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『Create』

はじめに

この記事はこちらのパスケース↓製作時の自分用思い出記録です。

覚書のつもりでもあるのでここで何した程度のことは書いてますし、どこかにいるかもしれない後学のためになればと3ミリくらいは思ってもいますが、いわゆる「ちゃんとした手順解説」ではないので、説明書としては不適当です。

作り手の感情を書いたものはそもそもマニュアルではないのだ

それでもいいぜ〜な方はどうぞお進みください。


発端

事は2021年11月、【UT×星野源】に遡ります。わたしはこれのニセさんトートにいたく心を惹かれてお迎えすることを決意したのですが、家が辺鄙なところにあるので徒歩で行くにはチョットトオイUNIQLOしかない上、そのお店もいわゆる基幹店なのかが分かりませんでした。基幹店でなかったとしたら、並んでても入荷が少ないかもしれない……などと思ったわたしは、「だったら最初から通販したろ〜」と、忘れもしない11月5日、朝から布団の中から張り付いてタブレットで購入手続きを済ませ、達成感と共に二度寝を貪りました。

ということで11月20日、こちらが我が家にも届きます。

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例のコラボダンボール

捨てるのはしのびないし何かに使いたいとは届く前から思っていたものの、ダンボールを使って作れるものといえば収納箱系くらいしか思い浮かばず、しかし家は「収納箱を収納する場所がない」みたいな状態で、まあぶっちゃけ使えない。ついでに言うと入れるものも思い浮かばなかった。

作るなら自分が使うものを、がポリシーなわたしは、使えないと分かっているものには作るエネルギーも湧きません。だからどうしたものかな〜と2日くらい箱のまま置いていたら、星野さんファンの方々がこのダンボールをリメイクしてらっしゃるムーブメントがあることを発見したので、ヒントくれ〜!とタグを拝見。

すると、その中に【ミシンで縫ってペンケース作りました!】というツイートがあることに気がつきます。

原本こちら。すごくない……????

わたし「ダンボールって縫えるんだ!?!?」

驚きと共に、これが全てのはじまりです。


縫えるなら

縫製できるってことは、布で作るようなものが作れるということです。であれば、パスケースがほしいなぁ、と思いました。

なぜならそれまで使ってたパスケースがこの有様だったから。

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合皮って加水分解されちゃうのが悲しいよね(enkuさんと出会ってから本革しか勝たんの民になった)

ということで、パスケース、9年振りに新しくなります!(9年も使われるなんて思ってもなかっただろうな、メーカーの方……と思いつつ)


構想

作るなら自分の希望をモリモリに詰め込めるので、以前のパスケースを使っている時に感じていた不満、ここまでボロボロになっても買い替えなかった理由などを指針にして希望を洗い出します。

で、出てきたのが『お札を折り曲げずに収納したい』『ナスカンで吊れる』『小銭入れはいらない』『握りやすいから厚みがほしい(折り畳みギミックはほしい)』でした。

そして、ダンボールの実物を見た時に『ニセさんとサイン部分は、何か操作しないと見えない場所に入れたいな』とも思ったので、それも希望として採用。

※堂々とファンですアピールができるほど肝が据わっていないチキンオタクなのと、単純にレア柄だからあんまり汚れないようにしたいなと思ったことによる

あとは材料が紙なので、希望というより製作の制約として『手が触れそうなところは必ず折り返す』(=断面を露出しない)も設けました。わたしは手がびっくり乾燥大臣で、冬ともなれば何もしてないのにいつのまにか切れてて流血沙汰になってることもしょっちゅうなので、その対策です。せっかくのゲンクシーが血塗れになったら笑えない。というかそれはもうホラー。

そんな感じで希望が洗い出せたら、設計に移ります。


設計

以前のパスケースを観察しながらまずはコピー紙で工作し、サイズなどを確認します。

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無駄にダミーICカードも作った(実物で確認すればいいのに)。


仮型紙を作る

デザインソフトとか持ってないパワポ芸人なので、パワポのスライドをA4に指定し、cm指定でパーツを描いて等倍印刷で出力して組み立てます。

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思うところをメモしつつサイズを微調整していきます。気付いた事全部型紙に書いちゃうスタイル。いちばん外側の部分だけフェルトを中に仕込んで丸みを持たせる予定だったので、型紙にフェルトも巻きこんでああだこうだ言ってました。

この頃はまだ内側に別のカード入れるスリーブを作りたいと思ってたので内側カードなるパーツがありますが、のちに消えます(後述する切り出しの時にニセさんが思いの外大きいと気づいて消えた)。


本型紙決定

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型紙が決まったら印刷して切り出します。ここからはちゃんとカッターと定規で真っ直ぐやります(それまではハサミで適当に切ってた)。

