『ユダヤ民族史3 中世篇I』

H・H・ベンサソン著,村岡崇光訳(1977)『ユダヤ民族史3 中世篇I』六興出版.

これもユダヤ民族についての本。これはアヴィケブロンのことを「ラビ・シュロモー・イブン・ガビロール」と表記。ラビ=宗教指導者、学者の意。日本語に訳すなら「ソロモン・イブン・ガビーロール先生」みたいな。

この本はシリーズで出てて時代ごとに分かれてるんだけど本村はこの中世篇Iのアヴィケブロン先生出てるとこしか読んでないので本全体としての雰囲気把握してないけど、この本はアヴィケブロンの詩が載ってるのでかなり価値がある(本村にとって)。

以下詩の部分引用

「「屋敷は四囲を圧し 類稀なる石もて建ち
その壁は堅固な櫓にも似て 真直ぐな露台をめぐらし
甍(いらか)はきらびやかに彩られ 床は大理石に雪花石膏
門は数うも能わず その扉は象牙
窓は高く上に開き 池は満々と水をたたえ
ソロモンの池もかばかりにやと されど牛の上にあらず
水際(みぎわ)には獅子が立つ……」

(H. schirman, Hebrew Poetry in Spain and Provence, I, Jerusalem, 1954, no.88, pp.223-224)」

以上(中世篇I p.39)から

孫引きになって申し訳ないのだけど私は英語が本当にてんで駄目で、中学英語も読めなくてこの引用元をまだ調べれてないのと、多分この詩の訳は村岡崇光の訳だと思うのでそのまま引用した。

もう一つ引用

「これは富裕な、あるユダヤ人、おそらくラビ・シュムエル・ハナギートの邸宅の描写である。この詩から、詩人は彼が描いている庭や屋敷を思う存分に散策できたことは明らかである。豪華な池——この種のものが事実アルハンブラにもある——を詩人は第一神殿の前庭にあった”ソロモンの海”にたとえているが、スペインのものの方が獅子のゆえに一層すぐれていた、というのである〔編者註 列王記7章25節参照。〕」(p.39)

詩人はアヴィケブロンのことを指す。第一神殿はソロモンの建てたイスラエル神殿のこと。自由に人の庭を散策しているアヴィケブロンのことを考えると本村はちょっと嬉しくなる。

アヴィケブロンの人間関係に関してこの本ではもう一つ触れている。

「ラビ・シュムエルは貧しい者、ことに学者と詩人を援助する義務を果たした。実に彼は当時のマエケナス〔編者註 古代ローマの政治家。著名な詩人たちのパトロンであった所から、学芸の保護者の意となる。〕であった。たとえば、両者の間の関係は必ずしも円満でなかったにもかかわらず、彼は詩人で哲学者のラビ・シュロモー・イブン・ガビーロールを援助した。」(p.129)

ラビ・シュムエル(さっきの庭園の所持者ラビ・シュムル・ハナギートと同一人物か?)はかなり過激な?人だったようでp.128では彼が神学校の校長を辛辣に批判する詩が載せられている。

ちなみにアヴィケブロンはまた別のシュムエル(ジール朝グラナダ王国の宰相シュムエル・イブン・ナグレーラ)にも保護されている。シュムエル・イブン・ナグレーラについては最初にあげた『スペインのユダヤ人』のp.19-20に説明がある。

本村は本を読むときまず索引を見てそのあと目次を見るタイプだが、この中世篇Iの索引、イブン・〇〇とシュムエル・〇〇とシュロモー・〇〇がめちゃくちゃ多くて面食らう。シュムエルは8人も居る。

ちなみにシュロモーがソロモンなように、シュムエルの英語読みはサムエル。

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