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デュエプレ事件簿(1~6弾環境編)

 デュエル・マスターズ プレイス(デュエプレ)もリリースから長い年月が経ちました。リリース初期から現在に至るまでこのゲームを愛好しているというプレイヤーは既にかなり少数派になっているでしょうし、過去に疎いプレイヤーも多くなっていると思われます。

 本記事では、デュエプレで発生したトラブルやのちに語り継がれる印象的な出来事、昔と今の違いなどについて触れていきたいと思います。





はじめに

 基本的に、スマホアプリに不具合は付き物だと筆者は思っています。

 本記事ではデュエプレ運営陣の「やらかし」に焦点を当てることが多くなりますが、もとより不具合や失策を全くゼロにするのは不可能なので、それをもって「運営は無能だ」などと言うのは、あまり適切ではないと筆者は考えます。

 ただ、その内容や頻度によっては非難を免れなくなるのも事実であり、その辺りの判断は読者の皆様に委ねたいところであります。

(なお、いかにも続編がありそうな記事名でありますが、続編作成の予定はありませんので、悪しからずご了承ください)



1弾環境

ギガメンテ

 2019年12月18日12:00、晴れて「デュエル・マスターズ プレイス」がこの世に生を授けられました。多くのプレイヤーがこの時を待ちわびていましたが、アクセス集中により14:30に突如メンテナンスに突入。21:30にメンテナンスは開けるものの、その僅か20分後に再度メンテナンスに突入。

 その後もメンテナンス延長や緊急メンテナンスを繰り返し、ユーザー間では《ギガメンテ》の画像が大流行しました。

 記念すべき初のシーズン「ボルメテウスカップ」において、開催期間14日のうちメンテナンスが無かった日は8日のみ。公式Twitterはメンテナンス報告Botと化し、多くのユーザーに困惑を生じさせながら、デュエプレは次のシーズンへ移行していきます。

親の顔より見たヤツ。のちに第8弾EXで調整のうえ収録された
当時のメンテナンスタイムテーブル。
(当時の公式Twitterより筆者作成、色の濃い箇所はメンテ延長)
こうしてみると意外と少ない?



2020年の年明け

 ギガメンテ騒動を乗り越えて次のシーズンへと歩みを進めたデュエプレ。2020年の年明けとともに、ユーザーに「おみくじパック」の配布と「お正月ログインボーナス」の実施を行いました。

 しかし、それがショボすぎやしないかとユーザーからは不満の声。
 初期のデュエプレについて、「配布が少なすぎた」という指摘が現在視点からなされることがよくありますが、特にこのお正月の配布のシブさはその中でも代表的なエピソードとして語り草になっています。

嬉しいは嬉しいけども、ね……。2021年はSR1枚とワンランク豪華になりました
めっちゃ《クック・ポロン》推してくる。
実質的な配布はパック約2.3個分だけ


 また、新年早々アプリ内のお知らせで斬新なエラーを発生させ、一部ユーザーの失笑を買ってしまいました。

なかなかにイノヴェイティヴな「あけましておめでとうございます」




2弾環境

PLAYHERA CUP 不正事件

 かのユーザーは、こう語りました。

「そういう悪あがきよくないよ?」

と――。


 何かとドタバタしたデュエプレも、1弾環境自体は強すぎるデッキもなく、様々なカードに活躍の可能性があった環境として概ね好評を得、2弾環境へ進んでいきます。


 この頃はまだ公式大会のコの字もありませんでしたが、ここである一大イベントが開かれます。デュエプレ初の公式オンライン大会「PLAYHERA CUP」です。定員256名に対しエントリー数が倍率25倍超の約6500人となるなど、ユーザーの関心も非常に高まりました。

