと同時に自身の活動の都合もあるので
「僕らはまだ付き合ってる関係じゃないから色んなことを束縛されるのはきついけど、僕は君のことを凄く魅力的だと思ってるしだから滞在する予定を延ばして京都を一緒に回ってるんだよ!」
と制約はあれど好意にはしっかり気持ちで返してあげた。そんなこんなで一夜を共にして、翌日の朝に喫茶店で休憩したのちの正午に彼女を京都駅の新幹線改札前まで送り
「3日間楽しかったよ、ありがとう」
「それは俺の台詞だよ、東京でまた会おう!」
という言葉を告げ、私は手を盛大に振って彼女がこちらを3度振り返りながら新幹線のホームに向かっていく姿を見届けた。
 本当に楽しい時間だった。

彼女自身も幸せを感じていたのだった。女の子と旅行には来たことなく初めての経験だったからこそもあるが、この色褪せない思い出は今後の人生でも財産として残るだろう。自分が活動をしていて本当に良かったと思えた瞬間だった。僕はこの時から恋心を抱いていたのかもしれない。


告白

 そして東京に帰ってきた後も私たちは逢瀬を数回重ね、約1か月後の4月23日の土曜日の夜、
「私は過去に何度も自殺しようと思ったし、生きてる意味って何なんだろうって思ったことは何度もあるんだけど、今は貴方がいるだけで生きてることに価値があるしあなたと会うことが私にとって一番の楽しみなの!」
この言葉は当時の僕にとってはもの凄く嬉しかった。一年前までは自身は童貞であり、女に心から愛され必要とされる経験が一切無かった。だが、自分の女経験の積み上げに真摯に取り組み考えてきたからこそ僅か一年後には自分が一緒にいて心から楽しくて容姿も好みな女の子に生き甲斐の一つとして僕を置いてくれたのだ、これほど嬉しいことはない。もう僕の中では決心がついた。
「俺も君と一緒にいて楽しいし話も合うからさ、一回付き合ってみよ!」
「え、ホントに言ってる?」
「もちろん!」
「彼氏って何だろうって前まで思ってたし、実感わかないけど」
「俺も過去に好きな人と会ったことは何回もあるけど、恋愛はしたことないって言ったじゃん!。だから俺も恋人って何なのかよく分からないからこそお互い模索していこ!」
このように告げたら彼女は満面の笑みを浮かべ
「そうだね、私たちだけの物語を模索しながら積み上げて行こ!」
と言った。そう、この時から私たちは正式に付き合い始めたのである。僕自身は高校の頃童貞で恋愛経験はなかったものの、好きな人との少しばかりの思い出とか積み上げたものの話、実際一年前に彼女が一か月ながらいた経験など諸々は多少あり、過去死ぬほどモテたとかそういう虚偽のエピソードを伝えることはなく事実を淡々と言っていた。むしろ自分が気に入って付き合う子に対して過去や現在の自分を偽ると逆に自分が心痛い。そしてこの時の僕の心持ちは
「俺はこの恋愛で失敗してもいいから正々堂々として、一度は思い出に一生残る恋を経験しようじゃないか」
その思いが強かった。自分がある程度気に入ってる相手から本気で愛されているならそれに自らが応えてやろうじゃないか。
 僕がこう思ったのは福岡で遠征を共にした便君の影響が大きい、彼と楽しく博多めんたい重を食べていた時こう告げられる
「あいる、学生時代は一度でいいから本気の恋愛をした方がいい。確かに今こうして街に出て声掛けたり箱に行くのも楽しいが、お互い真摯に向き合って恋をしないと分からないこともたくさんある。何より社会人になってからの恋愛はほぼ必ずと言っていい程、結婚の価値観や収入といった副産物まで考慮しないといけなくなる。だから感情を軸にして恋愛ができるのは学生のうちまでだと思う。俺はそれを経験して今はこの活動に励んでいるからこそ学生恋愛の大切さをしみじみ思うし、このまま自分の感情を軸にして本気でお互い愛するということが何なのかが分からない人間になるとそれはそれで薄い人間になってしまうと僕は思う。そして今後恋をしてそれがどういう結果で終わろうとその経験自体は掛け替えのない財産だ。だから絶対に学生のうちに恋人は作ってほしい!」
当時の僕はこの言葉に物凄く感銘を受けた。確かにストナンやクラナンを通して色んな種族の女の子を抱けるようになり、女に対する執着心といったものは殆ど無くなっていた。だが唯一少しだけあったものがある、それは恋愛だ。中高の頃から周りの友達が恋人を作り幸せを間近で見る一方自分の恋は叶わぬことが多かった。女の子って何だろうと思う時期もあった、高校の頃は部活も勉強も努力したしそれ相当の成果は出せた、だが恋愛だけは立ち行かなくて他と比べると劣等感があった、そんな自分はまだ未熟なのかもしれないと哀愁にも溢れていた人生だとも思った。だが、その思いから約3年の時をえて自分は瞬く間に成長し女から求められる存在となり、自身の感情に身を任せた恋愛ができるようになったのだ。これがどれだけ嬉しいことであるかは同じ境遇を持った人間にしか分かり得ないだろう。元はと言えば童卒もそうだが、彼女を作りたくて僕は活動を始めた。その原点にこの言葉を聞き再び自身は回帰したのであるから、再度その気持ちを思い起こさせてくれた便君には本当に感謝しかない。
 また、前々から知っていたのだが彼女は躁鬱、つまりは双極性障害に苦しんでいた。本気で今にも死にたくなる状態の時もあれば人生豊かで仕方ないという二つの感情が交互に交わる。それゆえ、社会に適合できなくて苦労したり悩んだ時も彼女は多かった。そのような症状を抱えた子だからこそ僕は支えようと思えたのかもしれない、ナイチンゲール症候群という看護師が患者を看病するうちに恋愛感情を抱いてしまう症状があるらしいがそれに僕は近かったのだろう。極論そんな彼女に必要とされ、自分自身が彼女を支えられることに当時は喜びを感じていたのだろう。だからこそ彼女は僕の心をも満たし本気で愛せたのかもしれない。