ちなみに、型紙に空けてある窓みたいなのは柄位置の確認のためのものです。

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↑こうなる※サイン部分を生かすために必須でした


ダンボール準備

設計図が出来たので今度は材料調達です。ダンボールの剥がし方はファンの方々のツイート、ならびにこちらの記事を参考にしました。

つまり、水で接着剤を溶かして1枚ずつ剥がして乾かす。

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↑収穫中の様子。試作テストや補強材に使うための余分や、アクセントになる色がほしいと思ったので、柄のないところやちょうど家にあったZOZOTOWNのダンボール(真っ黒)もいくつか収穫しています

参考記事にも日には当てずゆっくり乾かそうね、と書かれていますが、繊維学専攻(いちおう)のわたしとしてもここは焦っちゃいけないポイントだと理解していたので、北側の極寒部屋で暖房による乾燥状態+サーキュレーターで乾かしました。

水を吸うと繊維は膨張し、そして乾けば収縮しますが、乾く速度をなるべくゆっくりにする事で、膨張による影響を必要最低限に抑えます。熱かけると急に乾燥しちゃうし繊維自体も傷むしね。ウールの洗濯のコツとおんなじです。わあいどっちも天然繊維!(なんかちがう)


切り出し

型紙に沿って切ります。それだけです。シャーペンで補助線引きながらやるといいと思う。

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キッタヨー


パーツ組み立て

※組み立てしながら微調整していったので型紙と寸法変わったとかあるし、作業写真も全然撮ってないのであれがそれ

最終的にできたパーツはこんな感じです。

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・外側

の、まずは裏面。

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入れたフェルト芯の目隠しと折り曲げた時の“分散”を考え、サテン布で裏地を貼りました。端切れコーナーに偶然『創造』アー写を彷彿とさせる色があったんですよね、サンキュー手芸屋。

これでもレタッチを頑張ったのですが、元写真撮った時のアレがそれで写真では限界の再現。近い色はRGBでいうとこの#b4f8f8です(iOS端末の通常モード基準)。

閑話休題:分散ってなんぞ(ここでは辞書の意味通りに使ってないので)

外側パーツは厚さ4 mmくらいのフェルトを芯材に仕込んでいるので、表と裏で陸上トラックでいうところのコーナー差みたいなのが発生します。

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②の方が短い

これを畳んだ状態で固定するのであれば、単純に裏側を小さく作ればいいだけなのですが、今回は開閉するパスケースにしたいので、見栄えのためにも表と裏は同じ大きさで作りつつ、①と②の差をうまく解決してもらわなければなりません。具体的には、畳んだ時だけ①側がいい感じに伸びるか、もしくは②側にいい感じに小さくなってほしい。

当然ながら、紙(まして今メイン素材にしているダンボールなら余計に)はそんな都合よくいきません。まずそもそも伸縮性が皆無だから①を伸ばすのは無理だし、②側を小さくするアプローチを取ろうにも、折り畳んだらひとつどでかい折り目がついて見た目がぐちゃっとします。あと厚み4 mmのコーナー差を畳んだ紙ってのは体積的にも結構もたつくので、ユーザー満足度にも影響する可能性が高いです。綺麗に折り目を調教する技術があればその限りではないかもしれませんが、残念ながらわたしにはそんな高等技術はない。

一方、布にしてしまえば、紙のような強固な折り目はアイロンで熱でもかけない限りはつかないし、薄手の布ならもたつきもさほど気になりません。

ということで、薄くて柔らかさがあり、さらには皺にもなりづらいサテンを使用しました。ボール紙の折り返し部分だけはどうしようもないので目を瞑ります。(バイアステープとかで装飾すれば見栄えよくなるかも)

次に表側、カード入れと金具たち。

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パスケースとして肝腎要のカード入れは、まずセル板(穴の空いてる透明なやつ)の縁にダンボールを貼って端を折り込み、それをさらにボンドで本体に接着したのち縫い付けます。下の部分もボンドではくっつけていますが、後で縫う時にまとめて縫うので今は側面だけ。サインのギミックを作るために位置調整が命の次に重要な局面だったので、震えながらやってました。

参考にしたのはやはりこちらの方の記事。

レザークラフトと同じ縫い方すれば良いのか!と気づかせてくださった。だから糸はこの方も使っているビニモというやつで、わたしは5番。革の縫製に耐える強度を備えつつ蝋引きしないでいいからダンボールには最適なんだなとやってみて気付いたよね。