 開催日は2020年3月29日。「PLAYHERA」というプラットフォームを用い、参加者同士での対戦後、勝敗を報告するというシステムで執り行われました。


 しかし、この方式には悪意を持ったプレイヤーへの対抗手段が無いという大きな問題点がありました。この弱点が、とあるプレイヤー(以下A氏)に突かれることになります。


 当日のトーナメント戦。A氏は途中で敗退しますが、にも関わらず対戦後勝利を宣言。当然A氏とその対戦相手では勝敗の主張が食い違いますが、A氏の対戦相手も自身が勝ったことを証明するすべがありません。

 現在であればアプリ内の対戦記録やリプレイを勝敗の根拠にできますが、同時のデュエプレにはそうした機能はありませんでした。唯一、対戦終了時の画面であればリプレイを見ることはできましたが、一度その画面を離れるとそれももう不可能になります。


 結果、大会運営が下した裁定は「再試合」。A氏はこの不正を2回にわたって行い、対戦相手に冒頭に示したような暴言を吐きながら決勝まで進出、準優勝となりました。

 さすがにこのような蛮行が許されるわけもなく、PLAYHERAの調査により後日不正が判明。A氏は失格となり準優勝の記録も剥奪されました。

 ただ、A氏の不正行為で敗退を強いられたプレイヤーへの補償は特に無く、一連の対応には少なくないユーザーから苦言が呈されました。


 この騒動では運営の不備が目立ちましたが、のちのバトルアリーナ等の大会ではこうしたトラブルは起こっていません。この経験が後に活かされたと言えるのが救いでしょうか。



カイト先生大ブーイング

 前述のように、初期のデュエプレは配布が非常に少なく、ちょっとしたイベントでの報酬も大事でした。
 そうしたちょっとしたイベントにあたるのが「教えて!カイト先生!」(4月2 - 8日)。指定されたミッションをクリアすれば報酬が貰えるというイベントがありましたが、そのミッションがマズかった。

 当時のプレイヤーにも、「ランクマッチは真剣勝負の場である」という認識は強くありました。当然自分の使いたいデッキで勝負したいところですが、このイベントでは「ランクマッチで○文明を入れたデッキを使用して20勝する」というミッションが与えられたため、自分の使いたくないデッキも使わざるを得ないという弊害が生じたのです。

 イベント期間も1週間だけと短く、この難局をどうしたものかと多くのプレイヤーが苦悩。
 【赤青リーフ】に《デーモン・ハンド》や《ナチュラル・トラップ》を1枚挿しするといった、苦肉の策でランクマッチに臨むプレイヤーも当時散見されました。

 ユーザーの不満の声も目立ちましたが、しかし今見るとそれ以前にミッションの報酬のショボさも際立ちますね……。運営陣も若干反省したのか、類似のミッションが課されることはその後ありませんでした。




3弾環境

ブリザードマスターズ、到来

 第3弾では多色カードが登場。満を持して登場した《無双竜機ボルバルザーク》をはじめ、強力なカードが多数収録されました。

 ただ、その中で大問題児となったのが《ダイヤモンド・ブリザード》。ランクマッチで尋常でない凶悪さを見せつけ、それまでのデュエプレとは一線を画す何かに全プレイヤーが震撼しました。

バケモンとしか申し上げようがない

 今までに収録された全てのカードの中で最も強いと言われても納得の1枚で、デュエマYouTuber間でも「もし現代デュエマにデュエプレ版《ブリザード》が来たら」という動画が流行。
 相性の良いカードが多数あることも手伝って、当時の紙デュエマでもトップティアに絡む性能であることが示されました。


 ――少し話がそれましたが、結果、デュエプレの環境は「ブリザードか、ブリザードのメタデッキか」という世紀末のような状況となり、運営も調査に着手。
 初の効果変更(ナーフ)が実施され、墓地からの回収効果は剥奪されることになりました。

