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令和2年司法試験・民法・設問2・解答に挑戦

令和2年司法試験・民法・設問2・解答に挑戦
第2 設問2
1、小問(1)
(1)甲土地はかつては丙土地と合わせて一筆の土地であったが、その後分割されて袋地となった。そこで213条1項の隣地通行権(囲繞地通行権)の有無によって、Bの発言アが正当かどうか、検討する。
(2)
ア、209条以下の相隣関係に関する規定は、相隣関係にある土地利用を調整する物権的規定である。したがって、213条1項の隣地通行権は、分割後に公道に接している残余地に課せられた物権であると考える。そうであれば、袋地の所有権が移転しても、隣地通行権は所有権とともに移転する。
イ、本問では袋地の甲土地の所有権はAからBに移転しており、Bは同条項の隣地通行権を取得する。
(3)しかし、213条1項の隣地通行権がどの範囲で成立するかは、明文の規定はない。そこで、有償の通行権を規定する211条を参考にする。有償であっても、同条は「通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない」と規定している。有償の通行権がこのような規定をしていることから、無償の隣地通行権も「損害が最も少ない」範囲で成立することになると考える。
(4)本問においては、a部分は幅1メートルであり、公道に至るためには「必要であり」、かつ、丙土地にとっても「損害が最も少ない」と言える。したがって、a部分については213条1項の隣地通行権が成立する。
(5)では、自動車が通行できるc部分はどうか。213条1項の隣地交通権によって、自動車が通行できる範囲が成立するか否かは、①公道に至るため他の土地について自動車による通行を認める必要性、②周辺の土地の状況、③上記通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきであると考える。
(6)甲土地は鉄道駅から徒歩圏内の住宅地にあることから、自動車による通行を認める必要性はない。甲・丙土地が一体であった時に分割で甲土地が一筆の土地になったとき、甲土地の所有者が自動車で丙土地のc部分を通行する必要な事情は特段に認められなかった。これらの事実からすると、丙土地の所有者には過大な負担を強いることになり、「損害が最も少ない」範囲を超える。したがって、c部分を追加的に構成するb部分については213条1項の通行権は生じない。
(7)よって、Bの発言アのうちa部分については正当だが、b部分については正当とはいえない。
2、小問(2)
(1)地役権設定契約の性質
ア、Bの発言イについて=物権契約であることを強調している。対価の支払は地役権設定の要素ではなく、あくまでも特約にすぎない。
イ、Dの発言ウについて=対価の支払いは地役権設定契約の内容となる。要役地の所有者は設定契約に基づいて対価を支払、承役地の所有者は承役地としての義務を負担しなくてはならない。地役権そのものは、物権であるが、物権設定には債権債務関係の手続が必要になる。
(2)契約解除の制度趣旨
ア、Bの発言イについて=契約の拘束力から債権者から解放するという契約解除の制度趣旨は、債権者を反対債務から解放することになる。したがって、地役権設定はあくまで物権の範疇にあり、債務ではない。債務を有しない者が契約を解除できない。
イ、Dの発言ウについて=契約の拘束力から債権者から解放するという契約解除の制度趣旨は、債権者を反対債務から解放することになる。このほかに、契約の拘束力から解放するもである。したがって、債権者は債務を負っていなくても、契約の拘束力から解放されるという点で契約を解除できる。
物権の設定については、契約が必要。物権の設定後は物権特有の規律に従うが、
設定手続には債権債務関係の手続を行うことが必要となる。したがって、物権の契約といっても、その一部には債権債務契約の要素が含まれる。売買契約という債権債務契約が行われて、目的物の所有権は物権の性質を持ち、その規律に従う。
(3)Dが契約②を解除できるか。
ア、私見
 確かに、地役権は物権である。しかし、地役権を設定するためには、承役地の所有者と要役地の所有者の間での合意、すなわち契約が必要である。したがって。無償、有償であっても、承役地の所有者は自己の土地に地役権を設定する義務、すなわち債務を負うことになる。有償の場合、要役地の所有者は契約で合意した償金を払わないとき、承役地の所有者は当該契約を解除でき、地役権は設定されない。
イ、本問について
 Bが毎年2万円の償金を支払わない以上、Dは地役権を設定する義務から解放されるため、契約②を解除できる。
(設問3に続く)

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