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全国大会決勝、「柳が真田に上着をかけた」ことについての考察
※この記事は原作を拡大解釈している記事です。全国大会決勝での立海三強(特に真田と柳)の関係性について書いています。
【テニスの王子様 完全版season3第10巻の背表紙】
絶句。
なんて深い愛の形なんだ。それがロマンティックラブかどうかはおいておいたとして、これは確実に愛でしょ。凄いよ。真田と柳……....…はあああああ。
この絵が実際起きた事なのか、それともイメージの絵なのかはわからない。しかし、「柳が真田に上着をかけた(orかけたかった)」という出来事やそれぞれの想いをもとに描かれた絵なのではないかと思っている。この記事では「実際に、柳は、真田に上着をかけてあげた」という説について、原作(kindle版)を読み返しながら考察していく。
上着をかけたタイミングはいつなのか
上着をかけたタイミングはいろいろ考えられるし、おそらく正解はない。(試合直後だとしても、他のタイミングだとしても尊さは失われぬ!!)
今回は、原作の中で、真田が半袖から長袖になったタイミングを考えてみたいと思う。
真田が半袖から長袖になっているのは、S3仁王不二戦の途中。
真田が、最後に半袖で描かれた場面
真田「…知っていたのか 幸村」
長袖になったタイミングはやや曖昧。しかし、襟の感じ的に、私は以下の場面ではないかと思っている。
真田「全ての返し球を返され 万策尽きた様だな…不二」
ちょうど40巻と41巻の間、このタイミングで真田は長袖になっているのではないか。
関連しているかもしれない場面
さて、自らの意思で上着を「着る」タイミングは様々である。特に理由はないのかもしれない。しかし、誰かに上着をかけてあげたいとなると話は別。柳はいったいどんな思いで真田に上着をかけたのだろうか。以下、いくつかの場面を取り上げ、それをもとに「柳は何を思って真田に上着をかけてあげたのか」について考えていきたい。
①「触るな 放っておけ」(S3真田手塚戦中)
Genius 351 部長と副部長。手塚と大石。幸村と真田。青学と立海それぞれの部長と副部長の関係性と在り方が対比的に描かれていてとても美しい話である。手塚も真田もボロボロになりながら戦い、ベンチに座る。できるかぎり最大限の身体のケアをしながら、勝利を誓う大石と手塚。
対して、立海はどうだろうか。
真田「触るな 放っておけ」
アイシングを拒絶する真田。「あくまでも、真っ向勝負。俺の勝負だから、誰も介入するな。」というような真田の強い意思を物語るセリフだ。
この話のタイトルは、あくまでも、タイトルは「部長と副部長」。他の登場人物は、基本的に連続して2コマ以上出てくることはないし、セリフも最低限にとどまっている。ただ、手塚と大石、幸村と真田以外に2コマ連続で出てくるメインキャラクターが二人いる。しかも、ほとんど印象に残らない形で。それが柳蓮二と切原赤也。
![](https://assets.st-note.com/img/1709858459164-76w71S5RgO.jpg?width=1200)
このシーンの柳、「真田に手を差し伸べようとしていたが、『触るな放っておけ』という言葉を受けて、手を出さないことにした(出そうとしていた手を、ひっこめて、自分の体に押し付けている……?)」というように見えないだろうか(隣の赤也が、柳の手を見ているようにも見える。D2の布石がこのあたりから打たれていたのかもしれない……)。
大石は、手塚の将来を気遣いつつも、チームのために闘う手塚を応援しかできないことに、ある種の無力さを感じていた。柳もまた同様に、真田をみることしかできない自分に無力さを感じていたのではないか。しかも、真田は「誰の介入も許さない」という態度のため、大石と違って声をかけることすらできない。
