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「この春を成瀬に捧げるスタンプラリー」の旅

聖地巡礼に誘われる

4月下旬、突然、「GW28日に大津で聖地巡りをしたい。」と夫からメッセージが入った。2024年本屋大賞受賞作『成瀬は天下を取りにいく』の聖地巡りをしたいというのである。特に異論はないので、OKを返した。そして、旅行を楽しむために、『成瀬は天下を取りにいく』とその続編『成瀬は信じた道をいく』の2冊を読破した。

この小説の主人公は成瀬あかり。中学2年生で大津に住んでいる。なかなか振り切れた天才型理系女子だ。愛想はないが、何かコトを起こすたびに、人を巻き込むタイプの子だ。周囲の人々は、最初全く気が進まないのに、予想外の行動を起こしていく成瀬に惹かれて、離れられなくなっていく。読者も同様に、成瀬から目が離せずにハマっていく。そのひとりが私の夫だった。

スタートは膳所から

4月28日、予定通り大津に向けてJRに乗った。夫からの指示で、電車の中で「まちのコイン」というアプリをダウンロードした。起動すると「この春を成瀬に捧げるスタンプラリー」のバナーが目に入った。最高気温は28度の予報。もう春は消えた。

最初に下車したのは「JR膳所駅」。「膳所」は「ぜぜ」と読む。小説でも説明されているが、難読地名のひとつだ。

この駅は、成瀬の自宅の最寄り駅である。架空の人物なのに、成瀬がいつもここを利用しているのかと思うと、ちょっとテンションが上がる。夫ほどではないが、私も成瀬は好きだ。

改札を出て左に進むと、「ようこそ!成瀬の住むまち、びわ湖大津へ!」の文字と共に、成瀬と島崎(成瀬の友達)の壁画が大きくどーんと描かれていた。

壁画の右側に、腕を組む成瀬とQRコードのあるA4の張り紙が目に入った。「ああ、こんなところにあるのか」と夫が叫ぶ。ん?と思い、電車内でダウンロードした「まちのコイン」で、QRコードを読み取った。スタンプが押される。これを13回繰り返し、コンプリートするのが、本日のミッションだ。

周遊券が…

スタンプラリーをコンプリートしようと思うと、京阪の南滋賀駅から唐橋駅の間で、何度か乗り降りしなければならない。そこで頼りになるのが京阪の周遊券。夫は、JR膳所駅のすぐ隣にある京阪膳所駅で購入の予定だった。

ところが、京阪膳所駅に行ったら自販機が2つ並んでいるだけで、駅員の姿が見当たらない。「ええ、ここで買えると思ったのに。購入出来なかったらダメじゃん」と夫、大ショックである。

焦る夫がスマホでいろいろ調べている時、ふと、改札口を見たら、自販機の後ろの壁から白い棒状のモノが出ているのが見えた。「指?」と思いながら恐る恐る近寄ると、自販機の後ろには小さなブースがあり、そこに駅員さんが立っていた。あまりに小さかったので、まさか、そこに人がいるとは思わなかったのだ。

後で調べたら、京阪膳所駅の駅員さんは常にいるわけではなく、休日は7:20〜10:30、14:10〜19:10、20:10〜20:50のみの配置らしい。そして、周遊券を購入した時の写真のタイムスタンプは「10:25」だった。危なかった。

昼食は松喜屋で贅沢に

成瀬の生活圏である膳所駅周辺で5つ、膳所本町駅で1つスタンプをGETした後、唐橋駅で下車し、スタンプラリースポットのひとつでもある「ハンバーグステーキ松喜屋」で昼食をとった。このお店は、成瀬と共に琵琶湖大津観光大使になった篠原かれんちゃんが、お祝いをしてもらったお店だ。

夫は「成瀬は信じた道をいく ランチ&ディナー」、私は「紫式部ハンバーグ御膳」をいただいた。どちらも3,850円。夕食でさえ2,000円を超えることはほとんどないのに、私たちとしては破格の値段だ。成瀬が絡んでいなければ絶対に食することはない。

高級感漂う店内は、鉄板カウンター22席のみ。鉄板は焼け焦げた跡が見つからないほど、銀色に美しく輝いている。私のレストランの味の判断基準は野菜にあるのだが、サラダの野菜が新鮮で瑞々しく、噛むたびに旨味を感じる。見事である。目の前で焼かれるハンバーグは、しっとり上品な味わいで、大満足だった。

松喜屋メニューページのキャプチャー

夕食は成瀬オススメの定食を

近江神宮駅に移動し、高校生になった成瀬が入ったかるた部に関連したスポットでもあるかるたの聖地・近江神宮、近江勧学館、滋賀市民センターでスタンプGET。そこから京阪びわこ浜大津駅に移動し、湖の駅浜大津おいしやで、成瀬オススメの近江牛コロッケ定食をいただいた。

いつもの倍以上の量のランチを食べたのに、夕食に揚げ物の定食を食べるとは、明日の体重が恐ろしすぎる。すぐ胃が荒れるたちなのに、大丈夫なのか。成瀬が絡んでいなければ絶対食べない。

そんなことを思いつつ食べたコロッケだが、パン粉は厚みがあるのに、意外に脂っこさが無く、美味しくいただけた。成瀬、流石、である。

なかなか大きなコロッケだった

そして、最後はフレンドマートへ

最後は、大学生になった成瀬がバイトをしているフレンドマート大津テラス店へ。ここに行くと成瀬に会えて一緒に写真も撮れる。というのも、等身大パネルが設置されているからだ。なんと、フレンドマートの制服貸し出しサービスまであった。流石にそれは遠慮したが、パネルと一緒に写真は撮った。横に並ぶと、164cmの私よりかなり下に顔がある。想像通り、成瀬は小柄な子だった。

等身大パネルと制服貸し出し案内

そして、13個めのスタンプをGETして、達成特典のクリアファイル2種類もGETした。コンプリートした喜びと同時に、終了した寂しさも少し感じた。

ちなみに、小説新潮2024年5月号には、成瀬の新作が載っている。更に著者の宮島未奈さんの連載「白雪町の歩きかた モモヘイ日和」が、NHK基礎英語3シリーズでこの4月から始まっている。これが全く英語に関係がない内容で、何故これが連載されるのかの理由はわからないが、何となくそのわからない感じが、成瀬に繋がる気がした。

いつかはミシガン

夕食を食べたびわこ浜大津駅では、もうひとつのスポット「大津港」があり、そこには成瀬が「何度乗っても飽きない」というミシガンクルーズがある。4階建ての大型観光船で琵琶湖を周遊しながら、食事や音楽などを楽しむことが出来るらしい。今回は時間の都合で乗船しなかったが、成瀬が年に何度も乗るという船を、いつかぜひ体験してみたいと思っている。

ゲートもなかなかカッコいい

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