たとえば、昔


たとえば、昔。
いや、今から10年くらい以上前の話。

くせ毛の私は大体それくらいの年齢から縮毛矯正をかけることを許された。
半年に1回はかけないと、ね。
美容師に会う度に、言われる。
くせの強さ。
だいぶ傲慢な髪の毛で、今でもこいつはわたしから金を奪いとる。
くせやろう!

それで、かけては、私の髪が迷宮から一瞬抜け出すかわりに、多分、髪の色が明るくなって。
きっと、ほら。
陸上部だったから、やけたのかもしれない。
肌と一緒に髪の毛も。
イタミをさらに痛めつけてしまって。

明るい髪の毛は地毛なんですよ、という証拠が必要だった。
そんな証拠出したこともないけど。
だって、これは地毛で。
光にあたれば明るく見えるけど、黒なんだよ。
お洒落のための縮毛矯正じゃなく、
清潔感のためのもの。

スカート丈、ピアス、髪色、etc
そういうチェックを唐突にされる。
大丈夫だよ、だってやましいことはないから。

そう、何もない。

多分、先生方もわかってる。
私のことも少しは知ってる。
ただ、1回は私の前で足を止める。

そういうのが繰り返された。

あの日も同じ。
同じなんだけど、ちょっといつもよりも長い足止め。

ある先生は多分、かばってくれたんだと思う。

髪色が明るいから黒染めを……なんて話が出た日。

多分、染めたら緑色とかそんな変な色になっちゃいそう

あんまり、覚えてないけど、確かこんな感じだったはず?

最初は、え?って思った。
だって、私、そんな割り切れるくらい器が広い人間じゃなかったから。
実はちょっと怒った、りした。
何? 緑色? そんな色になるくらいなわけないでしょ、って。
もちろん、心の中でだけど。

でも、私はそれで逃れた。

だからね、思ったんだ。
あれは、

あの先生なりに私を逃してくれようとしたんじゃないかな?

数学の先生だった。
何度か教えてもらった先生。
ごめんね、先生。
実は1回じゃ、わからなかった。
時間もらって教えてもらったのに、
なんとなく、しかわからなかった。
私はそれらのピースを繋げるために、
何度もその道を通った。

だから、多分そういうことなんだろう。

私はわかってなかったけど、
それは多分、先生の優しさだった。
近くにいた友人にも、そう説明した。
でも、やっぱり私はちょっと怒った。
いくらかばってくれたとしても、言い方!
友人もなんて言い方だ!とちょっと怒ってくれた。


時間が過ぎれば、ちゃんと笑える。
今、笑い話になってる。

先生、元気かな?
元気でいてくれたらいいなぁ。


たとえば、こんな昔。
いや、10代後半の話があったとする。


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