純愛

  そして付き合ってからは本当に彼女が好きで、付き合う前から行くと決めていた自身の名古屋でのストナン活動以降は殆ど引退に近いレベルまで活動の頻度は減った。たまにクラブに出るぐらいだが、正直モチベは高まらなく、それは怠惰とも取れる反面僕自身彼女を本気で愛したゆえに他の女に目もくれなかったという証左でもあると思う。僕自身は彼女が時より双極性障害で苦しんでいるからこそ2人でいる時はとにかく非日常感を提供し楽しませるようにと努力した。お互いの行きたいご飯屋さんに行くのはもちろん、東京タワーからスカイツリーまで徒歩で散策してみたり、時にはバーに行きお酒を吟味しつつ測りきれない量をお互い飲んだり、はたまた公園で缶蹴りしたり。彼女に新たな体験を提供するのと同時に僕自身も付き合ってから初めての経験ばかりだった。本当に会うたびに新鮮で楽しかった、この1秒1秒が永遠に続けばなとも思った。
 もちろん、彼女の病気のこともあり定期的に病んでいる連絡が来るときはある。そんな時も電話をしたりしてなるべく相手の立場に立ちつつ自分にとって何ができるのか真剣に考えたりして一生懸命ケアもした。第三者から見れば、確かに普通のカップルとは少しずれがあると思われるかもしれないが、それでも僕からすれば2人の空間は掛け替えのなく神聖なものだった。