さらにメタ的な視点で語るなら、幸村と真田という「部長と副部長」の関係性にハイライトする話である為、おそらく意図的に柳を描くことを避けている(柳を描くと、部長と副部長の話ではなく、立海三強の話になってしまう)。だから、「弦一郎…」もなく、手を差し伸べることもできず、表情も描かれない。なんというか、「描かれない」ことによって、一層、切なさが感じられる………。
②「真っ向勝負を捨てろと言うのか…?」
そして、身体を酷使し、あくまでも一人で戦おうとする真田の前に、幸村は立つ。
幸村「…真田」
真田「真っ向勝負を捨てろと言うのか…?」
幸村「……そう全ては」「立海3連覇のためだ!!」
真っ向勝負を捨てなければならないこと。これは幸村の指示というより、現実を、幸村に突きつけられたという事なのだろうと私は解釈している。真田も心のどこかでは、そうしなければいけないとわかっていたけれど、見ないようにしていた現実。
幸村から真田へのやさしさと厳しさ、親しさゆえの冷たさ。いろんなものが感じられる場面である(跡部が乗り込んできたときも、「負けないように」と幸村が試合を止める。幸村と真田の思いが絶妙にすれ違っている。しかも、別にお互いにお互いを大切にしているからこそこのすれ違いが起きている。)。
真っ向勝負を捨てなければ手塚には勝てない―――幸村も、そして、誰より真田自身がそれをわかっている。幸村はおそらく確信している。
「真田は、立海三連覇のために真っ向勝負を捨てられる」、と。
でも、柳はそう思わなかった。
柳「やはり弦一郎は…」「真っ向勝負を捨てられぬ」
そして、その直後、真田は真っ向勝負を捨てる。別に、幸村より真田との付き合いが短いから、真田のことを知らないから、わからなかったのではない。真田がずっと真っ向勝負で手塚に勝ちたいと言っていたことを知っているから。幸村不在中も、幸村の強さを守ろうと、「王者立海」を守ろうと、真っ向勝負を貫いてきた真田を見てきたから。真田のことをよく知っているからこそ、「弦一郎は真っ向勝負を捨てられぬ」と思った。
自分の信念を曲げて、ギャラリーからは非難され、それでもチームのために勝利に固執する真田を、柳はみていた。
③D2柳・切原vs乾・海堂
この試合については、また別の記事で詳しく考察したいが、柳の「乾呼び」や手段の選ばない勝ち方がかなり印象的な試合である。私情を挟まない徹底した戦いぶりである(関東大会決勝S3乾戦、U17三津谷戦、W杯仏戦の毛利とのダブルスなど、柳の試合には回想シーン(技の習得過程とかではない)が多いことを考慮すると、この試合の徹底ぶりが良くわかる)。
④「…知っていたのか 幸村」S2仁王不二戦
真田「…知っていたのか 幸村」
「一緒に」三連覇を誓った幸村に、勝利のための作戦を知らされていなかった。
そして、これが、真田が半袖で描写されている(おそらく)最後の場面。
柳は何を思って真田に上着をかけてあげたのか
①ー④、三強それぞれが思うところがありそうだ……。でも、自分たちのチームの在り方や立海の全国三連覇を考えれば正しい選択ばかり。言葉にできない、やるせない気持ちを心の奥底では抱えながらも、幸村も真田も柳も表情にださず、まっすぐチームの勝利を見据えようとしていた。
実際にどのタイミングで上着をかけたのかわからないし、そもそも、柳は真田に上着をかけていないのかもしれない。でも、あの(完全版season3第10巻の背表紙)絵があるのは確かである。背表紙の絵では、真田の脚は痛々しく赤く腫れあがっている。でも、①で見たように、きっと真田は手当をさせない。かといってかける言葉も見つからない。言葉にできない、やるせない思いを抱きながらも、勝利を見据えてまっすぐ突き進もうとする。そんな瞬間の積み重ねを経て、柳は真田に上着をかけたいと思ったのではないか。
※ところでkindle版だと41巻Genius369「行くのかい…ボウヤの所へ?」の真田、襟元が半袖ユニの襟、袖は長袖になっているけれど、あれは作画ミス?それとも何か意図がある?完全版とかだと違ったりする?
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