ディスク・ウォーズ・アベンジャーズはいいぞ

 最近最終回間際の日曜アニメへの慟哭がTLに溢れていてつらい。むすみは人間のマイナス感情に無駄に共鳴してダメージを受ける性質を持つので、精神衛生のために自分が大好きなアニメの話をしようと思った。そういうわけでディスク・ウォーズ・アベンジャーズである。イエーイ!

 ディスクウォーズ(以下DWA)はマーベルと東映がタッグ組んで作った素敵なホビーアニメ。主にバチ魂バット(ばちこんばっと)という、早い話が効果付きのかっこいいメンコの販促アニメだったらしい。ハルクのディスクを一個入手し、床に叩きつけて遊んだりしてた。適度な大きさと硬さ、重さがあり、べちっ!としたときの跳ねる感じが気持ちいい。

 アニメの話。筋としては、アイアンマンことトニーとアカツキ博士(オリジナルキャラ)はヴィランへ対抗する技術として「ディスク」と呼ばれるヴィランを封印する装置を開発したのだが、ディスクをロキ率いるヴィランに盗まれ、逆にアベンジャーズ含むヒーローたちがディスクに封印されてしまう。アベンジャーズは、アクシデントから封印されているヒーローを一時的に解放する力を得た子供達の協力を得て世界中に散らばったディスクを探すことになる、といったもの。完全な解放の方法を知っているアカツキ博士はロキに拉致されてしまったので大変なのである。

 DWAは何がいいか。まずキャラデザが良い。公式サイトに行って一目見ればわかるのだけれど、原作コミックや映画のスタイルを踏襲しつつ、日本のキッズの琴線に触れるメカ感の加えたイカしたキャラデザしてるのだ。特にソーは超かっこいい。ヴィラン連中のキャラデザも、絶妙なダサかっこよさがある。自分はAvengers Ultimate Characters Guideを持ってるので比べながら見たりしてたのだが、すげえ!肩のアレとか腰のアレとかちゃんとデザインに組み込まれてる!という興奮があった。レッキングクルーとか妙にニッチなヴィランを採用して、さらにリスペクトがすごい。あと女性陣可愛い、ブラックウィドウが美しい!ウオーッ!

 キャラクターの描き方がいい。各ヒーローの特技が活かされている。「ハルクが暴れてるって言えばヤバイことはわかるだろ?」みたいな説明不足なことはやらない。ハルクの暴れっぷりとその被害をちゃんと映す。視聴者は否が応でもハルクの脅威を知る……そしてキャプテン・アメリカが、ひとり怪物に立ち向かっていき、力押しではなく技で締め落とす。キャップの勇気と盾を持ってるだけではない戦闘スタイルを見せるわけだ。このあとちゃんとハルクのヒーロー性をフォローする回がちゃんと入る。こういう丁寧な描写は全編に渡って徹底されている。とにかく視聴者の知識に依存することなく、「こいつはこういうキャラ」という説明がきちんと入る。序盤はその丁寧さが災いしやや冗長なきらいがあるのだが、逆に後半は積み上げた描写が生きてくる。(マンダリンはなんか唐突だったね) 協力してくれるヒーローたちの信念もきちんと描かれている。自由を愛するガーディアンズ・オブ・ギャラクシー、ミュータントを守るため戦うX-men。普段はふざけているデッドプールが傭兵としての矜持を見せるシーンなんかは圧巻である。

 ヴィラン側にはなんか妙なキャラ付けがされていることがしばしばある。やたら「ギョ」が言葉に挟まるタイガーシャークとか、「無敵ー!」を連発するジャガーノートとか。でもタイガーシャークさんは魚類だしジャガーノートさんは無敵なのだ。なんだか可愛げが出てくる。黒幕のロキ様はMCUのトム・ヒドルストン演じたどこかコミカルなヒールを思い浮かべてくれればいい。毎回水の漏れる完璧な作戦で時々出し抜かれて素に戻る。なんだお前。手段ロキが率いるヴィランを収容したディスクを使う「セレブリティ5」というオリジナルの面白いマスクをした五人の悪役もホビアニの悪党らしい愉快さで良い。DWAのヴィラン連中は可愛い。

