西武・そごうの年頭広告について

 わたくしは、同じ業界の人間だからと言って擁護する気もない。ただ、この業界はあまりにもコンサバティブな体制なのだ。それは、ビジネスモデルにも当てはまり、採用の段階にも当てはまる。 

わたくしが所属してる会社に限って言えば部門間における共通言語であるはずの数字という面でも怪しい。己の育った部門領域の言語文脈でしか物事を語れない人間があまりにも多いのだ。 そんな状況に陥っているのが、"小売の王様"であった、百貨店業界の現状なのだ。 theではなく、a retailerとして発言させていただけるのなら、この3年の、(株)そごう・西武(西武そごう)は攻めたメッセージを発信していた。

 2017年は自社のプライベートブランドの広告塔であった故樹木希林氏を広告塔にして、"年齢"に対しての懐疑、超克を標榜した。それは、高齢者しかいかない。買わない。そんなイメージの百貨店業に対してのアンチテーゼであり、顧客に対しての啓蒙活動であったのであろう。「年齢を脱ぐ、冒険を着る」というメッセージは平成の広告史に残るテーゼといえよう。

 翌年2018年は昨年にグループ解散等を経験し、世間的には非常に"ナーバス"にならざる得ないようなタレント/アイドルであった木村拓哉氏を起用した。世間の声に対して、自らが決めた自身の生き方を貫く難しいさ、とその尊さを投げかける宣伝をした。それも6年程度前にプライベートブランドのCMに出ていただいているというご縁もあるかもしれない。当時は「ここにしかない。」といっていたCMであったが、予定調和と正論はいらない。正解は一つじゃない。私は、わたしの好きなように生きる。それが唯一の正解なのかもしれない。そのようなメッセージを投げかけた。 

そして、本年2019年においては、安藤サクラを起用し、"世間"の「求める」人が、「求める」女性・男性、女性らしさとか男性らしさとかそんなのどうでもいい、私はわたしである美しさ、尊さへの挑戦。それを目指すお客さまに来店してほしい。働いてほしいという趣旨の広告を流した。これがsociology的に、いやいやadvertisingの文脈的にどうのこうのという意見は甘んじて受け入れるばきだ。わたくしの推測と経験則で言えば、百貨店業界でマイノリティに関する議論が活発化しているとは思えないし、はたまた性的少数者への認識が世間一般の"昭和的企業"と同水準以下であることは言うまでもない。それも、前提に言えば「考えの浅い昭和的考えにどっぷりつかった男性社員による女性蔑視的広告」と言われるのかもしれない。 ただ、1つ言えることは、この企業は他の同業者が怖気づく中、企業体として、どういう社会を目指すのか?どういうお客さまにリーチしたいのか?という部分で”意思のある”そしてPRできている。そんな媒体なのではないだろうか。 「母の日テスト」で勢いづいた部門としては攻めたテーマではあるが、個人的には配慮と忖度で社会は変わるとは到底思わず、社会的に影響力がある?!(百貨店が影響力があるとは個人的には思わないが)企業として社会に対して何を問うのか?何を提供するのかと問いかけたい気持ちは重々承知。理解できる。

 それもこれらを実行するのも、実践するのも現場一人一人の社員にどう徹底するのか、そして、取引先の委託販売員にもどう徹底するのか。その部分において企業努力が求められるのであろう? わたくしは、同じ小売の人間としてこのことを真摯に受け止めて行動そして、超克していかなければならないと感じた。

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