見出し画像

微睡の世界VOL.7 ザゼン・ボーイズの「らんど」について

ザゼン・ボーイズのニュー・アルバムが12年ぶりにリリースされましたね。解散や活動休止を経て10年以上リリースが空くケースはスティーリー・ダンとかありますがライブ活動は止まらずやっていて、これだけの期間リリースがないというのが世界的にもないと思います。

待った甲斐があったというか、これは日本のロックの大傑作アルバムだと思いました。

向井秀徳君と初めて会ったのは1998年1月、今は無き溜池の東芝EMI第3スタジオのロビーでした、その時の彼が僕に向けた疑い深い視線は今でも覚えています。それからもう26年になりますが、仕事のパートナーだったのはナンバーガールのメジャーでの活動期間4年のみですが、僕は、この才能を自分か彼が生きている限り見届けようと思ってずっと彼の活動を追っかけています。

話はずれますが、時々ある日本のロック名盤チャートだと、1位というと大抵、はっぴいえんどの「風街ろまん」になる場合がほとんどのような気がします。

このアルバムは1971年リリースで日本のロックの黎明期の作品です。名盤だと思うし、僕もCDはリマスターされる度に買い、アナログも3枚持ってますが、でも、それ以降の日本のミュージシャンは何をやってるんだと思いませんか?(欧米でもいまだに名盤1位はマービン・ゲイの「ワッツ・ゴーイング・オン」なので同じかもしれないですが)

そして、このアルバム「らんど」は53年ぶりに1位アルバムを更新するのではないかと感じています。

聞いてすぐに何か書こうと思ったのですがこのアルバムをうまく言語化する事が出来ず、時間が経ってしまいました。

本当の感動というのは既存の感動を表す「笑えた」「泣けた」「痺れた」とか既存の言葉では表現出来ないものだと思うんです。

僕が「らんど」と似たような感動経験をしたのは「エルトポ」というカルト・ムービーの元祖という作品と大人計画の舞台「ふくすけ」です。
自分の感情の整理が出来ず席から暫く立てなかったのを覚えています。

The Whoも「I can't explain」と歌っていますが、これを言ったら元も子もないんですが、これが最上級の作品への賛辞なのではないでしょうか。

考察ばやりのネット社会なので、このアルバムについての考察的な記事は本当に沢山出ています、がこれは考察しても意味がない作品のような気がします。

なぜなら聞いて感じるだけで十分だからです。

それは向井秀徳のインタビューでも作品の本質も聞こうとするインタビューアーに対して、はぐらかすような抽象的な答えしかしていません。

そして素晴らしい芸術作品には全ての要素の何かの意味があるというのは僕の理論
なのです。例えば映画なら、演技、台詞はもちろん、照明、美術、衣装まで全て意味があって作る事を目指すべきだと思うんです。そういう意味でマーティン・スコセッシは最高の映画監督なのではと思っています。

そう、このアルバムは音、フレーズ、音色、バランス、歌詞、歌唱など全てが意味と必然性のあるように感じます。それは優れた芸樹作品全てに共通するのではないでしょうか。

最後にちょっとだけ情報です。作品に感動した僕は向井君に絶賛のショート・メールを送ったところ「久しぶりに飲みませんか」の返事。僕も聞きたいことが山ほどあったので、10年ぶりくらいにさし飲みしました。
なかなか本質的は事は話してくれないのですが、唯一、聞き出せた情報はミックス・ダウンに時間がかかったという事でした(ミックスも彼自身がやっています)音数もシンプルなのでミックスはそれほど手間はかからないと思うのですが、彼が悩みに悩みにいて、このバランスのなったのかと思うと、このアルバムのマジックが少し解けたようにも思いました。












この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?