フルリタSS 「ぐちゃぐちゃの色」
「ねえフルミネ、明日の目的地は?」
「"助手として"、あなたの使命を遂行する手伝いをするのが私の仕事」
フルミネ・エーレという主人に出会い、だいぶ月日が経った。
かつての世界では、『リタ・シンフィールド』という商品に値が付き、金と所有権が定期的にやり取りされていた。ゆえに、私の主人は数ヶ月に1回、時として数週間に1回変わっていくのが普通だった。
そして、それが当たり前の日常に過ぎなかった。
だが、たどり着いたここでは人身売買というものはあまり活発ではなく、フルミネ・エーレもそれに手を染めている様子もない。
最低でも向こう数年は彼女の下で過ごすことになる。
不思議だ。
私自身の考えなど、この主従関係に深く影響を及ぼすべきではない。
だが、愛着の情が我々2人の間で『起こっている』のだ。
優秀な武器としてでなく。使い勝手のいい娼婦でもなく。
人間として、私を見ている。
なぜだ?なぜフルミネ・エーレはそんな風に私を見る?
外での身だしなみを整えるために、とフルミネから使用許可の下りている姿見で自分を映した。
何か、色が混ざり込んでいる。
なんの、色だ?
私は、フルミネ・エーレを「どう思っている?」
ステラバトルで戦うのはフルミネの方。私は、フラワーガーデンで武器を振るって戦うことはできない。
すぐ迷子になるフルミネを導き、目的地まで辿り着かせるガイド役はできても、この手でロアテラの脅威を叩き切ることはできない。
私はシースで、フルミネの振るう武器だから。
武器を振るう腕は、フルミネのものなのだ。
道具であることに、満足できなくなっている自分がいる。私は、フルミネの何になりたい?
フルミネを主人として仰いで、それだけじゃダメなのか。
わたしは、フルミネのことが、すき?
異常事態でもないのに、拍動が強くなる。
こんなの、混乱した人間そのものじゃないか。
背後を取られたら、すぐ殺される。
姿見に自分を写す。
困惑と、幸福と、羞恥の色が、ぐちゃぐちゃになって私を取り囲んでいる。
見ていられなくて、慌ててゆるめのトレーナーから外行きのパーカーへ着替えた。
自分の戸惑いに気を取られていては、また主人が迷子でどこかへ行ってしまう。
せめて、ガイド役は務めなければ。
私は、フルミネ・エーレにとっては"助手"らしいから。
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