 収録からナーフまでの期間は僅か14日。これは現在も収録から規制までの最短記録です。


 この一連の出来事については、今もなお謎が残ります。

 《ボルバルザーク》ものちにDP殿堂が施行されることになりますが(後述)、こちらは「10ターン」というタイムリミットの重さがどれくらいなのか、環境でどれくらいの立ち位置になるのかはやってみないと分からない部分があります。
 《ボルバルザーク》の威信にかけて弱いカードにするわけにもいかず、結果強すぎるカードになったのは一定の理解ができます。


 しかし、《ブリザード》はそうではありません。3ターン目にリソース回復しながらパワー5000のクリーチャーが殴ってくるというだけで十分強かった当時の環境。そのクリーチャーが0マナやマイナスのマナで出てくるのが当たり前で、更には大量のマナブーストすら可能というのは、誰がどう見ても異常なスペックでした。

当時の《ブリザード》のヤバさの一例。
お相手は6ターン目にして13マナで、山札も残り5枚だけ。
さすがにこれは極端な例ですが、これに近い状況になることはよくありました。

 それまでの「デュエプレ」とはあまりにかけ離れたカードの登場。「強い弱い」とか「強すぎるかどうか」とか論じるよりも先に、ただただ呆然とした人が多かったのではないかと思います。


 《ボルバルザーク》と違って、《ブリザード》は使った瞬間に強さが分かるカードでした。

 《ボルバルザーク》が胃袋に収めた時に初めてヤバさが分かるカードだとしたら、《ブリザード》は口に入れた瞬間ヤバいと分かるカードなのです。

 第1弾・第2弾で入念なバランス調整をしてきた運営が繰り出すカードとは思えないスペックの異質さで、なぜこうなったのかはようとして知れないままです。


 一説には、「こういう時はナーフや調整があるよ」とプレイヤーに伝えるために運営がわざと強すぎるカードを作ったのではないか、とも言われます。

 この説はなんだか都市伝説とか陰謀論めいている部分があるので筆者はあまり好きではないのですが、ただそう考えざるを得ないほどに異常なスペックだったというのは共感できます。



マスター帯月初Bot狩り騒動

 《ブリザード》の衝撃覚めやらぬまま始まった、2020年5月の「ボルバルザークカップ」。既に《ブリザード》が5月7日にナーフされることは発表されており、執行を待つ身の《ブリザード》の姿を眺めながらシーズンはスタートしました。

 ただ、ここで異常事態が発生しました。シーズンが始まって12時間かそこらでレート1700に到達するプレイヤー(以下B氏)が現れたのです。まだマスター帯には数人のプレイヤーしかいないにも関わらずこの数字。何か不正を行ったとしか思えません。


 なぜそんな異常なレートを叩き出せたのか。原因はデュエプレの仕様にあります。

 デュエプレのランクマッチには「Bot」が存在しました。対戦相手がいない時などにマッチングし、
・単色の弱いデッキしか使ってこない
・勝ってもレートが変動しない
などの特徴がありました。

 しかしながら、このシーズンはなぜかBotに勝ってもレーティングが上がるという仕様になっていました。結果、月初のほとんど人がいないマスター帯でBotを狩り続け、レート1700にまで達してしまったのです。


 この事態について、B氏を批判する声もありました。不正行為であるとしてアカウント停止等を望む声も少なくなかったように思います。

 ただ、Bot狩りのために何か特殊な操作が必要なのであれば不正行為と言えるかもしれませんが、「ランクマッチに潜る」というのはごく自然な行為です。それでレーティングが上がる分には、不正行為とは言えないのではないか、と筆者は考えます。
 また、B氏は自身のプロフィール欄で何が起こったかを他のユーザーに説明し、運営に問い合わせを行ったことを伝えてたりもしていました。


 結局、本件についてはその後運営から何かの表明があったり、B氏に罰則が加えられたりすることもなく、平穏に進んでいきました。B氏が1900くらいまでレートを上げていれば運営も何か対応を講じたはずですが、1700くらいならまあほっといてもいいか、といったところだったのでしょうか。