もうぢぇぃさんのおかげでできてますねこのパスケース。大変いい学びを頂きました、パイオニアでいてくださってありがとうございました。

あと、縫い針は今後やりたくなる気がするので革用のを買いましたが、太めの糸が通って分厚いのを縫っても折れなさそうな強度があるならなんでもいいと思う。

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ドロップハンドル↑は六角形(凹)ネジのものしか調達できなかったのでそれなんですが、つけるのに必要な六角棒スパナは何故か普通にうちにあった。なんだこの家。マイナスドライバーで締めれるタイプのもあるみたいです。

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開閉機構はマグネットホックというやつです。ツメを見えないところに隠したいので、凹のはこの時点でつけておきます。バネホック(スナップボタンみたいなやつ)よりもマグネットのが好きだな〜というのと、単純にバネホック用の打棒買う費用をケチりたかったという理由で選びましたが、この辺はもう好みかなと。

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↑バネホック。もっとでかくて硬いやつはジャンパーホックって言うんだって、初めて知った

なおバネホックの打棒はないがハトメ打つやつならうちにあった。誰もレザークラフトしないのに……?

こういうパーツを綺麗に埋め込むための穴を開ける道具(ポンチ空け)は流石になかったけど、相手は布(フェルトとサテン)と紙なので目打ちでゴリゴリ→ハサミで拡張でどうにかなります。しました。

・内側

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内側はうみのいきもの面をベースに、このような形に。

ニセさん部分には窓みたいなものをつけて、埃あまり目立たない(バック黒だから)&ニセさんが破れない(パーツ地味に細かいから)処置も施します。これは百均にあったスマホ防水用ソフトビニールケースを無慈悲に解体してゲット。曲がる部分と重なるので、黒枠に隠したビニールの右端は接着せず、曲げ伸ばしの時に遊びがきくようにしています。

なお内側パーツの長辺は、型紙をもとに切り出した大きさから、最終的に-10 mmくらいになりました。外側パーツと端と端を合わせて実際に畳んでみて、無理なく畳める大きさに調整したためなのですが、この微調整をするにはちょっと余白があった方が精神衛生に良いと思うから、たぶん型紙を作ったわたしはいい仕事をした。


合体

カード入れの側面を縫った時のように、ボンド仮接着→縫い止めの順で、横と下をくっつけます。そうするとこのパーツの隙間部分が札入れになる。札入れ爆誕!

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こういう

下側の接着箇所は見える縫い目のことも考えて最低限に留めましたが、ここを少なくするのは折り畳み時に無理な力がかかって歪むのを防ぐことにも役立ちます。下がちょっとでもくっついてりゃお札がすり抜けて落ちることもない(くっついてなくても摩擦力で挟めるくらいなので)。

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外側パーツと内側パーツでは曲がり方から違うので、別物として動けるようにしといた方がいろいろ安心です

パーツ自体がこの内径の差を鑑みた大きさになってるので、全部縫い付けるとまず端も揃わないんですけどね。このへんは革の折り財布の考え方をそのまま使ってます。

縫う作業は根気との戦いで、目打ちで均等に穴空けるのが特に大変だったので、レザークラフトできる屈強なミシン欲しいなって一瞬思いました。つまりレザー作家はダンボール小物作家にもなれる。戦うべき敵の姿もだいたい一緒!

最後にマグネットホックの凸側をつけて(金属曲げにめちゃくちゃ手こずったので付近の表面はボロボロになった)、ドロップハンドルにナスカンをつけたら完成です。

\ハッピー✌️😎✌️/

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↑ナスカンあるから首からも下げられるなーと思ってネックストラップにつけてみた写真。札入れとして、身軽に行きたいライブハウス公演の時にこのセットで下げてもいいかなとか思いつつ

ナスカンは基本、鞄に吊ったりベルト用の穴に吊ったりする用です。レディース服あるある「ポケットない」「あっても小さくて入らない or 抜け落ちる」、そこから派生するわたし個人の問題「でも鞄に入れるとリュックなので出すの面倒 or 荷物多すぎてどっか行く」の対処策としてベルトのあの部分に吊るのはもうパーフェクトとも言える解決策。

家の鍵もリールキーホルダーで吊って生きてる(懐中時計よろしく吊ってポケットに入れとくスタイル)し、少し前にZeppのライブ行った時に水と一緒にもらえたペットボトルホルダーも夏場は軽率に吊る。服が時々心配になる。

アバランチ見たあとなので、これからは羽生ちゃんスタイルって呼んでいこうと思ってる。わたしの方が先だったけど!(なんの張り合い??)


おわりに

ここまで来るすべての始まりがあの日の『創造』だったと思うと、すごく綺麗な伏線回収の物語の上歩かされてる気持ちになります。ほんとはただの偶然なのに、意味があると感じちゃうアレ。

何はともあれ楽しかったです!またやりてえ〜!!



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