祝福

 そんな日々を過ごす内に彼女の誕生日が近づいてきた、6月17日だった。僕は過去にもキープにぬいぐるみをプレゼントしたりなどはしたが、今回は自分にとって大切で掛け替えのない存在が相手なので、誕生日は盛大に祝ってあげようと思い準備した。ただ、自分の予定上この日は予定があったので話し合った結果6月22日にそのお祝いをすることで決行した。彼女と電話をした結果、浅草で祝うことを決め、僕が最近そこで気になるホテルを提案すると彼女は喜んだのでその宿泊先を予約をした。また彼女の要望で懐石料理が食べたいと言われたので僕も無我夢中になって良さそうなお店を探して予約をした。ここまで女の子ために僕といる時間を少しでも豊かにさせようと思ったことは自身も初めてだった。
 そして迎えた6月22日。いつもと何の変りもなく会うが、自分は色々と準備をしていた。ホテルに入りサウナでひと段落した後にどこか趣を感じる浅草らしい懐石料理店に向かいコース料理を彼女に頬ばらせる。そして僕がお店に彼女が誕生日であることを事前に告げていたので、お店の人もお祝いしてくれて感性込めて習字を書いてくれたり誕生日ケーキを御馳走してくれた、サプライズの一つとしてはとても嬉しい物だっただろう。彼女はこの出来事に対しても相当喜んでいた。
 店を出ると辺りは暗くなり少し涼しさを感じる夏の浅草の下町を散策しつつドン・キホーテで少しばかりの日用品とお祝いとして大量のお酒を手にし
「今日はたくさん飲むぞ!、祝福だ!」
と私は言い放ちお互い好きなお酒を大量に買い喜びのリズムに乗りながらホテルへと舞い戻った。
 もう一度サウナでお互い満喫した後にお祝いでお酒を飲みあい色んなことを語った。最近の周りで起こった出来事や楽しかった話などの他愛のない話だ。その他にも、彼女は喫煙者で僕自身は煙草を吸わないのだが、その日だけは僕も一緒に煙草を吸いあったのもいい思い出だ。
 そしていよいよ僕からの最高のサプライズである誕生日プレゼントのお待ちかねだ。この日のために僕は彼女にとって永遠の紳士であり続けたいと願いお花を用意した。それはブリザーブドフラワーという数年は枯れない加工を施された花である、彼女の家に飾られれば今後それを見る度にこの日の思い出が蘇ることは間違いない。僕は紳士として最愛の彼女に花を授けるという事を決めたのだった。深夜の2時くらいだろうか、僕は彼女に
「あれ、まだ僕が提供してないものあるよね!?」
と告げると彼女は満面の笑みで
「え、なになに?」
と応える。
「僕が今日一番あなたに渡したかった宝物だよ」
「あ、分かった! プレゼントだ!」
そう言われ僕は今まで彼女に見つからないよう鞄の中に隠していた箱と袋を取りだした。
「これが僕の思い、これからもよろしくお願いします」
そう言って渡した。その時の彼女の顔は今でも鮮明に覚えている、心から喜び幸せを感じていた瞳と身体の底からあふれ出す慶福は僕にも伝わった、感謝の思いで溢れていただろう。


「本当にありがとう!、あなたがいてくれたおかげで今日は一年で一番幸せだよ!」
そういって彼女は僕を抱きしめた。お花の写真を取り合い、いつもはインスタにお互いの出来事を上げない性格の彼女も今日は嬉しさのあまりにお花をストーリーに上げていた、それほど心から嬉しかったのだろう。彼女も私もお酒が周りお互い何言ってるか分からないぐらい飲み倒して心の底から抱き合い一夜を過ごした。
 僕は本当に祝って良かったと心から思った。相手に自身の感謝を伝えるために様々な品物を提供したりメッセージを伝えたりする。現代ではこの行為は一歩間違えればATMなどと揶揄されがちだが、自分が幾多の女性の中から選んだ愛しい人に対しては誕生日というその人にとって最大の記念日の時くらいはしてやってもいいじゃないか、そう心から今でもそう思う。
 愛しい人との恋愛を通して人を愛し人に愛されることの喜びを知る。男の場合はその境地にたどり着くまでは容易いことではない。過去に積み上げた自己鍛錬の努力、女性から時より拒絶された経験、喜怒哀楽の感情を複数経験し茨の道を進みながらこの境地を手に入れた。そしてこの今の瞬間はそんな自分への最大限のご褒美の時間でもある。
 この時間が一生続けばいいのに…

 

 ここから災難が始まった、今こうして執筆している瞬間もこれから先の物語を記すのは物凄く辛く今にも手が震えそうである。これより先は今まで全ての感情を全力投入して書く、ここまでも長かっただろうが自身の強い思いがあるからこそ少し頑張って最後まで一読してほしいと心から願う。


