刑法条文・理論攻略法15

刑法条文・理論攻略法15
【詐欺と勘違いする行為】
1、間違えそうな欺罔行為や交付行為
例=「殺人者が北から、すぐ逃げろ」とウソを言って、あわてて逃げる際、忘れた荷物を持ち去る行為は、詐欺ではない。まず、「殺人者が北から、すぐ逃げろ」というウソは、財物交付に向けた欺罔行為ではない。また、被害者は財物を交付する意識はない。すなわち、詐欺罪の要件の一つである交付行為がない。したがって、詐欺罪は成立しない。窃盗罪を構成する。
【他の詐欺罪】
≪電気アンマ器=相当対価の詐欺≫
【文献種別】 決定/最高裁判所第二小法廷(上告審)
【裁判年月日】 昭和34年 9月28日
【事件番号】 昭和34年(あ)第1156号
【事件名】 詐欺被告事件
【審級関係】 第一審 24003656
福岡地方裁判所甘木支部 
昭和33年12月26日 判決
控訴審 24003657
福岡高等裁判所 
昭和34年 4月27日 判決
【事案の概要】 医師でもなく電気医療器販売につき指定を受けているものでもない被告人が、中風等を患っている福岡県内の住民に対し、「この機械は中風などによく効く」等のウソを言って、その旨誤信させ、普通の電気アンマ器である本件商品の保証金又は売買代金名義の下に、現金の交付を受けてこれを騙取した事実につき、原判決が、有罪を言渡した一審判決を支持し控訴を棄却したため、被告人が上告した事案で、たとえ価格相当の商品を提供したとしても、事実を告知するときは相手方が金員を交付しないような場合において、ことさら商品の効能などにつき真実に反する誇大な事実を告知して相手方を誤信させ、金員の交付を受けた場合は、詐欺罪が成立するとした。
【判示事項】 〔最高裁判所刑事判例集〕
価格相当の商品の提供と詐欺罪の成立
【要旨】 〔最高裁判所刑事判例集〕
真実を告知するときは相手方が金員を交付しないような場合において、商品の効能などにつき真実に反する誇大な事実を告知してその旨相手方を誤信させ、金員の交付を受けた場合は、たとえ価格相当の商品を提供したとしても、詐欺罪が成立する。
≪不法原因給付と詐欺≫
【文献種別】 判決/最高裁判所第三小法廷(上告審)
【裁判年月日】 昭和25年 7月 4日
【事件番号】 昭和25年(れ)第231号
【事件名】 詐欺被告事件
【審級関係】 控訴審 24001012
大阪高等裁判所 
昭和24年 9月27日 判決
【判示事項】 〔最高裁判所刑事判例集〕
いわゆる闇取引と詐欺罪
【要旨】 〔最高裁判所刑事判例集〕
欺罔手段によつて相手方の財物に対する支配権を侵害した以上、相手方が闇取引のため財物を交付したのであつても、詐欺罪が成立する。
→いわゆる闇取引という不法原因であっても、財産秩序の維持のため、刑法的には闇取引の商品であっても保護に値する。
≪国家的法益と詐欺≫
【文献種別】 決定/最高裁判所第一小法廷(上告審)
【裁判年月日】 昭和51年 4月 1日
【事件番号】 昭和48年(あ)第2832号
【事件名】 詐欺被告事件
【審級関係】 第一審 24005408
松山地方裁判所西条支部 昭和43年(わ)第156号
昭和46年 2月 4日 判決
控訴審 27817310
高松高等裁判所 昭和46年(う)第170号
昭和48年 9月17日 判決
【事案の概要】 被告人らが共謀の上、愛媛県周桑郡東予町の国有地の払下げに当たり、その適格を有しない被告人のために、基準適格者である者の名義を借りて本件国有地を騙取することを企図し、愛媛県知事を欺罔して被告人らが本件国有地の所有権を取得したことにつき、原判決が、被告人らを無罪とした原判決を破棄して詐欺罪の成立を認定したため、上告した事案で、被告人らの行為は刑法246条1項に該当し、詐欺罪が成立するものといわなければならず、これが農業政策という国家的法益の侵害に向けられた側面を有するとしても、その故をもって当然に、刑法詐欺罪の成立が排除されるものではないなどとして、上告を棄却した。
【判示事項】 〔最高裁判所刑事判例集〕
県知事を欺罔して未墾地の売渡しを受けた行為が詐欺罪にあたるとされた事例
【要旨】 〔最高裁判所刑事判例集〕
農地法の規定により国が所有する未墾地の売渡事務をつかさどる県知事を欺罔し、売渡処分名下に右土地の所有権を取得した本件行為(判文参照)は、それが農業生産力の推進という農業政策上の国家的法益の侵害に向けられた側面を有するものであるとしても、刑法246条1項の詐欺罪にあたる。(反対意見がある。)
以上

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