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株式会社xxxを卒業して株式会社xxxにジョインしました

憂鬱。
最近は毎日憂鬱で仕方がない。駅のホームで喉の乾きを覚えた。やたらと先進的な自動販売機でいろはすを買った。ライフで買っていれば100円を切っていたであろうそれを高く買わされて憂鬱になった。差額で松屋の牛丼に何かしら載せられたかも知れなかった。憂鬱。

憂鬱。
ベンチャー転職にも序列がある。LayerXに行った同期は毎日楽しそうにツイートしている。ツイッターのbioに誇らしげな社名。そもそもリファラルらしかった。類友のうつくしいパターン。リクナビで転職先を見つけた僕とは大違いだった。

憂鬱。
もともと会社には居場所がなかった。利益を追求する主体に無能は不要だった。当たり前だった。「外れ値が欲しい」「弊社では様々な人材が活躍」「例えば宇宙工学をやっていてJAXAの内定を蹴って弊社に入社を決めた人もいるんです!笑」本当に笑い話だ。大人しくJAXAに入って週末は同僚とボードゲームでもしていればよかった。

憂鬱。
人と話すのが嫌いだった。勉強はできた。学校ではいつも図書館にいた。家にいるのも嫌で市立図書館にばかりいた気がした。図書館。あの冷たく乾いた場所。古い紙の嫌な匂い。

憂鬱。
この電車は変な匂いがする。いつも変な匂いがする。気が狂いそうになる。それから逃れるために引っ越してもいいと思う。

憂鬱。
歯の奥からお昼に食べた韓国料理屋のキムチの唐辛子が出てきた。ちゃんとキムチの味がした。

憂鬱。
給料は下がり、SOも貰えず、電車の変な匂いのせいにしてもっと家賃の安い場所に引っ越そうかと思っている。二駅ルールはなくなりただの家賃の高い池尻大橋の1Kだけが残った。彼女からは別れ際に「ずっと言ってなかったけど変な匂いがする」と言われた。服薬のせいだと医者に言われた。

憂鬱。
渋谷駅には最近デビューしたらしい韓国アイドルの広告。モニターの近くは妙に熱くて気に入らない。汗をかくのが嫌いだった。自分自身の身体性を感じる瞬間が嫌いだった。走って息が切れるとか、緊張して心臓の鼓動が聞こえるとか。

憂鬱。
お昼を食べたのにお腹が空いたからしぶそばにでも行こうと思ったらなくなっていた。裏切られたような気がした。信州屋に行った。

憂鬱。
最近は朝起きられない。嘘をついた。ずっと起きられない。寝られない。眠剤を飲んでも寝付けず夜明け頃にやっと寝付いたかと思うと平気で12時を過ぎていたりする。無能の遅刻ほど気まずいものもない。上司には眠剤のことは話していたが気の利く彼はそのことを部下に話したりはしなかった。ただのルーズな人だとチームでは思われていた。

憂鬱。
そうして憂鬱は加速し、眠剤の効果をすり減らし、そうして新しい会社でも寝坊し、眠剤の数だけが増えてゆく。

憂鬱。
眠剤をプチプチと出すのが好きだ。イライラするとプチプチする。プチプチ出した眠剤は百均のピルケースに入れている。一度それを床にぶち撒けたことがある。高級感を狙ったらしい11万の1Kの深いブラウンの床に散らばったそれは夜空みたいで美しかった。

憂鬱。
それでも日常は続いてゆく。早く終わって欲しいと思う。生理食塩水の中に自分の脳が浮かび、そこに栄養や電気信号が満ちるのを想像する。僕はいま、昼下がりの公園を散歩している!お日様って暖かいなぁ… そういうふうに暮らしたいと思う。

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