悲劇

 翌朝目覚める、日の光が窓の隙間から少し射し素晴らしい情景と共に目覚めた最高の朝だ。僕は彼女に何食わぬ顔で
「おはよう、いい朝だね」
と告げる。すると、彼女はやけに不機嫌だった。
「私、寝れなかったの…」
彼女は時より睡眠障害で悩まされていた、そのため睡眠剤を適用することも多かったが、今回は投与しても効き目がなく眠れなかったらしい。僕は彼女の症状が分かるのは事実だが、せめて俺といる時だけは機嫌よく元気にしてほしいという思いも多少はあった。だから俺は歯を軽く磨いた後に
「僕ちょっとお酒買ってくるね、朝だけど僕ははっちゃけとく!」
と言い部屋から一旦立ち去った。僕としては、自身が少し部屋から消え去ることで彼女は落ち着いて就寝できるのではないかと考えたと同時に、自身のテンションも盛り上げていかないとお互い暗いままで終わる一方なので少しばかりのアルコールを入れるかという安易な考えだった。
 そのままコンビニで缶を3本買い部屋に戻る。彼女は疲れていてぐったりしていた、僕は何も話しかけないようにするのが賢明だと思い1人携帯を触りながらお酒をごくごくと飲んだ。そのような時間が過ぎ30分ぐらい経った後だろうか、そろそろ彼女の疲れも飛んだと思い気持ちの良い朝を提供する気持ちで彼女に
「やあ、元気なった? おはよう!」
と告げたら
「…何?」
と不貞腐れた態度を取られた。その後僕は話しかけるも彼女のその姿勢は一向に変わらない。僕は相手の立場も少しばかりは理解していた、確かに睡眠障害のことも知ってるし、これが作為的でないことも知っている。だがせめてお互い一緒にいる時だけは喜び合ってほしいという思いは彼女を愛しているからこそ強かった。しかし、このような昨日の幸せを崩壊させるような態度を取られる内に自分も嫌気がさしてくる。そして彼女にこう言われた。
「ちょっと話しかけないで!」
この言葉で遂に頭に血が上った。自分は思ったことを即座に口にしてしまう性格で、それが喜びや怒りにしろ何でもすぐ表に出してしまう。もう冷静さより先に言葉が出てしまった
「その冷たい態度いい加減にしろ!」
「はぁ? 私は今眠れなくて辛いの!」
「だとしても俺と話す時ぐらいは機嫌隠す努力ぐらいしろよ!」
「うるさいわね!、あなた私の症状経験したことない癖に!」
そしてここから言い争いが始まった。私も彼女もそうなのだが、思ったことはすぐ口走るタイプなので何か相手に対して嫌なことがあったらすぐ指摘して注意することがお互い多かった。過去に喧嘩になりそうな場面は時々あったが、お互いのどちらかが冷静に抑えてやり過ごしていたと思う、しかし今回は相手に対して怒りの心緒が遂に両者爆発した。この先は俺も何を言ったのかあまり覚えていないほど口論は白熱していた。そしてもう堪忍袋の緒が切れたのだろうか、僕は
「もういいや、こんなことになるならとっとと別れよ!」
という言葉が思わず口走ってしまった。すると彼女は
「あなた今日結構変だよ、明日また話そうよ」
というような後日に再度話をすることを提案していた気がする、流石に彼女はこの状況がまずいと気づいていたのだろうか。だが僕は内心このように思っていた
(何で今起こった出来事をこの場で解決せずに明日に持っていくんだ?)
今考えれば彼女の言葉は的確であるが、当時の私にとっては余計に憎悪をたぎらせる一言だった。その衝動で私は何かの言葉を発したのは確かだが、その内容が何なのかはもう覚えていない。そして彼女はこう告げる
「いいや、私もう帰るね!」
と言って彼女は支度をして部屋の玄関へと向かって行く。私は
(は?何逃げてるんだよ?)
ただそれだけの感情しかなかった。そして遂にやってしまった
「いいから待てよ!」
そう言って私は彼女の体を引っ張りベッドへ押し倒してしまった。
そして彼女はこう言った
「怖い…」
この時の彼女の恐怖を感じる顔、及び自身に対する軽蔑の視線は今でも鮮明に思い浮かびあがる。
 自分はここら辺からハッと目が覚めた。感情が先走り思わず手を出してしまった、紳士たるもの女性に手を出すなど失格だ。我を取り戻し流石に一度冷静になろうとしたその矢先彼女の口からこう告げられる。
「いいよ、今日で別れよ、あなたがこんな人だと思わなかった。」
「私は手を出す人は本当に嫌い」
流石にまずい、自分は内心かなり焦ったと同時に何をしていいのか分からなかった。とりあえず
「本当にごめん、謝る。一回そこに座って話そう」
と告げるも彼女と私の距離はかなり離れていた
「近づかないで! 怖いの…」
恐怖心が彼女から伝わった、一回距離を置き10分程度会話をしたのだろうか、でも僕は動揺しすぎて何を言ったのか覚えていない。そして気持ちの整理が追い付かなくて気づいたら半泣きだった。ただこう言われたのだけは覚えている、僕が彼女を恋人扱いすると
「私を彼女って二度と言わないで、もう別れたんだから」
と、その言葉は胸に突き刺さった。昨日まであれだけ喜んでいた恋人が一夜にしてこのような言葉を発してしまうという事実に胸が痛くなった。
そして彼女に
「今日でお別れだね、もう帰るね」
と言われ最後にこう告げられる
「昨日までは…本当に楽しくて幸せだったよ」
この言葉を口にして彼女は静かに扉を開け部屋を出て行った。
 一室には重苦しい雰囲気が漂い、唯一その中に言葉を失った男が佇んでいた。追いかける気力もなかった、ただただ頭の中が一面雪で覆われているかのようなぐらいに真っ白になった。30分ぐらいずっと天井を見上げていたのだろうか、ただただ無の時間が過ぎ去っていく。気づけばチェックアウトの時間を過ぎ、急いで支度して部屋を出ていった。
 外に出て空気を吸い今起きた現実をほんの少しだけ受け止め何ができるかを考え、その結果まずは謝ろうと思い電話を即座にかけた。しかし応答することは無かった。ここで自分は物凄く不穏な空気を感じた、いや、本当にそうであってほしくないと思うが確認する必要がある。僕は咄嗟にLINEのアプリからスタンプのメニューを開き、おすすめに出てきたスタンプを彼女に恐る恐る震えた手で[プレゼント]のボタンを押す。そしてこの画面が露わになる
「プレゼントできません」
いや、たまたま持ってただけだろと一度は自身を誤魔化し安堵の気持ちを思い浮かべ他のスタンプで試してみる
「プレゼントできません」
 再び目の前が真っ白になった。連絡手段が相手によってブロックされていたのだ、もう何も挽回することが出来ない、頭の中が再度空っぽになった。浅草から家まで30分程度かけて帰ったがその道中すらも覚えていない、それほど先ほどの出来事が非現実すぎて自分の感情が追い付けなかった。