 そして原作オマージュがいい。ディスク流出事件とかハルクの暴走とかなんやかやでヒーローの危険が喧伝され、超人登録法が可決される。ちなみにロキと中の人が同じで杖を持ったロで名前が始まる議員が絡んでいる。いったい何ロキなんだ……すわシビル・ウォーかと思いきやこの事態を切り抜けるアベンジャーズの機転が最高なのだ(ヒント:超人登録法は合衆国内に在する超人に対し適応される)。さらにアベンジャーズの仲間割れを画策するロキはハルクに囁く。「アイアンマンはお前を騙して誰もいない死の惑星に追放しようとしているのだ……」お前ーッそれはワールド・ウォー・ハルク!トニーはそんなことするよ!割とするから言い返せない!この策士!もう!他にもブレイドの登場する回では映画のかっこいい吸血鬼スレイアクションを別のアニメかってくらい動く作画でオマージュしてみたり、ホークアイの矢をロキが握って止めたら爆発したり、とにかく色々あって待って無理しんどい。

 そしてアニオリ成分とアメコミ成分のバランスがいい。子どもたちはアベンジャーズの面々をはじめとするヒーローとパートナーとなり絆を深めていくのだが、この加減がいい。原作キャラを食うほどでしゃばりすぎず、それでいて存在感がある。子供じみたところのある悪がしこい大人のトニーと、素直で正義感の強いアキラ。周囲に反発する不良少年クリスと、真っ直ぐに生きてきたキャップ。敵対する弟ロキを案じるソーと、弟アキラを守ろうとする温厚なヒカル。クールで優しいお姉さまワスプと自信家の少女ジェシカ。割と理性的だけど暴走すると怖いハルクと気弱で小柄なヒーローオタクのエドワード。ヒーローたちも、子供たちも欠点はあり、ときに失敗するし心ない言葉でお互いを傷つけてしまったりもする。けれど失敗からちゃんと成長する。得意分野を活かし、補いあう。それぞれの悩みを抱えた子供たちを大人であるヒーローは導き、それぞれのヒーローの迷いを子供達が支えるという構図が完璧なのだ。特に好きなのがクリスとエド。クリスははじめキャップに反発するが、次第に心を開いていく。でもキャップは戦いの半ばで離別したバッキーとクリスを重ねていることに気づき迷う。その迷いを打ち払うのはクリスである。始めは怯えっぱなしだったエドワードは、誰よりも強いハルクと一緒にめちゃくちゃ成長する。エドの優しさがともすると暴走しがちなハルクを支えるまでになる。尊い。

 重い設定をごまかさない。このアニメにはX-men編がある。マーベル世界におけるミュータント差別をはっきりと描く。ミュータント関係はめちゃ重くなるので、キッズ向けの明るい話をやるというならスルーしてもおかしくなかったのだけれど、変に柔らかくもせず、誠実に向き合っている。ミュータントとして覚醒した少女の戸惑いと恐怖、そして希望を見事に描ききった。「ミュータントだけ特別な目で見るっておかしくない?他のヒーローは認められているじゃない」とアキラは問い、トニーは「人間は自分と違う誰かをなかなか認められない生き物だ。だがお前は大人になってもその疑問を絶対に忘れるな」と答える。このシーンが大好きだ。

 既存キャラをオリジナルデザインするわオリキャラはいるわ変な語尾つけるわなんか変な設定のアイテムはあるわ、地雷案件じみた要素がたくさんあるんだけど蓋を開けたらDWAはマジで良いアニメなのでお前たちDVDとかで見ろ。序盤のテンポは良くない。いちいちヒーローの解放バンクを一人ずつフルでやったりするし、作画も荒れ気味だ。でも物語はキャラ立てのために丁寧に作られているので、それを越えれば中盤〜終盤に至るまで本当に面白い。ツッコミどころも多いにあるが、わたしはこの作品が本当に好きだ。

 あとヒカル兄さんのヤンデレ入った弟思いっぷりが行き過ぎたヒカル兄さんの闇落ち回とかアイアンマン役の花輪英司さんがトニーにはペッパーの前でしか見せない態度があったけど話が進むごとに次第にアキラにも見せるようになっていくって語ってたとかシルバーサムライとかハンク・ピムとかウルヴァリンとかとにかくいっぱい語りたいことがある、ちくしょうおれはまとめるのが苦手だ、うわーディスク・ウォーズ・アベンジャーズはいいぞ!

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