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「虎に翼」関連企画展に行った

朝ドラ効果で賑わう市政資料館

名古屋市市政資料館は、1980年代の保存修理の頃、工事現場を訪れたことがある。だから、資料館として開館する以前から知っていることになる。

レトロ建築好きの私は、時々、資料館を訪れては、美しい意匠をカメラに収めていた。資料館という市の地味な施設は、あまり訪れる人もない静かな空間で、人の写り込みを気にすることなく、撮影を楽しむことも出来た。

ところが、今はNHKの朝ドラ「虎に翼」効果で、大賑わいだ。朝日新聞の記事によれば、「4~7月の4カ月間で7万人を超える人が訪れ、過去最多だった前年同期の2.5倍」になっているという。

今までも数々のドラマや映画にロケ地として使われてきたのに、さすが、朝ドラ。こんなに反響があるとは、驚きだ。

法服と桐と時代の変化と

この夏、「虎に翼」に関連した2つの企画展が開催された。ひとつはNHK名古屋放送局主催で9月1日までの『連続テレビ小説「虎に翼」番組展』。もうひとつは愛知県弁護士会・名古屋市主催で本日8月25日までの『「虎に翼」の主人公モデルとなった三淵嘉子さんがみた名古屋ー旧名古屋地方裁判所の地からー』。

番組展の照明は明るかったが、三淵さんの企画展は暗かった。これは、三淵さんの企画展には「本物」が展示されているので、光による劣化を防ぐためではないかと思っている。

その「本物」の中で最も目立つ展示が、美しい刺繍に彩られた戦前の法服だ。判事・検事の法服は明治23年、弁護士の法服は明治26年に制定されている。これらの大きな違いは色にあるが、更に刺繍に注目すると、判事・検事にある桐の刺繍が、弁護士にはない。説明書きには「桐は皇室の紋であり官吏を示す標章」とあった。

弁護士(当時弁護士をされていた方のご家族からの寄贈品)
判事(レプリカ)
検事(レプリカ)

実は「虎に翼」の戦前の法廷のシーンを見ていて、「え?検事って壇上にいるの?」と、不思議に思っていた。法服の桐模様の有無といい、当時の弁護士の立場は今とは違うものだったのかもしれない。

明治憲法下の法廷展示。右側に弁護士、奥の壇上に判事・検事そして書記がいる。

現行憲法下の法廷展示の説明書きには、「現行憲法下になってからは、検察官は訴訟上では当事者の一方であるということから、弁護人と向かい合う位置に着席するようになり、同時に裁判所書記官の席も法檀のもとへ置くようになりました。」とあった。

「当事者」ではなかった戦前。「当事者」となった戦後。検事の立場の変化にも、すごいドラマがありそうで興味をそそられるが、調べるのに時間がかかりそうなので、これは今後の課題とする。

現行憲法下の法廷展示

昭和に花押?

三淵さんの企画展では、昭和27年に三淵さんが判事に任命されて、名古屋地方裁判所勤務を命じられた時の文書が展示されていたのだが、そこには承認の印として「花押」が使われていた。

「花押?花押って、武士の時代のものじゃないの?」

昭和と武士の時代がギュッとくっついたようで、私が生まれた昭和は、はるか昔の「歴史」の一部として、ひとくくりになっていくように感じられた。

ちなみに、この時の内閣総理大臣は、吉田茂。渡辺謙主演のNHK土曜ドラマスペシャル「負けて、勝つ ~戦後を創った男・吉田茂~」(2012年)は、市政資料館でも撮影されている。

建物の美しさだけに惹かれていた名古屋市市政資料館だが、「虎に翼」を機会に、法廷について考えるよいきっかけが出来た。また、訪れるのが楽しみだ。

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