Story of the Guardian Gem Episode 1-3 ユニコーンの石に宿る精霊③

yucca*angel

2024年1月29日 00:12

モスアゲートのユニコーンに宿っている
林檎の樹の精霊。
彼女の名前は、ディア。

ディアはうちにやって来た時、元気がありませんでした。

それもそのはず。
彼女の過去を辿ってみると、視えてきたのは…。

伐採によって失われていく森林。
そこに宿っていた精霊や妖精たちは居場所を失い、
力を失って消滅していく存在を幾度も見ては、
心を痛めてきました。

遂には、
ディア自身が宿っていた林檎の樹も
伐採されてしまったのです。

彼女は、土に埋もれたわずかに残った木の根っこの部分に、
かろうじてとどまることができました。
力は失われ、
もう地表へと木を伸ばす力など残っていません。

ディアは光に当たることのない地中深くにとどまるしかなかったのです。

ほんの少し前までは、大きく手足を伸ばして、
太陽の光を浴びていたというのに。

それからどれほどの時間が流れたのか。
ディア自身にももうわからないくらいの時が過ぎ。

あるとき、彼女は唐突に、強い力に揺り動かされ、
気がつけば、明るい光の中にいました。

人の手によって掘り出されたのです。
ディアは、長い年月の間に石となっていたのです。

そのうちに、今度は人の手により形が変えられ、
自分を取り巻く環境がどんどん変わっていく中で、
今度は石の一部が折れてしまいました。

削られたことも折れたことも痛みはなくとも、
ディアの心は痛みました。

遠い昔、過ぎた日の、
自らの林檎の樹が切り倒されてしまった時の
悲しみが重なって、
失望感と挫折感を感じずにはいられなかったのです。