 B氏もしばらく1位を維持した後シーズン終盤にレートを溶かし、その後どうなったのかは定かではありません。

 B氏にとっても、予期せぬ形でレートを盛り、長期のステイを余儀なくされた本件は、あまり良い思い出にはならなかったのではないかと想像します。


 個人的には、B氏個人に対しては批判的な気持ちはあまりありません。
 連勝ボーナスの無いこの時代、シーズン序盤にマスター帯に到達できるプレイヤーは必然的に高い実力を持っていますし、先述の通り、レーティングを上げるためにランクマッチに潜るという行為そのものは正当ですからね。

 ただ、当たり前ですが同様の事態は二度と起こってほしくないところです。



プラチナ帯リタイア祭り騒動

 Bot狩り騒動の記憶も薄れつつあるなか始まった、2020年6月の「ガルザークカップ」。さすがにマスター帯Bot狩りの対策はなされていましたが、新たな問題が発生しました。プラチナ帯でリタイア合戦が勃発したのです。


 ……ちょっと何言ってるか分からないですね。順を追って説明していきましょう。

 デュエプレのプラチナ帯、あるいはマスター帯や他のランク帯でも、なるべく成績が近い相手と自動でマッチングするようになっています。プラチナ4の☆3なら、それに近い成績の相手となるべく当たるように、といった具合です。

 なら、とにかく負けまくったらどうなるでしょうか。負けまくれば、当然プラチナ5☆1に落ちます。そこでもさらに負け続ければ、「同じくらい負けている人」がだんだん少なくなります。それを積み重ねることで、「ほとんど誰ともマッチングできない成績」にたどり着くのが「リタイア祭り」の狙いでした。

 他のプレイヤーとマッチングできなくなれば、Botとだけ当たります。このBotに勝利し続けることで楽にマスター帯に到達しよう、というのが一見無意味に思える敗退行為の目的なのでした。
 プラチナ帯であれば、Botに勝つことでも☆がゲットできます。マスター帯Bot狩りは対策済みでしたが、プラチナ帯のBot狩りは対策できていなかったようです。

 この結果、プラチナ5☆1帯の一部ではどちらが先にリタイアできるかのリタイア速度バトルが起きていたとかいないとか。『ONE OUTS』の反則合戦さながらですね。


 この騒動、「故意に負け続ける」というのは通常あり得ない操作なので、「意図的に不具合を利用している」と言えなくもありません。なので、先述のBot狩りよりは遥かに罪は重いと個人的には思っています。
 Bot狩りで20連勝の称号「勝利の覚醒者」を手にしたプレイヤーがいたのもなんとも不快でしたね。

 ちなみに、本件について運営がどう対処したかというと、特に何もありませんでした。この頃の運営スタンスは「触らぬ神に祟りなし」だったのかもしれません。ほどなくして仕様は改善されたようなので、その点はありがたいですが。



4弾環境

 数多の混乱を招いた前環境とは打って変わって、4弾環境では特筆するような事件はありませんでした(筆者の記憶する限り)。平和が一番。

 環境には新たに【天門】や【ウェーブストライカー】が進出。イベントとしては、第2回ボスバトルや、初のSPルールマッチ「スタートチャージ10」などが開催されました。特に後者は好評を博していたように思います。



5弾環境

第1回バトルアリーナ

 2020年9月、記念すべき「第1回バトルアリーナ」が開催されました。PLAYHERA CUPの経験もあってか大規模なトラブルは起こりませんでしたが、デュエプレアプリ・公式サイト・Discordの3箇所を行き来する進行方法はやや煩雑で、小規模なトラブルは何件か起きていたようです。
(現在では改善されてるのかな?)