悔恨

 家に帰ってからはひたすらに苦しみ、哀惜、改悛の情などの負の感情が僕に正面から立ちはだかり自身の心を削っていく。一度自身を落ち着かせようとベッドに横たわり心と身体を休ませるも、起きたら再び後悔の念がおそいかかる。食欲も一切なく、気づけば何もしていないのに嘔吐した。ただただ胸に針が突き刺さる感覚しか感じ得なかった。そして事の発端となった朝の場面を思い起こすだけで辛いのはもちろんだが、この別れた原因ははっきり言って自分にある。自分から別れると告げ、挙句の果てには女に手を出した。そう、自身が引き起こした出来事に対して自分が悔いているのである。その事実が余計に自分の首を絞め、遣る瀬無さが身に染みる、自分は馬鹿なのかと何度も問いかける。悲しみを感じるほど湧いてくるのは当時の自身への怒りへの感情、その複雑な心境は言葉では表せない程辛かった。昨日までの幸せは何だったのか、誕生日を祝い心から喜んだ彼女の気持ちは嘘だったのか、今日と昨日の情景にあまりにも隔たりがありすぎて自分は女の子の感情を信じるのはもうやめようとさえ思った、それほどまでにこの現実から目を背けたかった、タイムマシーンがあれば今すぐにでもその場面に戻り自身の過ちを正したいという感情さえ芽生えた。そしてそれらの複雑な感情は私が涙することさえも許してくれなかった、事実を受け止めきれなくてそれに対し感情を露呈し泣くことすら神は拒絶したのである。