 それはさておき、第1回バトルアリーナの決勝進出デッキはというと……。

5色ヘブンズ・ゲート 5名
光自然スノーフェアリー 2名
水光闇ウェーブストライカー 1名

 第5弾一推しの「進化V」獣の使用者が一人もいません。これには運営陣も頭を抱えたでしょう。

 大会はベスト4を【天門】が独占する展開となり、優勝したボルサリーノ@海軍大将さんの使用デッキには、第5弾のカードはゼロ。大会自体は高度な駆け引きや【天門】ミラーマッチの白熱した戦いで大いに盛り上がりましたが、第5弾のカードパワー不足が浮き彫りになった形でもありました。

ボルサリーノ@海軍大将さんの優勝デッキ
バトルアリーナの使用デッキ分布
デス・フェニックスの孤軍奮闘が際立つ


 それまでのデュエプレでは、新弾で出たカードは必ず環境に絡んでいました。2弾環境の【リーフ】、3弾環境の【ブリザード】や【ボルバルザーク】、4弾環境の【ウェーブストライカー】や【天門】等々。

 第5弾のカードは《暗黒王デス・フェニックス》がかろうじて環境に絡みましたが、それもTier1と言えるかは微妙で、その他のカードはなかなか活躍できない状況が続きます。

 これを受け、デュエプレ運営陣は初の大規模なカード効果調整に臨むこととなります。



さらばボルバル、さらば閉塞感

 現状を打破すべく、9月17日に環境調整が入ります。《ブリザード》の効果調整以来で、ここまで大規模な調整はデュエプレでは初めてでした。調整点は3つに分けられます。

①    《無双竜機ボルバルザーク》のDP殿堂入り

 3弾環境以降、常に最強のフィニッシャーとして活躍していた《ボルバルザーク》がDP殿堂入り、1枚しか使えなくなりました。この帰結に反対するユーザーは当時もほとんどおらず、「デュエプレ版ボルバルマスターズ」に終止符が打たれた形です。


 DP殿堂入りの要因は、やはりその汎用性の高さでしょう。発表された使用率は41.9%でしたが、これはコントロールデッキのほとんどに《ボルバルザーク》が入っていた、と捉えて問題ありません。

 デュエプレの仕様上、《ボルバルザーク》を1枚マナに置けば《ボルバルザーク》は召喚できるため、「タッチボルバル」のような構築が容易です。

 実際、当時Tier1の【青黒ボルバル】では緑マナになるのは《ボルバルザーク》のみの構築が主流でしたし、極端な例では【ドロマーイニシエート】に《ボルバルザーク》をタッチで4枚入れる、なんてことも可能でした。

 カードパワーの高さからどんなデッキにも無理やりねじ込むことができ、その代償として他のカードが活躍する機会を奪っていました。そう考えると、DP殿堂入りはやむを得なかったと言えます。


 《ボルバルザーク》については、「紙のボルバルとデュエプレのボルバル、どっちの方が強かったのか」という疑問も残りました。

 ターン制限こそ加えられたものの、特殊敗北効果が無くなったことで雑に盤面に並べることが可能になりました。リーサルを組むこともあれば、盤面を整えるために召喚されることもあったし、EXターンのドローを目的にした「ハルカスボルバル」もしばしば目にしました。

 紙で暴れたカードより強いカードを作ってしまったのだとしたら、規制せざるを得ないのは当然となります。


 紙では見せなかった、新たな側面を披露したデュエプレ版《ボルバルザーク》。5か月ほど暴れたのちにDP殿堂入りとなりましたが、その一方で彼を激しく嫌悪するプレイヤーはそれほどおらず、好きだったプレイヤーも多かったように記憶しています。


②    一部五大王のアッパー

 五大王2体に効果調整が入り、幾分の強化が施されました。

 環境で影の薄かったカードたちであり、この調整も妥当と言えるでしょう。初めてカードの強化(アッパー)が施された事例でもあります。

 なお、《ペガサス》はその後なかなかの活躍をしましたが、《ソウル・フェニックス》の姿を見た者はいませんでした。


③    ハンデスカードのナーフ

ゲームの閉塞感を発生させる要因となっておりました。

 ――デュエプレ史に燦然と輝く名文句(迷文句)です。

 閉塞感を発生させているとされたのは、《ゴースト・タッチ》と《汽車男》。どちらもランダムハンデスを剥奪されることになります。

 なぜ「閉塞感を発生させている」などという謂れを受けねばならないのか。明確な根拠が示されておらず、ただの因縁に当たるのではないか――。
 彼らには、弁護や反論の機会は与えられなかったようです。この件については、少し深掘りしてみましょう。


 当時、ユーザー間では少なくない反発が生まれました。

「『閉塞感』の意味が分からない」
「先攻ゲーが加速する」
「相手のぶん回りへの抑止力が無くなる」
「コントロールデッキが存続できなくなる」
「俺たちのハンデスを返せ」
等々……。

 このナーフは果たして正当なものだったのか。当時の筆者は、「ハンデスをケアするプレイングが不要になり、それまで必要だった技術が不要になるから反対寄り」と考えていました。

 「先攻ぶん回りゲーが加速する」というのも実際その通りで、これ以降のデュエプレは序盤に相手の動きを阻害するのは困難な環境が続き、先攻の優位性はほとんど不動のものになりました。コントロールデッキはハンデスを武器にすることができなくなり、不遇の時期に突入します。こうしてみると、良くないことばかりのようにも思えます。

 しかし、その一方で「ナーフ前の5弾環境とナーフ後、どちらの方が好きだったか」と言うと、おそらく当時を知るプレイヤーの多くはナーフ後と答えるはずです。これは何故でしょうか。


 理由はとてもシンプルで、ナーフ後の環境がとても楽しかったからです。環境で戦えるデッキの幅が広がり、オリジナルデッキで結果を残すプレイヤーも数多くいました。どのデッキがTier1でどのデッキがTier2、という線引きも難しく、プレイヤー個々のスキルが試される環境になったのです。

 こうなった理由として、やはりハンデスナーフの影響はとても大きかったでしょう。「序盤にやりたいことができれば強いデッキ」がハンデスの妨害を受けなくなり、デッキ選択の幅が飛躍的に広がったのです。この点については、ハンデスナーフは英断だったと筆者は考えます。


 ただ、その後もハンデスナーフの是非については長らく分かれたままでした。コントロールデッキ不遇の時代は長かったですし、「序盤やりたいことができれば強いデッキ」が、「序盤やりたいことができれば勝つデッキ」にまで強くなることも、その後の環境でしばしばあったからです。

 半面、こうした主張はデュエプレを真剣にプレイしている、いわゆるガチ勢の一部からなされることが多く、それよりもっとカジュアル寄りであったり、或いは単にハンデスが嫌いなプレイヤーの感性も、デュエプレというゲームにおいては無視できません。


 ナーフや規制の是非について議論が巻き起こったことは過去に何度もあるでしょうが、その最たる例は今でもなおこの「ハンデスナーフ」なのではないかと思います。

 あれからもうすぐ2年。今となっては「タッチ汽車を返してほしい」と訴えるプレイヤーも少ないかもしれませんが、現在の皆さんは、このナーフについてどういう評価を下すでしょうか。


 余談ですが、これらの環境調整やその他の新イベント等のメンテナンスは不具合の発生により終了まで足掛け3日を要し、ユーザーにはお詫びとして計50パックが配布されました。規制・ナーフされたカードの怨念だったのかもしれません。 


(2023年6月追記:
 この記事が書かれてから5か月ほど経った、2022年12月16日。《ゴースト・タッチ》及び《汽車男》は、2年以上の懲役を経たのちに生来の姿を取り戻すことに成功し、晴れて自由の身になりました。
 このあたりは、かつてよりカードパワー全体がインフレしており、多少のランダムハンデスで機能不全に陥るようなデッキも少なくなったことが理由として挙げられそうです。
 長い獄中生活を経てシャバに帰ってきた彼らに幸福しあわせがもたらされることを願いましょう。)