希望

 やり場のない気持ちを残して夜になった、ここで少し落ち着きを取り戻し冷静に考えたらあることに気づく。実は自身が過去に携帯を損失していたゆえに新しい電話番号を作り、それを現在の端末で使用しているので新規のLineで彼女とは確かに連絡が取れないが、過去に使ってたLineも一応パソコンからなら使用することは可能だった。その存在に気づき、早速ブロックされていないか確認すると幸いなことにこちらの方はまだ生きていた。
「やった、まだ連絡手段はある!」
心の底から喜んだ。ただ同時に何を言えばいいのか悩んだ、今にも電話をかけたい衝動で抑えきれないが、一度冷静になり何をしたら元の関係に戻るだろうか必死で考えた。
 Lineでどのような内容のメッセージを送るかを考えた結果ひとまず思いついたのはまず謝る事、再度話し合いたいという願望、そして復縁の気持ちを伝えることである。これらを考えたら後は即座に言葉にしてLineで深夜に送った。今にも返信が来ないかと待ち望む気持ちで張り裂けそうだった。この辛さを抑えるために自分は送った後、直地に就寝した。
 そして翌朝目が覚めると返信は来ていた、しかし内容はこうだ
「めっちゃ自分のエゴで草」
「復縁はあり得ないよ」
たったこの二言だけだった。何もこんな話をしている時に「草」という言葉を使うなよ、そういう気持ちが芽生えたのも勿論だが今後の関係性に戻るという観点からすると絶望でしかない返信でありその事実がそのような感情を抑え自身の感情を失望の底へと追いやった。
「もう二度と元の関係に戻ることは無いのかな…」
という不安が僕を煽り倒していった。
 昨日から何も食べてなかった自分は哀愁に包まれながらもあるものを食べようと決心した、ラーメン二郎だ、自分が一番心から愛してやまない食べ物だ。ここ三か月間は様々な味の二郎を食べたいと思い色んな店舗を各地で回った、それほど二郎を愛していた。そして、僕は今だからこそ心から愛してやまない食物を食せば自分に勇気と改善策を与えてくれるのではないのだろうかと本気で思った。そう思いいつもは開店前に並ぶことはないが、今日は一巡目で食べようと思い迅速な足で店に駆け付け開店20分前には並んだ。今か今かと開店の時間を待ち遠しくしていた。そして時間になり慣れた手で食券を手にし席に座る、もう香ばしい匂いだけで満腹になりそうだ。暫くして
「にんにくいれますか?」
といつもおなじみの言葉が降りかかったので、今日だけはと思い
「ニンニクマシ!、野菜マシ!、カラメ!」
といつもより量を増やしてコールをした、そしてカウンターの上に出された、僕はおそるおそる器を手に取り箸を握って精一杯の気持ちで啜った。
「うまい、美味すぎる!」
僕はどんどん箸を進めどんどん麺を口へ運ぶ、気が付けばものの数分で完食した。そして今でもこれは言える、今まで食べたその店の二郎の中で忖度抜きに一番美味しい味だったと。
 僕にもまだ幸せがあるじゃないか、そう思えたと同時に今までの気持ちが少しだけ晴れ上がった、地の底に落ちた自身の感情は再びにして地に舞い戻りそして震えあがろうとしている。その感情、感覚、六感、全てに身をゆだねて自身は決心した。
「復縁のためにどれだけの時間を割いてでも全てやりきろう。例え、それがいかなる形で終わろうとも全力で関係修復を目指すことに意味がある。少しでも諦めの気持ちが生じて努力することを放棄したら一生彼女を人生で出会った中で一番の女とみなし永遠と後悔することになる。それだけは絶対に起こり得ないよう自身の最大限を尽くし、未練無くして最善を尽くす。」
 さあ、再び立ち上がる時だ。僕は復縁を望むために考えた末、金木さんに相談することを決めた。彼は関係構築や復縁などの関係修復の手法に詳しいというのはもちろんのこと、僕自身は何度もお会いしてて、会うたびに彼から醸し出される正のオーラとノンバーバルが凄まじく感銘を覚えていた。それゆえ心から信頼して相談した。
 金木さんに今までの事情を伝えて協力を求めると心優しく承諾してくださった。もちろん、恋愛には終わりがあり修復が難しい恋愛もある。だが、少しでも復縁の可能性を上げることができ、また後悔のないやり方で事態に終止符を打てるならそれでいいと心から思った。その点で自分が訳も分からずやるよりは金木さんに教えてもらい言われたことを遂行するのが良いだろう。ここでどのような助言を貰ったかは、彼自身もノウハウとして商売している以上言及することはできないが、自分が思いもつかなかったような方法をいくつも提案されて驚きと感心しかなかった。そしてそれらを実行し彼女に伝えた。後は返信を待つのみである、絶望の淵に閉ざされていた望みが今まさに再び開花しようとしていたのだった。