6弾環境

ミラクルサーチャーバグ

 最後に取り上げるのが、一大騒動となった「ミラクルサーチャーバグ」。特定のカードがランクマッチに与えた実害としては過去最大級で、14弾環境で発生した「超次元バグ」に次ぐ重大な不具合だったと言えます。


 騒動が発生したのは2020年10月15 - 19日。第6弾が収録されてから5日間です。

 その主役になったのは《ミラクル・サーチャー》。第1弾で収録されたカードが、ここに来て事件を引き起こします。

ひっそり暮らしていたカードだったのに……


 発生するバグは、「《サーチャー》を打って相手のシールドを割るとリタイア以外進行不能になる」というもの。

  相手のバトルゾーンに《薫風妖精コートニー》がいる時に《悪魔神ドルバロム》を召喚した場合も同じ不具合が発生し、こちらは「コートニーバグ」「コートニードルバロムバグ」などと呼ばれました。


 なぜ突然こうしたバグが発生したのかは不明ですが、発覚後も数日間放置されたためランクマッチは大混乱。

 《サーチャー》で進行不能な状況を生み、相手のリタイアを誘ってレーティングを盛ろうとするプレイヤーがランクマッチに続出。ランクマッチに潜ること自体が非常にリスキーな状況がしばらく続くこととなりました。


 この不具合を意図的に利用したプレイヤーがいたのは明らかでしたが、その後処罰されたプレイヤーはいません。単に《サーチャー》を使いたかっただけのプレイヤーのことを考えると対応は難しかったのでしょうが、「超次元バグ」時の対処に鑑みれば、一定の条件を満たしたプレイヤーには処罰を加える等の対応もあり得たのではないかと感じます。

 ちなみに、この「ミラクルサーチャーバグ」は使った側も進行不能になるため、「勝ち確」にはなりません。バグ利用者に屈さず、数十分や数時間、あるいはそれ以上粘って白星を勝ち取ったプレイヤーも当時はいました。何とも恐ろしい不具合ですね。


 なお、これはこの記事を書く時に気付いたのですが、デュエプレ運営が不具合について公表したのは10月16日19:07です。一方、それより前にこの不具合に触れる一般ユーザーのツイートは10件に満たず、拡散された形跡もほとんどありませんでした(筆者調べ)。

 つまり、運営が不具合に気付いた時点ですぐに対応していれば、あまり大きな騒動にはならなかった可能性が高そうです。運営の報告が不具合を拡散する形となり、悪用するプレイヤーを生む引き金になったのは皮肉な話です。

 土日(17 - 18日)を跨いでのメンテナンスで構わないと判断されたのは、ここまで不具合が悪用されるのは想定外だったからなのかもしれません。ただ、新弾リリースを木曜日に行うことのリスクの大きさはこの後も度々指摘されることになります。



UIの変化その他

 ここからは、「事件簿」という記事の主題とは少々離れますが、今と昔のUIや制度の違いなどについて触れていきます。カードパワーが徐々に高くなっていくのと同じように、サービスの質なども向上していきました。

 正確な変更時期が不明なものもありますので、情報をお持ちの方がいましたらお教えいただけると幸いです。

アプリの重さケア

 今となってはあまり想像が付かないかもしれませんが、初期のデュエプレはアプリを1~2時間くらい使っていると重くなってプレイに支障が出るようになっていました。そのため、長時間プレイするには定期的にアプリを再起動する必要があったのです。

 これが特に重要になったのは【ブリザード】が現れてからで、ハンマー女の妨害を乗り越えて1ターンに進化速攻×2を決めるには、アプリの軽さが不可欠でした。当時のブリザード使いは、常にアプリの重さに気を配りながらプレイしなければならなかったのです。

 これがいつ改善されたのかは記憶が定かではありませんが、4弾環境辺りで一気に改善されたような気がします。

私のレートはいくつ?