感泣

 この日の夜は飲み会の予定があった、自分はストや箱などの活動を支援してくれるサロンに入っており今日は所属する有志たちが集まって飲む日だ。自身の心境的にキャンセルしようか迷った時もあったが、こういう落ち込んでいる時だからこそ孤独で過ごすよりかは人と触れ合い楽しむのも大事だと思い気持ちを切り替えて参加した。僕は復縁のためにやることがあったので、少し遅れはしたが参加。いろんな方に励ましやエールをを送ってくださったり、久しぶりのメンバーや新しいサロンの人と会い、彼らの前向きな姿を見て自身も惹かれ笑顔は大分戻ってきた。
 僕が彼女との間で起こった出来事をメンバーと話している時に、じょうもんさんという方が駆けつけてくれる。
「久しぶりやな!」
「こちらこそ、前回の飲み会でお会いしましたね!」
「ええっと、名前は…?」
「じょうもんや、名前覚えてくれないの悲しいで!」
大変失礼なことを僕は口にしているが、そんな言葉も男気ある仕草で受け入れてくれた。
「彼女と別れて辛いか?」
「それはもちろん、辛いです…」
と言ってこれまで起きたことを簡潔に話した。そして僕はこう綴る
「ただ、僕は復縁を望むことを決心しました。これがどういう結果になろうと自分がやり切れるまでやろうと思って、じゃなきゃ一生彼女にしがみつく人生になってしまうから!」
と。その言葉をじょうもんさんは満面の笑みで受け止めてくれた、そして僕にこう返した
「男やん!、今こうして関係を戻そうと全力を尽くしてるんやろ!、それだけで素晴らしいことやん!。普通の男は失恋した時に中途半端にあきらめようとする、けど君は違う。苦しくても今一歩前に踏み出そうとしている、それだけで君は素晴らしいし立派な一人前の大人や!」
と、まるで自身の情熱を語り夢を話すかのような勢いで僕にこの言葉を投げかけてくれた。その後も僕の横でひたすらに励ましてくれた。
 己の目から一滴のしずくが流れ出しそれは頬にまで伝わる、やがてはしずくがまぶたを覆いつくし気づけば零れ落ちるほど涙を流していた。昨日今日と泣かなかった、いや泣くことすら許されなかった自分が今こうして貯まりにたまった不甲斐なさ、遣る瀬無さ、複雑な胸中が表に姿を現しその感情が涙として現れた。しかも飲み会という本来楽しくあるべき場で私は1人哀愁に浸り涙を流した。
「辛いだろ、いっぱい泣け!、それだけ涙を流せるほどの女に会えて恋したという事実だけでも素晴らしいじゃないか!」
と涙を流した後の僕にもじょうもんさんは励ましの言葉をかけてくれた、正直何を言われたかは定かには覚えていない、それほど自分の気持ちが抑えて切れなかった、言葉を掛けられるたびに涙の量はどんどん増大し抑えきれないほどの水滴が床に落ちて行った。ここまで泪があふれ出したのは何年ぶりだろうか、およそ3年ぶりだろうか。それほどまでに現実を受け止めることが出来なかった自分が今初めて事実を受け止めた。そして決心した覚悟がどれほど美々しいものであるかを気付かせてくれた。本当に僕の感情を動かしてくれたじょうもんさんには感謝しかなかった。そしてその思いも募り再び泣き出すのであった。


動揺

 しばらくして涙は収まり、今日の夜だけは昨日あったことを忘れ去り楽しく生きようと息抜きすることを決意する。最初は他の女の子といつも通り話そうと努力した。だがしかし、綺麗さっぱりと気持ちを切り替ることは出来なかった。 クラブで声掛けてる途中
「俺はこんなことしてる場合?」
と思うし、女の子をとコンビニに行き煙草買ってる最中
「彼女はこの煙草買ってたなぁ…」
と思い出してしまい今までのパフォーマンスを再現できない、自身が本気で愛した気持ちが蘇り邪魔をする。それゆえ特に成果はなく帰り同時に
「復縁するために全力集中して最後までやり切ろう」
と再度決意を固めたのであった。