 当初のデュエプレでは、ランキングTOP100に掲載されていない限り、自分のレーティングを気軽に確認する方法がありませんでした。ランクマッチの対戦開始時のみ確認できましたが、「今、レートいくつだっけ?」と思ったらランクマッチで対戦する必要があったのです。

 なぜそのような仕様だったのかは不明ですが、さすがに不便だと判断されたのか、第2弾リリースと同時にレーティングが明記されるようになりました。

懐かしのホーム画面。1弾環境の頃は赤枠部分のレーティング表記が無く、他の場所でも確認ができなかった

リプレイ機能・対戦ログ機能

 初期のデュエプレでは、一度対戦画面を離れるとその試合の記録は一切確認できませんでした。今日の戦績はどうだったか、とか、誰と対戦したか、とかを確認することもできなかったのです。これが前述の「PLAYHERA CUP 不正事件」に繋がります。

 これらの機能が追加されたのは、リプレイ機能は3弾環境、対戦ログ機能は6弾環境辺りだったでしょうか。

連勝ボーナス・ジャンプアップ

 ランクマッチがNDとADの2つに分かれると同時に、仕様にも大きな変更がなされました。詳細は公式サイトの説明に委ねますが、最も大きな変更点はプラチナ帯での連勝ボーナス追加でしょうか。これによりマスター帯に昇格するのがだいぶ楽になりました。

 それまでのシステムでは、プラチナからマスターに昇格する人が全体から20以上の白星を奪っていく一方で、供給はプラチナ5☆1プレイヤーの敗北かマスター帯からの勝利に限られていました。これは健全なシステムであったとは言い難く、現在の方がシステムとしては優れていると思います。

デイリーミッション

 昔は配布が渋かった、とこの記事でも何度か触れていますが、デイリーミッションも例に漏れず、初期は1日1つのミッションのみ、30~70 G しか得られませんでした。

 さすがに渋すぎると判断されたのか、のちに現在と同じような1日3つのミッションに変更されています。

 下は懐かしの1日3勝ボーナス(画面右)。

20Gは大事()

 当時はこれを取るのがランクマッチのひとつのモチベーションになったりもしていましたが、7弾環境での「ウィークリーミッション」の追加と入れ替わる形でひっそりと姿を消しました。

顔面爆発機能

 これは第3弾リリース時に加えられた変更です。

 それまでのデュエプレでは、リタイアによって試合が決着した場合は特にエフェクトなく「YOU WIN/LOSE」のモーションが入っていましたが、これ以降はリタイア時も敗者のアイコンが爆発するようになりました。

 当時のささぼーさんの反応はこんな感じ。

 意外とインパクトのあった仕様変更で、当時のTwitterでは「こんなところを修正するよりもっとやるべきことがあるのでは」とやや辛辣な意見が目立った記憶がありますが、今となってはこの仕様の方が自然ですね。



おわりに

 記事本文はここまで。思っていたより長い記事になってしまいましたが、こうして見ると色々なことがありましたね。ただ、それを乗り越えて2年半以上アプリが続いているのは運営陣の努力の賜物と言うべきでしょう。

 14弾環境では、「超次元バグ」と呼ばれる大事件が起きました。このような事態を招いたことは批判されるべきですが、一方で事件後はユーザーに対してきちんと説明を行い、概ね適切な処置を執ることができた点はユーザーから評価されていたように思います。この辺りは、過去の経験が活きていたのではないでしょうか。

 この「超次元バグ」についても、一連の騒動の原因をしっかりと究明し、今後に繋げてくれることでしょう。

 デュエプレの未来は明るいはずです。多分。


 閑話休題。

 本記事は、当時を知る人に昔のことを思い出してもらったり、或いは当時に詳しくない人にこんなことがあったと伝えたりできれば、と思い筆を執ったものです。

 少しでも懐かしみを感じてもらえたり、新たな発見をしてもらえたりしたのであれば、筆者冥利に尽きます。長い記事を最後まで読んでいただきありがとうございました。

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