決別

 そんなこともありながら帰宅する。自分は昨日彼女のために全身全霊をかけて行ったある行動を思い返したと同時にそれに対してどのような返答が来ているかをパソコンで確認する時間が来た。パソコンを開きラインアプリを立ち上げた、この瞬間は息をのんだ、今までにないぐらい鼓動が高鳴っていった。そしてトーク画面を開き返信が来ていた、その内容は
「ありがとう😌」
という一言だった。
 4か月もの間、幾何もの感じた感情全てが一気に蘇る。愉楽、情愛、哀傷、後悔、これら全てが己に降りかかり自身は再び嗚咽をもらす。この時はどれほど泣いただろうか、30分は軽く超えていた、机に跪き泣き、時より椅子に凭れて涙を流した。ただただ自分は泣いていた、泣くことしかできなかった。
 自分は悟ったのだ、もう二度と元の関係に戻ることは無いと。これは僕が長い間彼女と関わってきたからこそ分かる直感、いや確信だった。ただ一つ言えることがある、それは彼女と過ごした四か月間は彼女にとっても掛け替えのない幸せだったということを。彼女は自身が尽くした最後の思いや今までの恋人生活に感謝を伝えると同時に、もう復縁は不可能であることを一言で示してくれたのだろう。その事実が僕の心を貫き痛めたのだった。
 そして彼女はその数時間後ライングループから退会したのだった。


回想

 昼間に目が覚め今までの思い出を写真やラインのやり取りで振り返る。京都など色んな所へ回ったこと、彼女の病をケアしようと連絡をしていたこと、そして誕生日祝いのために2人で仲睦まじく計画を練り喜びを分かち合っていたこと。過去を思い出す度に涙が溢れ出た、彼女にとっても幸せを感じ笑顔に溢れていた時間だったのだろうという思いが自分の感情をより響かせる。四か月という短い期間ではあったが中身は濃密で私にとって替えが効かない期間だった。
 そして付き合った翌日にしたやり取りだ。


難しいものだ、それと同時にこの時へとまた戻りたいとも少し思った。だがもう語ることそして思い残すことは無い。自身はやれるだけ尽くし最後に彼女は感謝の言葉を述べて去ってくれたのだ。それがどれほど尊いことであるかは言うまでもない。辛い気持ちは少しあれど未練、後悔はもうない。自分はやり切ったのだ、その事実を受け止め自身を賞賛した。
 今となっては彼女が元彼に依存したことから得た感情を身をもって痛感する。当時はどういう気持ちかさっぱり分からなかったが今思い返せば共感できる。そして相手の目線に立ち物事を考えることができるようになった、また一つ大人になったのだろう。僕はそう思った。


決心

 ありとあらゆる感情を経験したこの四か月間は今後何が起ころうとも替えの効かない一生の財産だ。そして自身は以下の魂胆を胸に刻んだ。
「己を信じ己を愛し自分の芯を深く持つこと、そしてその考えが他者に影響を与え喜怒哀楽の感情を動かせる人間になる。」
「他者が羽ばたいてくためには己の全てを注ぎ与えるられるものは可能な限り与え尽くす覚悟を持つこと、人は生まれながらにして共存しながら生きている。」
「自身に愛を授けてくれた者に対してはそれ相当の報いを返すこと。」
そして最後、
「今後出会う人々が自身を心の奥深くに刻んでしまうぐらい魅力的で洗礼された人間性を習得する、そのため常に高みを目指すこと。」
これらの考えは彼女との付き合いを通して得られた感情及び、その途中で関わってきた便君、金木さん、じょうもんさんなど僕を支えてくださった人間に触れて思ったことである。実際便君にあの言葉を言われなければそもそもこの物語は始まらなかった、金木さんに助言を貰わなければ一生後悔していた、じょうもんさんに励ましてもらえなければ僕は感情を表に出せないまま嘆き悲しむだけだった。彼らを通してこそこれらの思いはより強固になる。


後書

 今見ている読者の中で一度も本気でお互いを愛し愛された経験がないのならば一回でいいから体験してほしい。それを体験する上で自分の今の経験人数とか相手の環境がどうのとかそういうのは関係ない、多種多様な人々と触れ合っていく中で自信が本気で好きになれそうな女の子だと思ったら付き合って構わない。恋愛を経験していく上で喜怒哀楽の様々な感情を感じやがては恋愛にも終わりを迎え別れが来るだろう。その過程の中で君は言葉では言い表せないほど入り組んでおり知り得なかった感情を実感するがそれ自体が財産である。そしてそれを経験した君は新たに相手の感情に寄り添って接することができるようになりまた一歩人間として成長していくのである。
 僕から読者に伝えたいことは以上である。そして最後に、最愛の彼女へ。

 



 


 この四か月間僕を愛し僕に幸せを授けてくれてくれてありがとう。








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